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渋谷駅直上のミクシィ新オフィスを見てきた。渋谷スクランブルスクエア28~36階
2019年12月11日 06:30
ミクシィグループは、12月16日ごろより一部利用を開始する新オフィスの報道関係者向け内覧会を開催した。まだ引っ越し前で誰も入ってきていない状態だが、ミクシィがデザインしたオフィスの素の状態のレポートをお届けする。
渋谷マークシティ、住友不動産原宿ビル、渋谷ファーストタワーを経て、渋谷スクランブルスクエア28~36階に移転
ミクシィというといまはモンストこと「モンスターストライク」でよく知られるが、もともとはスマホ時代より前に流行した国産SNSの草分け的存在である「mixi」で大きくなった会社であり、スマホ時代の前からずっと渋谷にオフィスを構えてきた。同社オフィスの歴史としては、神泉や道玄坂の小さなビル(当時は従業員数8名とか)に入居していた時代を経て、渋谷マークシティ、住友不動産原宿ビルと来て、2011年に現在も入居している渋谷ファーストタワーに移った。そして2019年、渋谷直上に11月に完成したばかりの、渋谷スクランブルスクエア28~36階へと移転を開始する。
渋谷スクランブルスクエアは最上階の47階から45階に展望施設「渋谷スカイ」があり、その下がオフィスフロア、さらにその下が商業フロアとなる。オフィスフロアには37~41階に「WeWork」が入居し、ミクシィはそのすぐ下ということになる。ミクシィの下のフロアには、音楽系出版社のロッキング・オン、「イモトのWiFi」で知られるエクスコムグローバル、IT人材などの事業を行なうレバレジーズ、AmebaやAbemaTVなどのサイバーエージェントが入居し、17階にオフィスフロアへの受付階、15階に会員制コミュニティスペースの「SHIBUYA QWS」があり、14階より下にレストランや各種ショップの商業フロアがある。
地上47階、地上高約230mの渋谷スクランブルスクエアは、渋谷区としてはダントツに背の高い高層ビルとなる。周囲にはDeNAなどが入居する渋谷ヒカリエ(地上34階)、Googleが入居した渋谷ストリーム(地上35階)、GMOなどが入居するセルリアンタワー(地上41階)、GMOの第2本社ビルオフィスの入る渋谷フクラス(地上18階)など、有名IT企業が入居するビルが建ち並んでいるが、ミクシィのオフィスからは、それらのビルを見渡すことができる。
ミクシィのオフィスはこれまで、渋谷駅近辺の数カ所に分散していたが、今回の新オフィスはそれらを統合し、1カ所に集約する。従来のオフィスは引っ越しが終わり次第、引き払うことになっている。オフィスの総床面積は、従来のオフィスの合計よりも倍近くに増えるという。また、一部の施設は渋谷スクランブルスクエアの設計段階からミクシィが関わることで、設備や構造的にも最適化がされている。
例えば28~36階まで、フロア内に階段が設けられている。ミクシィは渋谷スクランブルスクエア建設時から中層フロアを借りたいと申し入れし、この階段を設計に取り入れたという。ただしこの階段、建物の構造強度上の問題からか、35~36階と28~31階が建物東側、31~35階が建物西側とフロアによって東西に分散して配置されている。
36階の受付フロアに入ると、巨大なLEDディスプレイがお出迎え。ワンフロアに計55部屋の会議室/セミナールーム
受付階は36階となる。といっても、17階の渋谷スクランブルスクエアのオフィスフロア受付を通らないといけないので、フリーで入れる場所ではない。外部からの来客が降りる36階のエレベーターエントランスだけ黒塗りになっていて、受付フロアに入ると巨大なLEDディスプレイが出迎えるという趣向だ。ちなみに受付は内線電話があるだけの無人式。受付以外にも36階には大小あわせて55部屋の会議室とセミナールームがあり、来客との会議などに利用する。
ちなみに喫煙室は全フロアで2カ所だけ、来客も使えるこの36階と、オフィスフロアの真ん中の31階に1カ所ずつ設置されているが、いずれも電子タバコ専用となっている。
会議室は予約制で、入り口に設置されたiPadで時間内にチェックインしないと自動でキャンセルとなり、枠が解放されるなど、会議室利用の効率化も図られている。受付フロアの会議室は社内の人間だけの会議でも利用できるが、オフィスフロアには社内の人たち専用の会議室も用意されている。
渋谷スクランブルスクエアは、窓が床面から天井まであり、柱は建物の内側に多いという、開口部が広いイマドキの建築スタイルとなっている。そのため、外縁部は非常に開放感があり、特に四隅は2面が窓になっているため、むしろ高所恐怖症の人はツラいのではないかというくらいでもある。
35階はスタジオやマッサージ室など充実した共用施設、野菜が1g1円で食べられる社員食堂も
35階も来客が来ることを想定したフロアで、36階からはセキュリティのない階段で往来できる。35階にはセミナールームやスタジオ、マッサージ室、コンビニエンスストア、食堂などの共有設備や福利厚生設備がある。
スタジオとしては、音声用のサウンドスタジオと2つの撮影スタジオが用意される。ミクシィというと人気ゲーム「モンスターストライク」のXFLAGスタジオを擁し、音声収録や公式番組配信などもやっているので、サウンドスタジオも撮影スタジオも従来からミクシィオフィス内に設置されていた。しかしそれらはもともとビル施設になかったものを、あとから必要性が出てきて増設したもので、機能性にやや劣るものだった。
特に従来オフィスの撮影スタジオは、元々はミクシィの笠原健治会長の会長室(ほとんど使われていなかった)を改装したものだったという。防音もしっかりしていなかったことから、賑やかな番組を収録・配信するときは、フロア全体に音が漏れることをあらかじめ社内に通達していたそうだ。一方の新しい撮影スタジオは広くなっているほか、防音もしっかりしているし、オペレーションルームもあり、専門業者のスタジオにも匹敵する、かなり本格的なものとなっている。グリーンバックも用意され、モーションキャプチャもできるので、VTuberのようなことにも対応できるという。
マッサージ室は社内の福利厚生の一環として提供されているもので、従来オフィスにもあったが、新オフィスにも2室が設置される。ミクシィのスタッフとして雇用されている専門の指圧師が担当し、社員は1回30分500円で利用できるが、予約開始と同時にすぐ枠が埋まるくらい人気があるのだという。
コンビニエンスストアとしては、ローソンが食堂フロアの一角に入る。プレス内覧会の日は営業していなかったが、すでに食品や生活雑貨、Google Payなどのプリペイドカードといった商品が一通り、陳列されていた。コンビニエンスストアはミクシィの従来オフィス内にはなかった施設となる。
食堂も従来オフィスにはなかった施設だ。従来だと外部から弁当の業者を呼び、社内で販売していたが、今回の食堂にはちゃんとキッチンがあり、そこで調理したさまざまな料理を楽しめるようになっている。
今回は内覧会参加者向けに試食として、自由に取るデリ形式のものと、カレー、麺、スープが提供された。通常は有料だが、例えばデリ形式は1g1円なので、500円も払えば男性でも満腹になるし、小食の人にも優しいシステムだ。あえて白米などの主食を取らず、外で食べると重量単価の高いサラダや肉を中心に取ることもできるので、糖質制限や筋トレ中毒の人にも最適である。
ミクシィの従来のオフィスも渋谷徒歩圏内だが、それに比べても、新オフィスは駅直上ということもあり、周辺の飲食店には恵まれている。そもそもエレベーターで下るだけで(乗り継ぎは必要だけど)渋谷スクランブルスクエアのレストラン街にも行けるし、傘を差さずに渋谷ヒカリエや渋谷ストリームにも行ける。飲食店に恵まれた場所に移転するわけだが、社員食堂に手を抜くことなく充実させているあたり、福利厚生充実への意気込みを感じるポイントだ。
28~34階は重役室などのないフラットなオフィスフロア、席・ロッカーの名札は電子ペーパー端末で自動的に書き換え
28~34階はデスクがずらっと並ぶオフィスフロアとなる。デスクは全て同じもので、小さな引き出しがあるだけで袖机もない。しかしフリーアドレス形式ではなく、各社員が使うデスクは固定されている。社内のどこに誰が座っているかは、各フロアの階段近くに設置されているキオスク端末などで検索できるようになっている。
フリーアドレスではないが、ミクシィでは定期的に社内で席替えが行なわれる。各デスクには誰の席であるかを示す名札が付いているが、これは無線接続している電子ペーパー端末で、席替えがあると自動で名札も書き換わるシステムになっているという。この名札は個人用ロッカーにも使われている。
各デスクはコクヨの電動昇降デスクで、立位でも作業できるようになっている。デスクの奥側にはテーブルタップを引っかけるための特注金具が付いていて、ノートPCのACアダプターなどを容易に抜き差しできるようになっている。オフィスチェアはアーロンチェアにオプションのジャケットハンガーを装着したものが用意されている。
ちなみにミクシィの社員は通常はノートPCを使っているが、業務によってはデスクトップPCも使うとのことだ。しかし基本はノートPCということもあり、引き出しはMacBook Proがギリギリ入る大きさになっている。
現在は引っ越し前ということで、何もデスク上に置かれていないが、ミクシィ社内ではデスク上にフィギュアなどを飾るような人もけっこういるという。しかし袖机がないので、書類や文具などのものはあまり貯め込めないかたちだ。いちおう個人ごとに専用のロッカーも用意されているが、通勤時のカバンを入れたらそこまでになってしまいそうな大きさでもある。
重役のための個室は用意されず、みんなが同じフロアで、同じデスクとチェアを使っている。企業風土としてみんな同じ場所で働きたいという意識が強いようだ。席替えも定期的にあるので、ある日、気が付いたら隣に社長が座ってた、なんていうこともあるのかもしれない(さすがに社長周囲は秘書や社長室の社員で固められてると思うが)。
全フロアには随所にちょっとした打ち合わせや休憩に使えるカウンターやソファ、集中したいときに使える防音のフォンブースも用意されている。デスクの並ぶオフィスフロアでは、デスクは建物の中央寄りに配置され、窓際の建物外縁部にそうした共有設備が置かれている。外の景色を眺めながら休憩や打ち合わせができるというデザインだ。
3つの「Up」をコンセプトにデザインされた新オフィス
ミクシィが新オフィスに移転する狙いについて、ミクシィ代表取締役社長執行役員の木村弘毅氏は、「Meet Up.」「Switch Up.」「Dream Up」という3つのコンセプトがあると説明する。
まず「Meet Up.」としては、社内はもちろん、社外の人ともコラボしやすい環境作りを心がけているという。たくさんの会議室が用意されているのに加え、セミナールームなどイベントにも使いやすい設備が用意されている。また、いろいろな場所にちょっとした雑談や休憩に使えるスペースを用意しているので、社内でたまたま会った人とそのまま軽い打ち合わせをする、といったこともやりやすい。
従来のミクシィのオフィスは、3つの主要なオフィスビルと、さらに数カ所の公開されていない(来客がない)オフィスに分散していた。そのため、社内でも「出会わない人」がいたわけだが、今回はオフィスを1カ所に集約することで、社内での「Meet Up.」も強化される。木村社長は「今後はリモートワークの普及もあり、実際に会って仕事をすることは贅沢になるのでは。対面コミュニケーションの素晴らしさを際立たせる施設が必要」と説明する。
「Switch Up.」は、オン/オフの切り替えだ。全てのデスクは昇降式で、立位で作業して気分転換もできる。また、自席以外にも作業に集中できるフォンブースや、飛行機のファーストクラスのような座席も用意されている。食堂やマッサージ室などの福利厚生も充実し、オフィス内にはソファや観葉植物なども多数配置され、休憩するときは徹底的にリラックスし、集中するときは徹底的に集中できるようになっている。
「Dream Up.」とは、意外なアイディアを思いつくことや創作することだ。スタジオなどのクリエイティブな設備を充実させ、社外のアーティストや声優、動画出演者も快適に利用できるようにしている。リラックスできるスペースや、たまたま社内で出会った人と世間話をできるスペースも用意することで、新しいアイディアを創出できる環境も整えている。
このように、ミクシィの基本コンセプトでもある「For Communication」の思想に基づいた3つの「Up」により、新オフィスはデザインされているというわけだ。
ミクシィの新オフィスは、12月16日から一部の部署が入居して利用を開始する。渋谷スクランブルスクエアは11月に開業したばかりで、どの企業も引っ越しを開始した段階で、搬入用のエレベーターのスケジュールを取れず、一気に引っ越しをするというわけにはいかないらしい。ミクシィでは12月16日から2020年2月にかけ、フロア工事を行ないながら、順次引っ越しをしていく予定だ。