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「ロボホンと一緒に修学旅行」で子供の成長を、JTBとシャープがサービス発表

「身近で、楽しく利用できるのが特徴」

ロボホンと一緒に旅行、観光案内や事前学習にも……

 JTBは、シャープのモバイル型ロボット「RoBoHoN(ロボホン)」を活用した教育旅行プログラム「ロボ旅@教育旅行」を、2019年11月5日から発売した。

 修学旅行などで京都を訪れる学校向けに、観光案内機能を搭載したロボホンを貸し出し、事前、事後学習も含めて、観光名所の歴史や文化を学びながら、ICTを活用する楽しさを体験できるプログラムと位置づけている。

活用事例イメージ
モバイル型ロボット「RoBoHoN(ロボホン)」

 具体的には、生徒向けの「旅マエ」の事前学習では、オリジナル教材を用いてロボットが動く仕組みやAIを学習するとともに、ロボホンに発話させるオリジナルの観光案内文を考え、位置情報とともにインプットする。

 また、「旅ナカ」の班別研修では、5~6人の班ごとに1台のロボホンを貸し出し、位置情報をもとに、生徒が考えた発話を含めて、京都市内500カ所以上の観光名所でロボホンによる自動観光案内を体感でき、歴史や文化を学ぶことができる。ここでは、他の班が作成したオリジナルの観光案内も聞くことができる。

 「旅アト」の事後学習では、ロボホンに搭載しているカメラで撮影した写真や、GPS機能を活用した行動履歴データを、班ごとの成果発表に利用できる。

子供の主体的な行動をロボホンが促進

JTB 法人事業本部事業推進部旅行事業推進担当部長の洪水敏孝氏

 JTB 法人事業本部事業推進部旅行事業推進担当部長の洪水敏孝氏は、「2016年に学習指導要綱が改訂により、ICTを活用した学習活動の充実が求められるなかで、現場の先生はこれにどう対応すべきかといった課題を抱えている。

 JTBは、そこにロボホンが活用できないかという観点から検討を続けてきた。単に、京都の観光名所の案内をするだけでなく、情報を集める段階から、ロボホンにどう観光案内をさせるかを考え、世界でひとつの観光情報を作るといった体験ができ、旅ナカでは、わかりやすく発表するためにはどんな情報が必要かを考え、主体的に情報を集めることができるようになる。

 また、旅アトでは、必要な情報を抽出し、表現を工夫して発表することができる。ロボホンを活用することで、子供たちが主体的にまとめ、情報活用能力を育むことができる」とした。

 さらに、教職員に対しては、指導管理システムを提供。教職員用のタブレットから、生徒が持つロボホンの位置情報を把握したり、生徒に対するメッセージをロボホンに発話させることで、連絡手段としても利用できる。

ロボホンはタブレットを使って位置を把握できる

 「緊急時に場所を把握したりといった使い方や一斉の連絡への利用のほか、生徒たちが行動ルートから大きく外れたり、集合時間が遅れそうな時にも、ロボホンを通じて注意を促すことができる」という。

「ロボ旅@教育旅行」が1人1000円で

 JTBでは、全国64カ所に教育旅行営業拠点を持ち、「ロボ旅@教育旅行」を販売。現在、100台のロボホンを導入しているという。なお、今回のブログラムの企画プロデュースはゲンが担当している。

 京都を対象にしたのは、主要ターゲットとする中学校においては、全国対象人数の60.7%が京都を修学旅行先に選んでいることが理由だという。

 「京都での反応を見て、東京や沖縄といった他の地域への展開も考えたい。また、小学校の遠足などでの利用も視野に入れたい」(JTBの洪水氏)という。

 プログラム販売価格は、ロボホン1体(1グループ)あたり、6000円(税別)。価格は、旅ナカでの本体貸し出しと、旅マエ、旅アトのサービス利用を含む。「班に一台ということを考えると、1人1000円で利用できる計算になる」とした。

 なお、販売開始時点では、ロボホンの貸し出しは旅ナカだけだが、今後、旅マエと旅アトの貸し出しも検討する。今後のバージョンアップや追加オプションにより、価格は変動することがあるいう。

 すでに、2019年6月および7月に、中学校4校を対象にトライアルを実施。生徒からは「それぞれの建物に到着すると自動で案内をはじめてくれたので、とても使いやすくてよかった」、「班の雰囲気が明るくなった」といった声があがっていたほか、教員からは、「GPS機能によって班の行動地点が把握できた」、「従来のスマホに比べて、子供たちがより旅行に興味を持ってくれた」といった声があがっていた。

子供が「楽しみながら」能力を伸ばせる

 JTBでは、「小学校ではプログラミング教育が必修化し、中学校、高校でもICT化教育が拡充されている。学校現場でのICT整備や学習内容の検討が課題となっており、そこにもこのブログラムが活用ができる。

 今後、旅マエにおいては、プログラミング学習にあわせた出前事業のほか、学校へ貸し出して、発話内容を自ら入力したり、旅アトでは、写真に加えて、動画も利用できるようにし、表現の高度化を図ったり、ロボホンに発話させるロボホンプレゼンコンテンストの開催などにつなげるといったことも考えたい。修学旅行だけでなく、教育活動のひとつとして活用してもらいたい」(JTBの洪水氏)とした。

JTB 執行役員 法人事業本部事業推進部の檜垣克己部長

 JTB 執行役員 法人事業本部事業推進部の檜垣克己部長は、「文部科学省は、2020年度から実施する新学習指導要領において、情報活用能力を、『学習の基盤となる資質・能力』と位置づけ、ICTを活用した学習活動の充実を提唱している。

 こうしたなか、JTBでは、学校行事トータルデザインを提案し、多角的学校経営サポートによる教育価値向上の実現に向けて、学校課題の解決、教育価値の向上を支援している。

 『ロボ旅@教育旅行』は、学校行事トータルデザインのひとつであり、子供の能力の資質を育む取り組みのひとつになる。ロボホンによって、スマホとは違う形で、身近で、楽しく利用できるのが特徴だ。2023年には、200校の利用を目標にしている。今後も、JTBならではの価値を提供することで、教育現場の課題を解決し、支援をしていく」と述べた

「一人でも多くの子供たちにロボットやAIに触れてほしい」

AIoTクラウド 市場開拓部の景井美帆部長

 一方、シャープの100%子会社であるAIoTクラウドの市場開拓部・景井美帆部長は、「ロボホンは、音声対話で機能が利用できる通信端末であること、持ち歩ける二足歩行ロボットであること、アプリの追加で成長するといった特徴を持つ。

 2016年5月に初代ロボホンを発売したのに続き、2019年2月には第2世代シリーズを発売し、より購入しやすくした。購入者の79.2%が満足しており、81.3%がココロプランを継続している」と、これまでのロボホンの状況について説明。

 「コンシューマ利用のほか、観光、教育、接客といった分野でも利用されている。観光では、ロボホンと一緒に旅をするサービスや、英語、中国語、韓国語に対応した観光案内でも利用されている。

(左から)  JTB 法人事業本部事業推進部旅行事業推進担当部長の洪水敏孝氏、JTB 執行役員 法人事業本部事業推進部の檜垣克己部長、AIoTクラウド 市場開拓部の景井美帆部

 すでに、2018年1月から、京都を対象にした「ロボ旅」をJTBとともに商品化している経緯があり、今回のプログラムはこれをベースにしている。また、教育では、ロボホンの会話や動きを組み合わせて、プログラミンクが可能なブロックプログラミングソリューションを開発し、小学校で利用されている。

 シャープは、教育分野におけるロボホンの活用を広げるために、さらなる機能拡張や改善を図りたいと考えている。一人でも多くの子供たちにロボホンに触れてもらい、AIやロボットの体験をしてほしい」とした。

 シャープでは、ロボホンを、2020年度末までに3万台を販売する計画を打ち出しており、個人向けと法人向けは、半々の販売比率を想定している。