インタビュー

リモートデスクトップの雄「TeamViewer」が日本に本格上陸! その魅力と強みを聞いてみた

「労働力不足を解決する、リモート作業ツールとして活用してほしい」

TeamViewer。最新バージョンは14だ。

 「リモートデスクトップ用アプリケーション」はいくつかあるが、接続の容易さや安定性、セキュリティの高さで人気があるのが 「TeamViewer」だ。

 「世界的に評価が高く、欧州では圧倒的なシェアがある」(チームビューワージャパン)というTeamViewerだが、日本でも様々な用途で使われている。無償となる個人利用はもちろん、有償となる法人利用でも、多くのビジネスシーンで活用されているという。

 そして、そのTeamViewerだが、実は昨年、日本法人を設立。単なる「リモートデスクトップ」ではなく、「マルチデバイス対応のリモート接続ソリューション」として、日本での本格普及に力を入れていくとのこと。

 そこで今回は、その意図や強み、活用法などをチームビューワージャパンのカントリーマネージャー、藤本 善樹氏に聞いてみた。

接続の容易さ、安定性とセキュリティの高さが特徴

TeamViewerジャパン カントリーマネージャー 藤本善樹氏

――日本ではまだまだ「リモートデスクトップ」に馴染みがない方もいると思いますが、TeamViewerは、どのような場面で使われているんでしょうか?

[藤本氏] TeamViewerは様々なコンピューターデバイスのリモートコントロールを実現するソリューションです。PCやMac、Android、iOSデバイス、Chrome OSなどに対応しており、アプリの個人利用は無償、法人利用は有償をベースとしています。

 個人向けでは様々な使い方をしていただいていますが、法人向けで多いのはユーザーサポート目的での利用です。

 これは、TeamViewerの接続の容易さやセキュリティの高さ、管理機能が評価されているからだと思います。社内および社外向けのサポートセンター的な役割はもちろん、企業の専門家が顧客のサポートを行う場合など、幅広い場面で使われています。

 また、過疎地や遠隔地の無人PCの操作にTeamViewerが使われるケースもあります。大学の研究室から遠隔地にある研究機材を操作する、チェーンストアが各地のPOSレジを遠隔操作して必要な処理 を行う、あるいは、医療系メーカーが全国数万におよぶ拠点で医療機器を遠隔操作するといった大規模な導入事例もあります。

――では、それを実現するTeamViewerならではの強みを教えてください

PC版TeamViewerの画面。よく使う機能がタブごとにまとめられている
画面設定も簡単に変更できる

[藤本氏] TeamViewerの強みは大きく2つあります。

 1つは、ファイヤーウォールを超えてセッション確立する際のポート検索機能です。特別なネットワークの設定変更なしでも、ユーザー様からは「つながりやすい」とご評価いただいています。

 もう1つは、セッション確立後の品質です。デスクトップ描画時のノイ ズ発生やリモート映像の停止が低く抑えられており、ネットワーク帯域が細くてもリモート操作が可能です。例えば、南アフリカの郊外のようなネットワークの整備が十分でない地域でも、TeamViewerを使ってビジネスの改善を図っているようなケースも耳にしています。

 色数や解像度、動画フレームレートを自動的に軽減することで、例えばモバイルのような低速ネットワーク環境でも操作性を大きく損なわないでご利用頂けます。

 このほか、ユーザーインターフェイスについても「利用者目線」を心がけ、ユーザーからのフィードバックに応じて便利な機能を実装しています。よく使われる機能と しては、キーコンビネーションが代表的でしょうか。アプリケーションを操作する上でショートカットキーを多用する場合もあると思いますが、遠隔地のPCでもローカルと同じ感覚で利用できるよう、インターフェイスを整備しています。他にもドラッグ&ドロップやメニューから実行できる高速ファイル転送機能が評価されています。

技術力には自信あり、「餅は餅屋」に

――競合アプリと比較するといかがでしょうか?

PC版TeamViewerを起動したところ。インストールのほか、「実行のみ」というメニューもある

[藤本氏] TeamViewerのように無償と有償を組み合わせた「フリーミアム」なソリューションでは強力なライバルはいない、と考えています。有料のソリューションは日本国内でも幾つかありますが、TeamViewerは技術力では自信があります。社内でも機能比較などを行っていますが、自信を持ってトップクオリティをアピールできる製品となっています。

 また、Windows 10もリモートデスクトップ機能を備えていますが、TeamViewerはコンピューター名やIPアドレスといったネットワーク構造を意識せずにダウンロードしてすぐに使える、というメリットがあります。

 さらに、ファイヤーウォールを越える性能の高さや直感的なUI、またWindows/Linux/Android/iOSのみならずChromeOSやBlackBerryまでサポートするマルチ・プラットフォームアプリであることもアドバンテージでしょう。このほか、TeamViewerの上位ライセンスには強力な管理機能も備わっていますが、社内外のサポート業務用にTeamViewerをお使いいただく場合は特に便利に感じていただけると思います。

 その他にも大手検索プラットフォーム企業が類似ツールを無料提供されていますが、やはり「餅は餅屋」なのではないかと思います。最近もSNSサービスをユーザーが伸びず終息させたというケースがありましたが、このようなことはTeamViewerには絶対にないと断言できます。

欧州では圧倒的シェア、日本は「意外と知られている」

Niftyのサポートでも利用されているという

――グローバルにおけるTeamViewerの普及状況について教えてください

[藤本氏] TeamViewerはドイツの企業ですから、欧州では圧倒的です。また、中東やアフリカでもトップシェアを誇っています。

 米国には数年前に本格進出し、順調にシェアを伸ばしていますが、アジアはこれからです。

 これまでは、オーストラリアのアデレードに拠点を置き、電話サポートや販売を手掛けてきましたが、2018年には日本、中国、インドの3カ国に現地法人を設立しました。

 現在、弊社では「エンタープライズ」、「R&D(研究開発)」、「グローバル市場」と3つの戦略を推進していますが、最後の「グローバル市場」で戦略的に重要地域となるのがアジア市場です。

 日本法人設立までは言語や販売手法の壁がありましたが、ここからは幅広く普及を図ることができると考えています。

 特に、「エンタープライズ」向けについては、製品の性能や品質には自信を持っておりますので、TeamViewerがこの市場を拡大していく余地は大変大きいと考えています。今後は積極的にご説明の機会を作り、啓蒙・普及を図っていきたいと思っています。

――日本での認知度はいかがで しょうか

[藤本氏] 昨年末までは日本法人がなかったため知名度は低いと思っていましたが、ありがたいことに 「意外と知られている」というのが正直な感想です。

 2018年11月に関西で働き方改革関連のイベントに出展したところ、数名の方から「TeamViewerを使っています」と、お声がけいただきました。先日も グローバル展開する日本企業のSEの方から「「シンガポール出張中にアメリカに設置したサーバーの保守をするなど、世界中どこからアクセスしても安定していて、本当に助かっています」とおっしゃっていただきました。

 現在は営業活動を積極的に行っていますが、「これは使える」、「導入したい」とおっしゃる企業の方が多く、積極的に検討をいただいている状況です。

――日本では、どういった法人に使ってほしいと考えていますか?

[藤本氏] 規模や業務のタイプを問わず本当に多様な用途がありますので、既にご利用されている企業様の利用事例をご紹介しながら幅広い分野でお使いいただきたく考えています。

 TeamViewerが日本法人を設立した理由の1つは、深刻な労働力不足に直面している日本社会が、このツールの積極的な活用によって変革できる余地が非常に大きいと感じているからでもあります。

技術開発も積極的に、IoTのセキュリティを向上する「TeamViwer IoT」ARで「画面外」もサポートする「TeamViewer パイロット」

――それでは今後についてお伺いします、まず、技術開発(R&D)に関してはどのように展開されますか

[藤本氏] R&Dに関しては「リモートデスクトップ」という基本的な範囲において、たとえば基礎的な接続技術や管理技術は、トップレベルにあると 自負しています。

 それに加えて、お客様やビジネスパートナー様に先々もTeamViewerとビジネスを続けたいと考えていただけるよう、IoTやAR(拡張現実)など利用場面を広げています。

――具体的にはどういった場面でしょうか?

Philipsではデジタルサイネージの遠隔制御にTeamViewer IoTを活用しているという
病院などでの応用事例もあるとのこと

[藤本氏] 既存技術を横展開する上では、「コアテクノロジーを他の用途に広げ る」場合と、「現在の用途の延長線上にある用途を取り込む」場合と2つの手法が あります。

 前者としてはIoT向けにコア製品 をコンパクト化し、サーバーソリューションを含めた「TeamViewer IoT」の提供を始めました。

 これを使って、例えば農地の天候をセンサーで感知し、散水などの作業を自動化するようなPoC(概念実証)を欧州のソリューションベンダーと共に取り組んでいます。あるいはスマートホームをネットワーク面で支えるようなパートナーシップもあります。

 TeamViewerは2048ビットのRSA公開/秘密鍵交換と256ビットのAESでセッションを暗号化していますが、その高度なセキュリティをTeamViewer IoTでも利用でき るため、IoTソリューションの課題であるセキュリティリスクを非常に簡単に解決できます。

農業分野での活用事例もあるという。
国際宇宙ステーションにおける医療機器管理にも使われている

TeamViewer パイロット。左のスマートフォンで画面上をポイントすると、それにPC側も対応した場所がポイントされる。
AR的に処理されているので、カメラの位置や方向が変わってもちゃんと追従する

 また、後者としてはAR技術を取り込んだ「TeamViewer パイロット」の提供を始めました。

 これは、サポートの際にしばしば必要となる「実際の機材を確認する」といった業務を飛躍的に効率化できるもので、スマートフォンを使い、3次元の座標固定可能なマーキングにより「どこに問題があり、どう解決するのか」を、現場にいるクライアントやサポート担当者に正確かつ迅速に伝えることができます。

 利用に必要なモバイルアプリは、AppStoreやGoogle Play Storeで無料ダウンロードできますので、問題が発生した現場で即時ダウンロードして問題解決にあたって頂くことができます。

――Windows Virtual Desktopのようなソリューションに注目が集まっていますが、ご見解をお聞かせください

[藤本氏] シンクライアントがその真価を発揮できる環境になるのは、まだ先の話だと感じています。

 シンクライアントやクラウド化については長年語られてきましたが、導入コストの問題や既存のワークフローへの依存から、いまだにオンプレミスで古い業務アプリを使い続けているケースは少なくありませんし、また、デバイスにおけるユニークなトラブルがなくなるわけではありませんので、TeamViewerとしては、より現場目線で、そこにある問題をユーザー様と共に解決していくことに注力していきたく考えています。

――普及を図るという文脈ではユーザーコミュニティの存在は欠かせません。現在の取り組みをお聞かせください

[藤本氏] ドイツ本社はオウンドメディアをはじめとしたコミュニティ活動を積極的に行っています。日本語でも「ナレッジベース」を充実させており、現在も日本人専任スタッフが熱心にユーザー様とのコミュニケーションを続けています。

――最後に日本のユーザーに向けて一言お願いいたします

[藤本氏] 既存のユーザー様にもこれからご利用いただく方々にもTeamViewerのメリットや幅広い活用方法を是非知っていただきたいと思っています。

 労働者不足が深刻化する中、リモートでの業務を徹底的に普及させることで、企業の収益向上と個人のクオリティ・オブ・ライフを向上させる余地が、日本には大きく残されていると感じています。

 是非、TeamViewerを個人でご利用いただく中で、「仕事ならあんな使い方もあるな」といったように使い方を想起して頂き、ビジネスでの活用をご検討頂ければと考えています。

(協力:チームビューワージャパン)