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出版市場の低迷と新たなビジネスモデルへの挑戦

 例年発表される出版科学研究所の調査によると、2017年通期における書籍と雑誌を合わせたプリントメディアの出版物推定販売金額は約1兆3700億円になり、市場規模は過去のピークだった1996年に対して約52%にまで縮小する見通しだという。日本では「出版不況」といわれ続けて久しいが、雑誌は20年連続、書籍は11年連続の前年割れということだ。また、別の調査では、電子雑誌と電子書籍の2016年度(2016年4月~2017年3月)市場規模は2278億円(インプレス総合研究所調べ)とされていて、これらを合算すれば、出版市場全体としての縮小幅が多少は軽減されるものの、決してデジタル化によるメディアタイプが変化しただけだと結論づけ、楽観できる状況にはない。

 そのようななか、新たなビジネスモデルが続けて報じられている。一つは著名出版社である幻冬舎とクラウドファウンディングプラットホームのCAMPFIREが出資して設立される新会社エクソダス社である。書籍の企画を持つ筆者(企画者)らにクラウドファウンディングの手法を提供し、編集や制作を企画力や編集力でも定評のある幻冬舎が担うという。企画段階で市場に価値を問うことができるので、これまでより多くの人に出版のチャンスが与えられることになるだろう。

 さらに一歩進めて、米国ではブロックチェーン(分散台帳)の仕組みを導入した出版プラットホームであるPublica(パブリカ)がサービスを提供していることが報じられている。仮想通貨によるクラウドファウンディングはもとより、編集・制作・デザインなど、書籍化するための協力者への報酬の支払いをスマートコントラクトにより行い、読者(出資者)への出版物のアクセスコントロールなどをトークンによって行おうというものである。

 これまでの「電子出版」といわれてきた分野では、DTPのような制作ツールやプロセスの電子化、電子書籍や電子雑誌などのオンラインでのコンテンツ流通(販売)、サブスクリプションなどの支払いモデル(価格付けモデル)の導入が行われてきたが、いよいよ資金調達と協力者への利益(報酬)分配の仕組みへと進んできた。

 とりわけ、作品を広く頒布するために、印刷や編集・制作という先行投資が必要になる出版では、クラウドファウンディングにより経済的なリスクを減らすことができ、出版の自由度がより高まると考えられる。それに加え、ブロックチェーンによるバックオフィスのコスト削減が実現すれば、新たな価値基準による出版活動が活発化する可能性も高まるだろう。そして、何よりも、仕組みの目新しさによる話題性もある。

ニュースソース

  • 「出版界のAmazon」目指す 著者と読者つなぐ出版プラットフォーム「Publica」 [ITmedia
  • 幻冬舎とCAMPFIREが新会社 出版資金をネットで調達[ITmedia
  • 出版物の市場規模、ピークから半減 漫画本が激減[日本経済新聞

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