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新国家資格「情報処理安全確保支援士」の登録申請がスタート、資格維持には年1回の受講などを義務付け

 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は24日、新設される国家資格「情報処理安全確保支援士(以下、支援士)」の対象者や取得手続きなどに関する記者説明会を開催した。

 支援士は、サイバーセキュリティ基本法が規定するサイバーセキュリティ確保のための事業者や利用者による取り組みに対し、必要な情報の提供や助言を行ってサイバーセキュリティの確保を支援する国家資格。新設される支援士試験の出題内容は、これまでIPAが実施してきた「情報セキュリティスペシャリスト試験」(SC試験)を踏襲する。SC試験は2016年10月期をもって終了する。

 支援士試験は2017年4月以降、4月と10月の年2回実施される。受験手数料は5700円。2006~2008年に実施していた「テクニカルエンジニア(情報セキュリティ)試験」、2009~2016年秋まで実施するSC試験の合格者は、支援士試験の合格者と同等とみなされ、支援士資格への登録が可能な“経過措置対象者”となる。当初は登録資格を有する予定だった「情報セキュリティアドミニストレータ試験」については対象外となった。

 支援士資格とSC試験の大きな違いは、登録簿への登録が必要となることで、資格の保有には継続的な受講も必要となる。過去のテクニカルエンジニア(情報セキュリティ)試験とSC試験の合格者が申請できる登録受付は、10月24日より開始された。初回登録分は2017年1月31日まで受け付けられ、4月1日に登録が行われる。支援士への登録申請を行える最終受付は2018年8月19日までで、猶予は約2年弱となる。

 支援士の登録情報は、登録番号、合格と登録、講習の終了した年月日がIPAウェブサイトで公開される。希望すれば、公開情報に氏名や住所、勤務先の情報を登録することも可能だ。IPAの高橋将氏(IT人材育成本部HRDイニシアティブセンター企画グループリーダー)は、「ほかの資格や得意分野、職歴といったスキル情報については、登録や活用側のニーズによって、拡大することも検討している」と述べた。

 登録申請には、申請書、戸籍謄本(抄本)または住民票の写し、合格証書、身分証、誓約書、登録事項に関する公開届出書などが必要。登録手数料(1万700円)に加えて、国家資格の登録となるため、税法で定められている登録免許税(9000円)が必要となる。なお、欠格事由が情報処理の促進に関する法律の第8条に定めらており、禁固や罰金刑を受けてから2年以内の場合は登録ができない。

 支援士については国家資格となるため、順守すべき義務があり、秘密保持に違反した場合には1年以下の懲役または50万円以下の罰金も科される。また、資格保有者は名称を独占的に使用でき、支援士以外が名称を使用すると30万円以下の罰金が科される。

 また、登録者に対しては、年1回の「オンライン講習」(6時間)と、実際に起きた事例に基づいたケーススタディによる20~30人の「グループ演習」(6時間)を組み合わせ、知識、技能、倫理の3科目の講習を義務付ける。知識は攻撃手法などの最新動向、技能は実践力などで、倫理については「企業の機微な情報に触れる場面の多い業種となるため、順守すべき倫理を学習する内容」(高橋氏)とのこと。また、オンライン講習は、集合講習で効率的に学べるための予習として位置付けられており、集合講習では技能と倫理が重視される。

 受講料金はオンライン講習が2万円程度、集合講習が8~9万円程度となる見込みだが、地方での開催、受講者数の見込みなどを勘案して、料金は11月上旬に決定する予定。3年で15万円程度が必要となる。ただし、更新のための手数料は発生しない。各講習には、理解度確認テストがコンテンツとして盛り込まれ、その合格を持って講習を受講したものと見なされるという。

 試験合格から登録までに3年を超過した場合には、登録から1年以内にオンライン講習と集合講習を受講する必要がある。

 集合講習の地方開催については、今後、登録者の居住地分布や数を勘案して、負担にならないよう検討する。グループ演習を行うため、ある程度の数が必要となるという。

 高橋氏は新たな国家資格となる支援士の制度について、「登録情報の見える化、登録情報による質の担保で、セキュリティ人材の育成確保をしっかりと進めていきたい」と述べた。

 支援士資格の登録者数は、2020年までにに3万人を目標とする。資格取得を目的としていない2006年から2016年秋実施までのテクニカルエンジニア(情報セキュリティ)試験、SC試験の総合格者はおよそ5万人前後となるが、支援士制度の設計を担当した経済産業省の藤岡伸嘉氏(商務情報政策室地域情報化人材育成推進室長)は、「実際にはそのうちの2、3割」が支援士資格の登録を行うとの予測を示した。

 また、「これまで実施してきたSC試験の合格者は年5~6000人規模だった。今回、国家試験となることで、2017年以降は1万人弱くらいのペースで登録してもらえればと考えている」とし、支援士について「何をする人で、どういう活躍の場があるのかについて、今後、より発信して理解してもらう努力をしていく」と述べた。さらに、「支援士の状況や業務によるが、(企業などでセキュリティ対策を行う場合に)支援士の設置が必要となるかどうかは、環境整備という観点から大きな検討課題」とした。