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DeNA、創業者の南場智子氏が代表取締役に復帰、キュレーションメディア事業の第三者委員会報告書を受けガバナンス強化
2017年3月13日 12:21
株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)は、3月11日に提出されたキュレーションメディア(まとめサイト)事業での不祥事を巡る第三者委員会報告書を受け、同社創業者で取締役会長の南場智子氏が代表取締役に復帰し、代表取締役兼CEOの守安功氏との代表取締役2人体制に移行する経営体制の変更と、関係者の処分を発表した。
キュレーションメディア事業での不祥事は、医療・ヘルスケア情報のキュレーションメディア「WELQ」における不正確な医療情報や制作体制に端を発し、記事や掲載画像の剽窃などの問題が明らかになったもの。問題発覚後の2016年12月には、守安氏と南場氏が記者会見で謝罪、キュレーションメディア10サイトの全記事を非公開化するとともに、第三者委員会を設置して問題点を明らかにするとされていた。3カ月の調査による報告書の要約版と全文が、3月13日付で公開されている。
今回の経営体制変更はこれを受けてのもので、トップマネジメントやガバナンスの強化を目的としたもの。同社は発表文で「抜本的改革を推進する」としている。
関係者の処分については、キュレーションメディア事業担当執行役員メディア統括部長で、Palette事業推進統括部長も兼務する村田マリ氏に対し、就業規則に基づく処分を行ったが、村田氏は執行役員、子会社のiemo株式会社および株式会社Find Travelの代表取締役のいずれも辞任する意向を表明しているという。
また、キュレーションサイト「MERY」を運営する子会社である株式会社ペロリの代表取締役だった中川綾太郎氏は、3月12日付ですでに辞職。そのほか執行役員など25人を就業規則に基づいて処分する。今後は執行役員の選定において、コンプライアンスや管理能力を重視する選定を行うとしている。守安氏の役員報酬減俸額を従来の30%から50%に増額することも、あわせて発表されている。
第三者委員会報告書によれば、キュレーションメディア10サイトの記事37万6671件のうち、複製権や翻案権を侵害した可能性のある記事の推定値は1.9~5.6%。その可能性がないとは言えない記事の推計値は0.5~3.0%だった。画像472万4571枚のうち、74万7643枚には複製権や公衆送信権、氏名表示件を侵害していた可能性があるという。また、文章自体に著作物性が認められず、ほかの記事をコピー&ペーストしていると考えらえるものや、出展が不明瞭だったり、引用方法が不適切だったものがあったとしている。
このほか、WELQの記事19本についての調査では、8本が薬機法、1本が医療法、1本が健康増進法に、それぞれ違反する可能性があったという。さらにWELQの一部記事では、医師間で見解に相違のある内容は、ユーザーに対する配慮を欠いた内容が記載されていたという。
また、DeNA法務部では、掲載記事に対する画像や文章の無断利用の申告に対し、プロバイダー責任制限法の適用外の場合も、プラットフォーム事業者として適用を受けられるとして対応を助言していた。
キュレーション事業、「以前と同様のかたちで再開することはあり得ない」
DeNAは13日夕方、調査報告を行った第三者委員会の記者会見と、DeNAの守安氏・南場氏の出席する記者会見を開催した。
第三者委員会は、元日本アイ・ビー・エム株式会社取締役で弁護士の名取勝也氏が委員長を務め、元新日本製鐵株式会社常務取締役で弁護士の西川元啓氏、国立情報学研究所客員教授で弁護士の岡村久道氏、元東京地方検察庁特捜部検事で弁護士の沖田美恵子氏の弁護士4名で構成。報告書については、すでに要約版と全文がそれぞれDeNAのウェブサイトで公開されている。
記者会見で名取氏は、「(imeoとMERYの)2社の買収で事業に新規参入する段階で、事業への分析議論が尽くされず、深めなかったこと。リスクチェックや手当が不十分でリスク顕在化を招き、早期発見も遅れた。自己修正を妨げる要因も複数存在していた」とした。
その上で「“永久ベンチャー”は免罪符ではない。今後は目指すべき企業のあり方を正しく認識し、キュレーション事業とは本来どのようなものであるべきかを再度明確に定義付け、数値偏重から公正な稼ぎ方へ、社員全員に徹底する必要がある。キュレーション事業を再開するのであれば、適切な再検討、社会から広く受け入れられる事業へ向け、外部への価値提供と、情報発信の責任所在の明確化、オリジナルコンテンツ発信者への配慮について、社内での認識を共有する必要がある。今後は真摯に反省し、再び社会の信頼を得られる努力することを期待している」と述べた。
守安氏は、「著作権法に違反する記事、薬機法などに抵触する記事、内容が不適切な記事の作成と公開、さらにプロバイダー責任制限法の適用を受けられない範囲での対応について法令上の問題、倫理上の問題として指摘を受けた」とし、「本質的な価値や世の中への貢献を最優先する実態になっていなかったこと、メディアなのかプラットフォームなのかという事業の定義や理解があいまいだったこと、実質的にはメディアだったにもかかわらず記事の制作体制などが適切に運営されていなかったこと」の3点を要因に挙げた。
そして、「成長を強く思考することが当社のDNAだが、事業成長に伴う責任や義務を担うコンプライアンスやガバナンス強化への対応が不十分だった」と述べ、今後の事業について「強固なトップマネジメント体制を数カ月かけて作り上げる。顧客への価値提供、倫理上正しいか、正しい事業運営がなされているかを時間をかけて議論をする場を取締役会や経営会議に限らず、各サービスの部門でも行われるようにする」とした。
南場氏は、「社会から存在を許され歓迎され、信頼に応えられる企業になるよう全力を尽くす」と述べ、今後のキュレーション事業の継続については「再開ありきでなく、どのようなかたちであれば世の中で認めていただけるかを検討した。これまで見てくださったユーザーの皆さんがいるようにニーズは存在しているが、今後、以前と同様のかたちで再開することはあり得ない。メディア型にするとしても、きちんとした編集、校閲体制、ライターの教育など、聞けば聞くほど奥の深いもので、経験のない我々がかたちだけ整えてできるものではなく、収益的な柱などということはあり得ないと考えている。現時点で全くの白紙」と述べた。
代表取締役への復帰について「社会の公器として発展させたいということから、後継者へバトンタッチさせることを重視していたが、そうしたかたちにこだわってはいられない事態になっている」とし、「複眼的に2人の意思決定で確認をしながらトップマネジメントを行い、コンプライアンスの徹底を主とし、取締役会に対しても独立に意見をする立場の役職を設置する」とした。