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カスペルスキー、脆弱性予備軍を除去する断捨離機能などを追加したセキュリソフトの2017年版新製品

安全でない公衆無線LANに接続したら、VPNに自動的に切り替わる新機能も

 株式会社カスペルスキーは、個人向け総合セキュリティソフトの最新版「カスペルスキー セキュリティ 2017」を13日に発売する。ウイルス/スパイウェア対策や危険サイト/詐欺サイト対策などの機能を提供するセキュリティソフト/アプリのWindows版・Mac版・Android版で構成されており、今回、Windows版の新バージョンにおいて「ソフトウェアアップデーター」「ソフトウェアクリーナー」「セキュアコネクション」といった新機能を追加している。

“押し付ける”セキュリティから、“アシスト”するセキュリティへ

 カスペルスキー セキュリティ 2017は、従来製品の「カスペルスキー 2016 マルチプラットフォーム セキュリティ」を短い名称に一新するとともに、機能を強化したものだが、ユーザーに対するセキュリティソフトの提供スタンスを大きく変えたという。

 カスペルスキーによると、従来のセキュリティソフトは、インストールされているソフトのアップデート状況などをチェックし、脆弱性のある古いバージョンがあった場合に警告は出してくれるものの、それを解決してくれる機能については“消極的”であり、そうした作業をユーザーに“押し付け”ていたという。これに対してカスペルスキー セキュリティ 2017では、警告するだけなく、“積極的”に“解決”するための機能を提供することで、ユーザーを“アシスト”するスタンスだ。また、これまのセキュリティソフトでは“安全性と利便性のトレードオフ”だったのに対し、“安全性と利便性の両立”を目指したとしている。

 これらのスタンスを具現化したのが、Windows 10/8.1/8/7(SP1以上)/Vista(SP1以上)対応の「カスペルスキー インターネット セキュリティ」において新しく搭載した「ソフトウェアアップデーター」「ソフトウェアクリーナー」「セキュアコネクション」といった機能だ。

「カスペルスキー インターネット セキュリティ」メイン画面

「ソフトウェアアップデーター」でパッチからの解放を

 ソフトウェアアップデーターは、脆弱性のない環境を実現するための機能だという。インストールされている各種ソフトのアップデート状況をチェックし、適用する必要のあるアップデートが見つかった場合には、アップデートを通知で促すのに加えて、実際にそれらをアップデートする作業までを行える機能。従来のセキュリティソフトでも必要なアップデートをユーザーに促す、あるいはアップデートプログラムをダウンロードする作業までは対応しているものもあったというが、カスペルスキー インターネット セキュリティでは、見つかったアップデートを個別または一括して実行するボタンがあり、各ソフトのアップデートプログラムを個別にダウンロードしたり実行する必要がない。脆弱性を修正して最新状態を保持する上で、ユーザーが「パッチから解放される」としている。

ソフトウェアアップデーター

 ソフトウェアアップデーターのチェック対象となっているソフトは、約90種類。主要ウェブブラウザーをはじめ、Adobe Reader/AcrobatやFlash Player、Shockwave PlayerといったAdobe Systems製ソフト、Java JRE、DropboxやEvernote、Skype、OpenOffice.org、LibreOffice、Foxit Reader、GIMP、IrfanView、VLC media player、RealPlayer、Winamp、7-Zip、WinRAR、WinZipなど、グローバルで多く利用されている有名ソフトが対象。現時点では、ジャストシステム製品など日本国内だけに限定される有名ソフトはカバーできていないという。カスペルスキーでは今後、こうした日本限定のソフトなども対象に追加するようロシアのKaspersky本社に対して要望を上げていく方針だ。

「ソフトウェアクリーナー」で断捨離

 さらに、アップデートの適用だけでは脆弱性は解決されないとして、不必要なソフトの断捨離が必要だとカスペルスキーでは指摘。そのために搭載したのがソフトウェアクリーナーだ。意図せずインストールされていたり、長期間使用されていないソフトなどを定期的にチェックし、不要だと思われるソフトを一覧表示する。ユーザーは、一覧からソフトを選択して、カスペルスキー インターネット セキュリティの画面上からアンインストールする操作までを実行できる。

ソフトウェアクリーナー

 例えば、ベンダーによるサポートが終了し、仮に今後、脆弱性が見つかっても修正されずに危険な状態になる恐れのある「QuickTime for Windows」などをインストールしたままにしていると検知されるわけだ。ソフトウェアクリーナーによって、こうした“脆弱性予備軍”を取り除き、被害に遭う可能性を軽減できるとしている。なお、チェックの対象外にしたいソフトをユーザーが設定することも可能だ。

「セキュアコネクション」で公衆無線LANを安全に

 一方、通信の安全性を確保するための機能として新たに搭載したのが、セキュアコネクションだ。これは、公衆無線LANなどに接続した際に、そのネットワークのセキュリティ保護の状態を診断し、セキュリティに問題がある公衆無線LANだった場合に自動的に起動。カスペルスキーが提供するVPNサービスでの暗号化通信に切り替える仕組みだ。

セキュアコネクション

 カスペルスキーによれば、これまでのセキュリティソフトでも、安全性に問題のある公衆無線LANに接続しようとした際に警告を出す製品もあったが、それを知った上で使用するかどうかの判断あるいは解決法はユーザー任せになっているという。ユーザーは警告されても利便性をとって、接続してしまうことも考えら。これに対して、カスペルスキーでは、セキュアコネクションによる解決法を用意することで、安全性と利便性を両立させたというわけだ。

 安全性に問題があると判定されるのは、暗号化されていない無線LANが該当するほか、暗号化されている場合であっても、無線LAN機器の出荷状態のデフォルトパスワードやありがちなパスワードで運用されている場合も含まれるなど、カスペルスキーのクラウドデータベースと連携して判定しているという。一方で、自治体などが提供する公衆無線LANなどのように、暗号化はされているものの、パスワードが周知されていて誰でも知り得るような場合については該当しない模様だが、具体的な判定基準は明らかにしていない。

 なお、セキュアコネクションのVPNサーバーは、日本を含む国内外の18拠点に設置されており、接続先はランダムに選択される。ユーザーが接続先のVPNサーバーの設置国・地域は指定できないため、接続先によっては特定のウェブサイト/サービスが利用できなくなる可能性もある。また、セキュアコネクションによる通信は1日200MBまでという制限がある。

 ただし、オプションの「セキュアコネクション 有料版ライセンス」を別途購入することで、接続先の国・地域を指定できるようになるほか、通信量の制限も解除される。

Mac版・Android版にも新機能、すでにバージョンアップ済み

 macOS Sierra(10.12)およびOS X El Capitan(10.11)/Yosemite(10.10)/Mavericks(10.9)に対応する「カスペルスキー インターネット セキュリティ for Mac」の最新バージョンでは、プライバシー保護機能を強化。Mac内蔵のカメラが遠隔操作によって悪用されるのを防止する「Webカメラのぞき見防止機能」を搭載しており、カメラへのアクセスを検知すると自動でブロックし、のぞき見や盗撮などからプライバシーを保護する。このほか、「Webトラッキング防止機能」も搭載している。

カスペルスキー インターネット セキュリティ for Mac

 「カスペルスキー インターネット セキュリティ for Android」の最新バージョンでは、Android Wearとの連携機能を追加。Android Wearの音声コマンドを利用し、スマートフォン本体のアラームを鳴らす端末呼び出し機能、スマートフォン本体のウイルススキャンやデータベース更新機能を搭載した。また、セキュリティ保護ステータスがポップアップで通知されるため、スマートフォン本体の最新保護状況を把握できるとしている。

カスペルスキー インターネット セキュリティ for Android

 なお、Mac版・Android版については、いずれもバージョンアップ済みであり、すでにユーザーに提供している機能だという。今回発表したWindows版の最新バージョンについては、13日より提供開始。従来製品の「カスペルスキー マルチプラットフォーム セキュリティ」シリーズの有効期間中のライセンスを保有しているユーザーであれば、無料でダウンロードして利用可能だ。

 新規購入の価格(税込)は、ダウンロード版が1年1台版3980円、1年5台版4980円など、パッケージ版が1年1台版4860円、1年5台版6080円など。いずれもライセンス台数の範囲内で、Windows、Mac、Androidのカスペルスキー インターネット セキュリティをインストールして利用できる。また、同一世帯内であれば台数無制限で利用できるプレミアライセンスもダウンロード版のみでラインアップしており、1年版6980円など。

 セキュアコネクションの有料版ライセンスは、1カ月版が518円、1年版が3218円で、いずれも5台まで利用できる。

株式会社カスペルスキーの川合林太郎代表取締役社長(右)