インタビュー
「出前がUber Eatsになったように」全てのサービスが位置情報を活用する未来を見る「LBMA Japan」
位置情報関連の18社が集結、「あなたの仕事+位置情報」によるDXをコンシェルジュがご案内
2023年10月6日 06:55
10月17日~20日に幕張メッセ(千葉県千葉市)で開催される「CEATEC 2023」。位置情報データを活用したビジネスを展開する65社の事業者会員で構成される一般社団法人LBMA Japan(Location Business&Marketing Association Japan)のブースでは、同団体に加盟する位置情報関連企業の中から過去最大となる18社が出展し、それぞれのソリューションを展示する。
LBMA Japanは位置情報データを活用したビジネスの推進を目的として2019年に設立され、スマートフォンなどから利用者の許諾を得た上で取得される位置情報データの活用に関する啓蒙活動や、位置情報データの取り扱いに関するプライバシー保護の推進活動などを行っている。
LBMA Japanが行っている取り組みや今回の出展内容、そして位置情報ビジネスの最新動向などについて、同団体の代表理事を務める川島邦之氏に話を聞いた。
「位置情報の社会実装」をテーマに18社が出展、広告・マーケティングから、デジタル田園都市まで幅広く……
――貴団体のミッションや活動内容を教えてください。
[川島氏] 当団体は国際団体であるLBMA(Location Based Marketing Association)の日本支部で、日本国内における位置情報データを活用したサービスの推進を目的とした非営利社団法人です。
会員数は2019年に設立したときは15社からスタートし、現在は65社まで増えました。会員になるために特別な資格や制限はなく、あらゆる業種・業態を歓迎しており、位置情報データの提供企業や活用した事業を展開している企業だけでなく、位置情報データに関する基礎研究や情報収集を目的とした会員も在籍しています。
活動内容は大きく分けて「位置情報データを活用したビジネスや事業の推進および啓蒙活動」と、「ロケーションプライバシーの推進活動」という2つの軸があります。啓蒙活動については、主催イベントやメンバー主催カンファレンスへの協力、会員間による意見交換会、会員限定ウェビナーなどの開催、位置情報データ活用の拡大状況を可視化するための「カオスマップ」の作成・発表などを行っています。ロケーションプライバシーの推進活動については、位置情報データの運用や利活用についての事業者共通ガイドラインを作成・運用しているほか、会員間で共通課題についての議論を行う委員会や研究会も行っています。
――今回の出展にあたり、LBMA Japanとしての意図や狙いを教えてください。
[川島氏] 今年のテーマは「位置情報の社会実装」で、計18社の会員企業が出展します。
位置情報データを継続的に活用していただき、この業界を拡大するために、既存のビジネスモデルや新しいビジネスモデルに対してどのように位置情報データを活用し、売上の向上に結びつけるかを追求したいと考えており、それを意識した展示を出展各社にはお願いしています。
当団体では今年になって大小あわせて10数回ほどイベントの主催・共催やイベントへの参加を行いましたが、CEATECはそのようなイベント活動の集大成であると位置付けています。位置情報データ活用の業界は、もともとはビッグデータ分析や広告・マーケティングなどの事業からスタートし、一方で近年スマートシティやデジタル田園都市といった構想が立ち上がっていく中で、我々としてはそのような社会に貢献するための位置情報の新たなデータ活用方法を提案し始めているという状況です。
そういう意味で、我々が思い描く最終的なゴールはCEATECが掲げているテーマに近いと考えており、リアル開催において新しいビジネスパートナーと出会う場としてはCEATECが最も合っていると考えています。もちろん来場者数が多いというのも魅力ではありますが、ただ多ければいいというわけではなくて、CEATECの来場者属性が、我々が思い描く“社会実装”という概念に一致しているからというのがCEATECに参加する最も大きな理由です。
「現場の可視化」「超音波によるセンシング」「地図・GIS」「屋内位置情報」まで多彩な出展
――昨年の手ごたえはいかがでしたか?
[川島氏] 昨年の出展社数は10社で、出展した感想としては、「想像以上の人数がブースに来てくれた」「位置情報データの活用法をよく知らない人にアプローチできた」といった声が各社から寄せられ、非常に満足度が高かったため、この10社は今年も全社引き続き出展します。
当団体としても新たな出会いがあり、例えばJAXA(国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構)の方と会場で知り合ったことで、当団体が主催するカンファレンスに登壇していただいたり、逆に私どもがJAXAのイベントでお話させていただいたりしました。そのような様々な事業者と出会うことにより、出展各社はいずれもビジネスの幅が大きく広がったと思います。
――どのような企業が出展するのか教えてください。
[川島氏] 昨年はあまり見られなかったものとして、法人向けのSaaS型ソリュー ションを提供する企業による展示があります。
たとえば株式会社ビーキャップはビーコンや各種センサーを活用してオフィスや物流、工場など様々な現場の動きを可視化できるサービスを提供しています。また、マルティスープ株式会社は工事現場や建築現場においてセンシングを行い、そこで働く人々の動態を可視化するソリューションを提供しています。
センシング技術については昨年からも継続して独自技術を展開する企業(3次元測位の株式会社Metcom、IoTセンシングの株式会社IoTBank)が参加していました。今年は新たに、超音波によるセンシング技術を 提供する株式会社ネクスティエレクトロニクスが出展します。さらに、地図サービスやGISソリューションの提供会社についても、国際航業株式会社に加えて、マップボックス・ジャパン合同会社、株式会社ゴーガやマップマーケティング株式会社などが新たに出展します。
このほか、位置情報データを活用した分析やマーケティングを行う企業として、クロスロケーションズ株式会社や株式会社Agoop、株式会社unerry、株式会社ブログウォッチャー、株式会社ナイトレイ、株式会社LocationMind、シナラシステムズジャパン株式会社などが出展します。さらに、地図データやM2Eアプリ「トリマ」などを提供するジオテクノロジーズ株式会社、屋内位置情報サービス「iPNT-K」を提供 する川崎重工株式会社なども出展します。
――一口に“位置情報データを活用したビジネス”と言っても色々あるので、どのブースに行けばいいのか迷いそうですね。
[川島氏] 今年は私も含めてLBMA Japanスタッフがブース内に常駐し、来場された方とお話した上で企業をご案内する“コンシェルジュサービス”を提供する予定です。どの企業のブースに行けばいいかお悩みの方は、とりあえず我々のところに来て、どのようなビジネスをされているのか教えていただければ、業種に合った最適な企業をご紹介できると思いますし、場合によっては複数の会社をご紹介する場合もあります。
また、3日目の10月19日(木)にはホール4のTech-Hubにて、今回の出展企業のうち16社がそれぞれの取り組みを紹介する「ロケーションビジネス&マーケティングカンファレンス」も開催します。Tech-HubはLBMA Japanのブースにも近いので、講演を聴いてご興味を持たれた方は、すぐブースに来ていただき、登壇企業と直接話すことができます。
さらに、初日の10月17日(火)には当団体が、環境省 地球環境局デコ活応援隊の中村幸弘氏 をゲストとして招いて、「【位置情報データ活用】プライバシーと事業推進・社会課題解決の道筋」と題したカンファレンスも行います。
このカンファレンスでは、8月に改正された電気通信事業法と位置情報データとの関わりについての概要と、位置情報データ活用が今後どのようなデジタル社会課題を解決していけるかという「超近未来予想図」の2つをテーマとしたセッションです。
「位置情報は今後すべてのサービスに必須の存在になる」「出前+位置情報」が、「フードデリバリー」へと進化したように……
――CEATEC開催日の前日に発表する、最新版カオスマップから読み取れる位置情報マーケティングサービス業界の最新動向を教えてください。
[川島氏] 当団体は位置情マーケティングサービスの業界動向をまとめた「位置情報マーケティング・サービス カオスマップ」を毎年発表しています。2023年版では前年にはなかった新しいジャンルが加わる予定で、その新しいジャンルがどのように活用されているのかを伝えたいと思います。
また、当団体の会員企業も昨年に比べて10数社増えており、各ジャンルにおいて新しいプレイヤーが追加されていることも注目されます。カオスマップは展示ブースでも紹介し、インタラクティブなUIで楽しめますので、ぜひご期待ください。
近年の動向としては、コロナ禍になったことで「人流」という言葉が生まれ、一般の方にまで認知が広がり、今では当たり前のように使われるようになりました。
人流を解析することで、様々な場所において人がどれだけ増加・減少したのかがわかるようになり、テレビのニュースでは毎日のように「個人情報を含まない携帯電話の位置情報データ」と紹介され続けた結果、「位置情報データは利活用ができる」ということを多くの方にご理解いただけたというのは非常に大きかったと思います。
同じ時期に当団体は2020年6月にガイドラインを発表し、「位置情報データが個人情報とは分けて考えることができる」ということを提示しました。さらに2022年4月の個人情報保護法が改正され、「位置情報データを使って個人を特定できる場合には、それは個人情報となる」という定義が初めてなされました。そのように線引きができたことによって位置情報データの活用が今まで以上に進み、今後は様々な業種・業界で位置情報データの活用を推進することで社会実装が進み、ひいてはそれが皆さんの生活を豊かにするSociety 5.0につながっていくと思います。
――「Society 5.0」という枠組みの中で、LBMA Japanやその会員企業が担う役割はどういうものだと考えていますか?
[川島氏] CEATECが展開する「デジタル田園都市国家構想 カオスマップ」上で、我々は位置情報データを“デジタル・インフラ”として定義しており、位置情報データやセンシングの技術をインフラとしてSociety 5.0に実装していくことを提唱していますので、今回は位置情報データを活用したビジネスをきちんと事業化し、それが社会実装されて、様々な業界が抱える課題をしっかりと解決に導けるような出展にしたいと思います。
Society 5.0において位置情報データは今後すべてのサービスに必須の存在になると考えています。例えば“出前”というサービスは昔からありましたが、それが位置情報を活用することでDX化し、Uber Eatsなどのフードデリバリーへと進化したことで、ここ2~3年の間に爆発的に広がりました。これは位置情報データと出前をかけ合わせることでDXが実現し、一般的な社会実装が行われたわかりやすい例だと思いますが、このような変化が今後さまざまな業界・業態で起こる可能性があります。
そのような変化をひたすら追いかけて、いずれは全サービス・全業態で位置情報データが使われるようにすることが当団体のミッションの一つでもあるので、「具体的に位置情報データをどうやって使うのか」「それによって何が改善されるのか」ということを明確にすることが当団体や会員企業の役割だと思っています。
「あらゆる人に来て欲しい」“常駐コンシェルジュ”が「あなたの会社で活用できる位置情報」を提案!
――今回の展示には、どのような人に来て欲しいですか?
[川島氏] 今回の出展企業は本当に多種多様で、どのような業種の方に来ていただいても確実に何かが得られるので、とにかく業種を問わず、オールジャンルであらゆる人に来ていただきたいです。
「位置情報ってうちの会社で活用できるの?」とご相談いただければ、「こんな企業があって、こういうソリューションを提供していますけど、いかがですか」とご提案できると思いますし、来場者のビジネスと目的に応じて提案することで一歩踏み込み、実際にビジネスにつながるまでのミーティングを1つ削減できるのではないかと思います。
――最後に、CEATECを訪れる方に向けてメッセージをお願いします。
昨年のCEATECにおいて当団体のブースに出展した企業はいずれも何十、何百の会社と知り合うことができて、それが新しいビジネスにつながりました。今年は前年に出展した企業に加えてさらに新しい企業も加わっていますので、あまり構えることなく気軽にLBMA Japanのブースに来てください。我々と少し雑談していただければ最適なソリューションをご紹介できると思いますので、とにかく気軽に立ち寄っていただければと思います。私どももコンシェルジュを設けてお待ちしております!