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JEITA、新会長にNECの遠藤信博会長が就任、「Society 5.0を実現するプラットフォームとして貢献していく」

JEITA新会長の遠藤信博氏(NEC代表取締役会長)

 一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の新会長に、NECの遠藤信博会長が就き、5月31日、同協会で記者会見を行った。遠藤会長は、「Society 5.0を支える業界団体として、幅広い産業の会員企業と連携し、価値創出や社会課題の解決に取り組む」とした。

 遠藤氏は、5月29日付でJEITA会長に就任しており、任期は1年。

 また、米政府によるファーウェイへの禁輸措置などの影響については、「中国は世界の工場であることは間違いない。サプライチェーンにおいて、中国の工場抜きは考えられない。日本もインパクトを受けることになるだろう」としながら、「世界のGDPを支えている大国が、それぞれの力を発揮できないような選択をするとは思えない。だが、すでに中国からの工場移転といった動きも出ている。米中の2カ国間で問題を早く解決し、それが世界の経済成長につながることを願っている。ファーウェイに対する取引については、個社で考えるものであり、JEITAとしてなにかを行うものはない」とした。

業種・業界を越えて社会課題に向き合う、課題解決型の業界団体へ

 会見で遠藤会長は、2019年度において「JEITAの体制強化」「事業環境の整備」「CEATEC」の3点に取り組む姿勢を強調した。

 体制強化では、エレクトロニクス/IT産業以外の会員の声をJEITAの事業や活動に反映することを目的に、理事会社を拡大。JEITAの副会長に、JTBの田川博己会長、セコムの中山泰男社長が就任することを発表した。

 JEITAでは、2017年に会員制度の定款を変更。エレクトロニクス企業やIT企業だけにとどまらず、IoTに密接に関わる企業やスタートアップ企業も参加できるようにしている。エレクトロニクス/IT企業以外からの副会長就任は初めてのこととなる。

 また、筆頭副会長は、ソニーの吉田憲一郎社長が務め、そのほか、副会長には、東芝の綱川智社長、富士通の田中達也社長、シャープの野村勝明副社長、日立製作所の東原敏昭社長、パナソニックの長榮周作会長、三菱電機の柵山正樹会長、横河電機の西島剛志会長、村田製作所の村田恒夫会長兼社長が就任した。

 「JEITAは、業種・業界を越えて社会課題に向き合う課題解決型の業界団体への変革を進める。ITとサービスが一体となることで新たな価値を生み出し、地域活性化や安心・安全なスマートホームの実現に向けた取り組みなどを加速させる」とした。

 事業環境整備では、デジタルトランスフォーメーションに必要な事業環境の整備を掲げ、企業のデジタル投資の加速や新サービスの創出を後押しする税制導入や規制改革を働きかけるほか、AIをはじめとした、政府が政策的に取り組んでいるテーマに対しては、提言などを通して積極的に協力し、社会実装を進めるという。

 また、「JEITAには、世界の産業界との議論や、各国政府との対話が必要である」とし、「2019年1月のダボス会議で安倍首相が提唱した『Data Free Flow with Trust』を国際的な合意とするため、2019年5月に、G20の各国政府に対して、セキュリティやプライバシーとのバランスを伴った、データの自由な流通の重要性に関して共同提言を行った」などとした。

「CEATEC 2019」は産業界のオープンキャンパス、「1万人の学生の来場を目指す」

 CEATECについては、今年は10月15日~18日の4日間、幕張メッセで開催する予定に触れながら、「CEATEC 2019では、工学系の学生だけにとどまらず、将来を担うすべての学生に向けたアピール活動をしていく。CEATECそのものを、産業界のオープンキャンパスに見立て、基盤技術を支えるIT/エレクトロニクス産業の各社や、ユーザー企業による課題解決への取り組みを、見て、聴いて、感じて、考えてもらう場にしたい。Society 5.0時代を牽引するIoT人材育成を柱に掲げ、1万人の学生の来場を目指す」などとした。

 遠藤会長は、「今後1年間、変革の手を緩めることなく、名実ともにSociety 5.0を推進する業界団体として、価値を創造。産業と産業をつなぎ、業種、業界を越えた共創を推進するプラットフォームとなるべく、さまざまな取り組みを続けていく」と抱負を述べた。

JEITA発足から20年目の節目の年、「業界団体も変化していかなければ」

 また、会見では、JEITAの源流が、1948年に設立した無線通信機械工業会(のちの日本電子機械工業会)であることに触れながら、「2000年11月に、日本電子機械工業会と日本電子工業振興協会が統合して、電子情報技術産業協会(JEITA)が発足してから20年目の節目の年となる。その間、この業界は、激動の時期を過ごし、猛烈なグローバル化とデジタル化の波を受け、変化を余儀なくされた局面もあった。いまでは、IoTやビッグデータ、人工知能の技術の進展により、産業構造や社会構造そのものが大きく変わりつつある。それによって、業界団体の役割も大きく変わり、従来型の産業の垣根は崩れ、単一の業界のことだけを考えて行動する時代ではなくなった」とし、「日本が目指しているSociety 5.0の世界は、あらゆるものがインターネットでつながり、データを共有することで、多くの人が積極的に価値創造に参画し、自分に合ったライフスタイルと幸せを実現できる社会である。JEITAには、このプラットフォームを構築するうえで、なくてはならない企業が集結しており、まさにSociety 5.0を支える業界団体と言っても過言ではない。業種、業界、地域、国家の枠を超えたデータの利活用には、ルールの策定、標準化などが必要であり、それを従来の枠にとらわれずに、スピーディーに行わなくてはならない。業界団体も変化していかなければならない」などとした。

 さらに、「JEITAは、電子部品や電子デバイス、電子機器、ITソリューション、サービスにとどまらず、それらを中核として、他の製造業やサービス産業を含む、あらゆる産業をつなげるプラットフォームになりつつある」とし、「JEITAでは、2017年に、家電やIT機器メーカーに加えて、住宅や住宅設備、サービスなどの住まいに関わる幅広い企業の参画を得て、スマートホーム部会を創設。データを、業種、業界を横断的に利活用できるためのルール策定などで成果を上げている。これによって、従来型の業界団体から、共創を実現する課題解決型のプラットフォームへと変化しつつある。JEITAは、幅広い産業から参加する新たな会員企業と連携し、課題解決や競争力強化、新市場創出に取り組むことで、日本の経済や日本の社会の未来のために、Society 5.0を実現するプラットフォームとして貢献していく」と述べた。