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Google、東京・渋谷にスタートアップ支援施設「Google for Startups Campus」開設

12月13日まで参加者を募集

「Google for Startups Campus」のオープニングイベントに出席したGoogleの関係者や来賓、スタートアップの代表たち。中央のダルマには、Google日本法人代表のピーター・フィッツジェラルド氏(最左)、高市早苗総務大臣、米Googleのスンダー ・ピチャイCEOが目を書き入れた

 Googleの日本法人であるグーグル合同会社は19日、同社が東京・渋谷に開設するスタートアップ支援施設「Google for Startups Campus」のオープニングイベントを開催した。

 Google for Startups Campusは、Googleが実施するスタートアップ支援プログラム「Google for Startups Accelerator」で利用される施設。同プログラムは、AIや機械学習の技術で社会課題を解決することを目指すスタートアップを支援するもの。12月13日まで募集が行なわれ、最大12のスタートアップが選定されて、2020年2月中旬ごろから5月末までの約3カ月間にわたって集中的に実施される。

 期間中、参加スタートアップは、Google for Startups Campusを自分たちのオフィスとして利用できるほか、Google社員によるメンター制度やトレーニングプログラム、ほかのスタートアップや投資家との交流機会などが提供される。

オープニングイベントに登壇した米Googleのスンダー ・ピチャイCEO

 オープニングイベントには、米Googleのスンダー・ピチャイCEOも登壇した。ピチャイCEOは2001年、まだスタートアップだったGoogleが米国外としては初のオフィスを渋谷に開設したことに触れ、「Gmail、Chrome、Androidが登場するずっと以前にGoogle Japanがあった」と、Googleが長く日本を重視してきたことをアピールし、オリンピックなどで世界から日本に注目が集まる2020年にも、「日本の人々や企業そして訪日外国人を含む全ての人にとって役立つGoogleでありたい」との考えを示した。

 また、今回開設されるGoogle for Startups Campusに加え、今春リリースされたデジタルスキルトレーニングプロジェクトの「Grow with Google」などで、技術革新をリードする人材の育成や教育に力を入れていることを強調。さらにピチャイCEOは、Googleが2018年から支援している特定非営利活動法人「みんなのコード」に対し、新たに助成金100万ドルを追加提供することを発表。従来から小学校の情報科学教育の教員養成で支援をしていたが、今回の拡充により、全国の公立中学校向けの支援プログラムが開始される。

 最後にピチャイCEOは、「今回のGoogleの取り組みが日本らしい精神や信頼、技術に対する愛着などと同様に、将来にわたって受け継がれるレガシーとなることを願っている」と語ってあいさつを締めくくった。

来賓の高市早苗総務大臣

 オープニングイベントには来賓として高市早苗総務大臣も出席した。高市大臣は「Googleの取り組み、新しい拠点の設置は、日本のスタートアップを世界市場につないでくれる、たいへん意義深い取り組み。心から感謝をしている。革新的な技術やアイデアを持った中小企業は、日本の発展における宝物だと考えている。(アクセラレータプログラムで)Googleの持つ人的なネットワークなどもお世話いただけるのはありがたいこと。大いに期待している」と感謝と期待を述べた。

「Google for Startups」の取り組み

「Google for Startups Campus」の概要を説明するGoogle Startupsグローバルディレクターのアグニエシュカ・ヴィエニェク氏

 「Google for Startups Campus」は、スタートアップ支援プログラムの「Google for Startups Accelerator」で選定されたスタートアップ企業のオフィスなどとして利用される。

 Google for Startups Campusは、すでにイギリスのロンドン、韓国のソウル、イスラエルのテルアビブ、スペインのマドリッド、ブラジルのサンパウロ、ポーランドのワルシャワにあり、東京は世界で7番目の設置となる。東京のキャンパスの場所は、Googleの日本法人が今年から入居する、渋谷駅前のビル「渋谷ストリーム」の4階。Googleのオフィスと同じ建物に入居しているキャンパスは東京だけで、例えばメンター制度を利用する際、気軽にGoogle社員に会えるのが東京のキャンパスならではの特徴となっている。

報道陣に公開された「Google for Startus Campus」内のコワーキングスペース

 Google for Startus Campusには30席程度のコワーキングスペースに加え、セミナーなどに使えるクラスルーム、キッチン、ミーティングやテレビ会議に使う5つの小さめの会議室、そして今回のオープニングイベントでも使われた入り口ホールがある。

 コワーキングスペースはフリーアドレスだが、各スタートアップが利用できるロッカーも用意される。基本的に全て共有スペースなので、サーバーなどの機器を設置したい場合は、ほかの利用者と相談して行う形式になる。

ワーキングスペースの窓からは渋谷駅前の風景が広がっている

 Google for Startups Acceleratorは、AIや機械学習を活用するスタートアップを支援する、3カ月間の短期集中型のプログラム。ある程度、形になった製品やサービスを持つスタートアップを対象に、本格的な事業展開に向けた成長を支援する。

 支援内容は、主に、1)Google for Startups Campusを利用できること、2)Google社員によるメンター制度、3)トレーニングプログラム、4)スタートアップエコシステム(コミュニティ)への参画――の4つ。Googleからの直接的な金銭支援はないが、同キャンパスには世界中の投資家・投資会社が訪問するので、出資者との出会いの機会が提供されることになる。

「Google for Startus Campus」内のキッチン。カウンターやテーブルなどもある

 Google社員によるメンター制度としては、Googleのプロダクトについて、プロダクトの担当者からレクチャーを受ける機会があるほか、例えば広報などについても、Google社員に相談することができるとのこと。トレーニングプログラムでも、機械学習といった技術的なものだけでなく、人材育成や製品開発管理までサポートされる。

 Google for Startups Campusは他国での運用実績から、女性起業家の参加率が高いのも特徴になっているという。全世界の起業家における女性の割合は17.2%程度だが、同キャンパスを利用する女性は37%と、女性にとっても活用しやすい場所として好評だという。

オープニングイベントが行なわれた入り口のホール。天井のカマボコ型造形は、かつて同ビル(渋谷ストリーム)の場所にあった東急東横線の渋谷駅をモチーフにしているとか

 Google for Startups Acceleratorは、2019年11月19日~12月13日まで参加企業を募集する。応募の中からGoogleが同プログラムに適した企業を最大12社選定し、2020年2月中旬ごろに発表する。プログラムは2020年2月中旬から5月末までで、これが終了すると次のプログラムが募集される。詳細な条件などについては、Google for Startupsのウェブサイトに公開されている。

 同アクセラレータプログラム以外のGoogleによるスタートアップ支援プログラムについては、今後、順次公開していく予定。そうしたほかのプログラムでも、同キャンパスが利用される。こうしたスタートアップ支援の取り組みについて、Googleは投資などによって直接的な利益を出すことを目的とはしておらず、エコシステムや社会全体が成長することを目指しているという。