ニュース

“アルゴリズムよりも正しい”音声検索結果を企業・店舗が提供可能に~「Yext Knowledge Engine」の企業情報、Amazon Alexaで配信

 Yext(イエクスト)は、Amazonとのグローバル提携を発表し、Alexaを利用するエンドユーザーは、Alexaの音声検索を利用して、企業や店舗の所在地、連絡先、営業時間などの最新情報を入手できるようになる。

 日本時間の8月1日、Yextが持つ全世界150万拠点の情報をAmazonに提供し、その後2週間以内に、エンドユーザーが利用できるようになる。

Yext代表取締役会長兼CEOの宇陀栄次氏

 Yextのクラウドプラットフォームである「Yext Knowledge Engine」で管理している企業情報を、Amazon Alexaを使って配信することができるため、企業や店舗は正しい情報を、エンドユーザーに提供できるようになる。

 Yext代表取締役会長兼CEOの宇陀栄次氏は、「Yextを導入することにより、これまで不可能だったデジタルメディアのコントロールが可能になり、企業にとって、正しい情報を配信することができるようになる」とする。

 デバイスで検索しても、目的の企業や店舗などのホームページを利用するケースが少なくなっており、一般消費者が投稿した写真やコメントなどが表示される場合が多い。特にモバイルデバイスでは、マップ上に場所と写真を表示するといったように、結論だけを表示することが増えている。

 「例えば、ファストフード店を検索しても、一般ユーザーが投稿した食べかけのハンバーガーの写真が表示されてしまうといったように、店舗にとっては決していい好ましくはない情報が表示される場合も多い。これは、独特のアルゴリズムで検索されてしまうための結果であり、一般ユーザーなどが投稿した写真などは、店舗や企業側では表示内容は変えることができないという問題がある。だが、Yextを活用すると、デジタルメディアがコントロールできていなかったものを、正しい情報として配信することができるようになる。多くの企業が正しいデジタル情報を発信したいと思っており、日本においても、高い目標値を遙かに超える業績を達成している」という。

 今回のAmazonとの提携では、Yext Knowledge Engine上に、Alexaが設定されることになり、Yextの顧客企業のデジタルナレッジは自動的に同期される。

 「Alexaによる音声検索においても、Yextの情報を利用できるようになることから、Alexaで提供される情報の精度が高まることになる」(Yext執行役員営業統括本部長の網本信幸氏)という。

Yext執行役員営業統括本部長の網本信幸氏

 Alexaでは、データベースに事前に登録してあるものに関しては、会社名を理解する場合もあるが、それ以上の情報は回答できない。また、Apple直営店のApple銀座のように、住所や営業時間まで登録されている場合には、そこまで回答するケースもある。Yextのデータを活用することで、正しい企業情報が提供される範囲が広がるというわけだ。

 Yextは現在、日本において小売・飲食店など約10社で活用されており、2019年1月末までに物流・金融・ホテルなどにも広げ、100社の利用を想定している。

 「日本で事業を開始したのは2018年2月からであり、まだ活用している企業は少ない。だが、このサービスのメリットをすぐに理解してくれる企業が多く、反応がいいことから、一気に転がる手応えがある」とする。

 また、「店舗を訪れる際に、徒歩で訪れる場合と車で訪れる場合には誘導する場所が異なるということもある。また、タクシーだったら、方向によっては反対側で降りて渡った方が早いといったような、スタッフだからこそ誘導できるような情報もある。今後は、そうした情報も提供できるようになる。また、仕組みを構築することによって、最新情報をもとに、店舗が空いているのかどうかといった直近の状況を知らせるといったことも可能になる。こうした正しい情報を提供することは、検索サービスの品質を高めることにもつながる。Googleとは敵ではなく、Googleのサービスをサポートする立場でもある」という。

 Yextは2006年に創業した企業で、Yext Knowledge Engineをベースにした「デジタル・ナレッジ・マネジメント(DKM)」プラットフォームを提供。現在、Denny'sやMarriott、McDonald、T-Mobileをはじめとする数千社が、Yext Knowledge Engineを活用してブランドを管理したり、ブランドエンゲージメントを高めることで、来店客の増加や売り上げ拡大を実現しているという。「100カ国以上で展開し、フォーチュン500社のうち約3分の1の企業が採用している」という。

 また、Yext Knowledge Engineが対応している地図、アプリケーション、検索エンジン、SNSサイトなどは、すでに100以上に達し、GoogleやApple、Facebook、Bing、Yahooなどが採用。このほど、新たにAmazon Alexaに対応する。

 Yextは、ニューヨークに本社を置き、2017年に日本に進出。日本法人の代表取締役会長兼CEOである宇陀栄次氏は、Salesforce.com日本法人の社長などを務めたことで知られる。Yextは、ベルリン、サンフランシスコ、シカゴ、ダラス、ジュネーブ、ロンドン、パリ、タイソンズコーナー、上海にも拠点を持つ。

 Yext市場開発本部ディレクターのタイラー・ドナヒュー氏は「今回の提携によって、音声検索の世界もしっかりとサポートできるようになる」とし、「モバイルでの検索は、音声検索という人が5分の1であり、日本のスマートフォンユーザーの49%が1カ月に一度、音声検索を利用している。音声技術の利用という点では、日本が先端である。音声検索はタイピングせずに行えることがメリットであり、43%の人が音声検索を利用したいとしている。正しい企業情報をAlexaが知っていることが重要である。Alexaの音声によるユーザーインターフェースや、Alexaが理解するためのAIはコントロールできない部分だが、Alexaが何を知っているべきかを司るナレッジグラフの部分は、Yextが提供する正しいデータを活用することができるようになる」などとした。

Yext市場開発本部 ディレクターのタイラー・ドナヒュー氏