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お寺のウェブサイト構築は、WordPressで信頼できる情報提供を

ドメイン名選びからサイト運用のコツまで

方便山香蓮院善立寺の副住職・小路竜嗣氏

 フィンテックやエデュテックなど、“○○テック”という言葉がしばしば聞かれる。そんな中、お寺×ITの"テラテク"で活動しているのが、「寺院デジタル化エバンジェリスト」を名乗る方便山香蓮院善立寺(ほうべんざんこうれんいんぜんりゅうじ)の副住職である小路竜嗣(こうじりゅうじ)氏だ。

 このテラテクの活動の一環として、寺社に向けて、公式ウェブサイトを「WordPress」で作ることを啓蒙するセミナー「寺社×ウェブサイト~寺社向けWordPressインストール&サイト構築講習会」が11月上旬に開催された。

 ハンズオン(実習)用サーバー環境と会場を提供したのは、さくらインターネット株式会社だ。ちなみに、小路氏が今回のセミナーを開催したいとテック&ガジェット系SNS「グルドン」でつぶやいたところ、そこから紹介されて実現したという。

「サイトが多すぎる問題」が、公式ウェブサイトを立てるべき理由

 まず、なぜ寺社が公式ウェブサイトを立てたほうがいいかの理由から小路氏は説明した。

 いわく「寺社情報サイトが多すぎる問題」。Googleでお寺の情報サイトを検索すると、Googleマップからサードパーティーのサービスまで、多数のサイトがヒットする。

 中には、寺院を勝手に登録して住職のコメントを捏造、本社住所として有名ラーメン店の場所を勝手に使う詐欺サイトもあるという。

 これに対して小路氏は、いつ参拝していいのか、駐車場はどこか、電話番号は……といった公式情報の重要性を説いた。「大型台風が来たときに、みんながアクセスするので自治体ウェブサイトが遅くなった。信頼できる情報の重要性は増している。」(小路氏)

寺社情報サイトが多すぎる問題
信頼できる公式サイトが必要

「仏の教えは5年や10年で変わるものではない、移り変わりの激しいSNSよりも公式サイトを」

 では、SNSはどうか。小路氏はさまざまなSNSのアカウント数ランキングの移り変わりを示し、入れ替わりが激しく5年後にどうなっているか分からないと語った。また、自身の善立寺の記事のうち、SNSで多くシェアされた記事と、重要である寺の紹介ページのギャップを紹介した。

 そして、「寺に求められる情報はフロー型ではなくストック型。普遍的な内容を提供していけばいい。仏の教えは5年や10年で変わるものではない。そのため、SNSよりもウェブサイトのほうが向いている」と説明した。

 さて、どういう内容をウェブサイトに載せればいいか。小路氏は、善立寺にウェブサイト経由で来た問い合わせから「活動の様子を見て」「どういう人か分かったので」という言葉をピックアップ。

 また、法話ページがとても長いが熱意と真面目さが伝わる兵庫県の寺のウェブサイトも紹介して、「特別に面白い必要はなく、そのお寺の『ひととなり』がわかるのが大切」と語った。

ストック情報にはSNSよりウェブサイト
「ひととなり」が分かるのが大切

業者だと1ページあたり18万円請求されることも! 自分で作れば年1.5万円に

 このようなウェブサイトを作るにあたって小路氏が勧めるのが、WordPressで自分でコンテンツを作ることだ。主な理由はコスト。業者に依頼すると、1ページあたり18万円を請求されることもあるという。

 また、寺社は事業継続期間が長いため、継続コストもかかる。それに対して、さくらのインターネットなどレンタルサーバー事業者により用意されたWordPressであれば、低コストですむ。

 小路氏はざっと、1年にサーバーレンタル費用が1万円、ドメイン名費用が5000円として、年1.5万円と試算した。

 「最終的には業者に依頼するとしても、一度、WordPressでウェブサイト作りを経験しておけば、相場がイメージできてフェアな契約ができる。」(小路氏)

 WordPressを選ぶ理由として小路氏は「プログラミングなしで高品質なサイトが作れる」「テーマが多数用意されている」「豊富なプラグイン」「スマホからでも確認・更新できる」「サポート情報が豊富」を挙げた。そして、お勧めのテーマやプラグインなども紹介した。

業者に任せるとお金がかかる
WordPressを選ぶ理由

多数ある同名寺院の中からピンポイントで検索可能に、ドメイン名を工夫して分かりやすく

 そのほか、寺社特有の問題として、同じ名前の寺社があり、ドメイン名を選ぶときに工夫が必要なことを小路氏は取り上げた。そのため、事前に同名寺院を検索して調査する必要がある一方、簡潔で分かりやすいURLにしたいということもある。ちなみに「善立寺」は全国で43カ所あるという。

 これについて小路氏は、名前がぶつかった場合の工夫として、寺の名前に宗派や地域名を付けることを提案した。また、例えば赤い門が地元で有名なのであればそれを用いるなどの特徴を入れるのもよいだろうという。

 その一方でダメな例としては「hobenzankoreninzenryuji」のように長い正式名称をドメイン名にすると、よく分からなくなるからやめたほうがいいと説明した。

ドメイン名を選ぶときに同じ名前の寺社があるという特有の問題
名前がぶつからないようにする工夫

セミナーだけでなく、参加者がハンズオン形式で「WordPress」を体験

 セミナーのあとは、参加者がそれぞれ「さくらのレンタルサーバー」を使ってWordPressのハンズオン(実習)に取り組んだ。実際にサブドメインを取得して、WordPressをインストールし、初期設定して最初のエントリーを追加するところまで体験した。

 そのほか、小路氏のセミナーの前には、さくらインターネットの前佛雅人氏により、「ウェブサイト構築入門のための入門」としてインターネットやウェブ、ホスティングサービスなどについての基礎知識も解説された。

ハンズオンも実施