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国内企業の約半数が「5G」のビジネス利用を検討、サービス業や建設・土木業でも高い利用意向

 IDC Japanは、国内企業を対象にした5Gクライアント端末の利用意向調査の結果を発表した。

 これによると、5Gの利用意向があるとした回答は、全体の53.0%となり、半数を超えた。また、利用意向のある機器としては、「スマートフォン/携帯電話」が64.6%と最も高く、ノートPCも61.2%と高い利用意向が見られた。タブレット端末は49.4%となっている。その一方で、5Gの効果が期待されるとみられていたARやVRヘッドセットで利用したいとの回答は20%程度と、少数に留まった。

 5Gをビジネスに利用したいとの回答は、AIの54.2%に次ぐ高い水準であり、Wi-Fi6の46.1%、ロボティクスの44.0%を超えている。「期待値も多分に含んではいると考えられるが、ビジネスへの利用意向は高いと判断している」という。

各テクノロジーに関する採用状況
5G利用検討機器(5G利用意向者ベース)

業種別では情報通信業がトップ、一方で端末価格や通信料金を懸念する声も

 同調査は、従業員数50人以上の企業で、携帯電話やデータ通信カード、PCなどの導入や選定に関与している1087人を対象に実施したものだ。業種別では、情報通信業が67.7%と最も多く、サービス業や建設・土木業、製造業などの業種で高い利用意向がみられた。

 携帯電話/スマートフォンでの5G利用を検討している層は、「大容量のデータをやり取りしやすい」という広帯域性を理由に挙げているが、その一方で、5Gの特徴のひとつである低遅延性は下位に留まった。

 同社では、「AR/VRの5Gでの活用を検討する層では、低遅延性を挙げる比率が若干高い傾向にあるが、AR/VRに関するユースケースの不足を指摘する声も多く、4Gに比べて高くなる5Gの端末価格や月額通信料金を超えるだけのメリットを具体的に提示できていないという問題も明らかになった」としている。

 また、5G対応端末の利用を検討していない層では、5G対応端末の価格や月額通信料金について挙げており、「4Gに比べ端末価格や月額通信料金を懸念する声が多い」としている。

広帯域性/低遅延性の特徴を生かしたユースケースの創出へ

 IDC Japan PC,携帯端末&クライアントソリューションのシニアマーケットアナリストである菅原啓氏は、「5Gの市場形成のためには、通信事業者が個々の顧客の利用状況に合わせた通信コストの設定を行うことはもちろん、ソリューションベンダーなどが中心となって先進的なユースケースを積極的に応用展開し、5Gの利用に対するニーズを具体化させていく必要がある」としている。

 具体的には、キャリア側においては、「端末および月額利用料金について明確化し、5Gを採用する側の不安を取り除くこと」「カバーエリアと主要地域での実効速度を積極的に開示すること」、「5Gでのテザリングを解除すること」の3点を挙げている。

 また、5Gを利用する企業側においては、「5Gの広帯域性を生かしたユースケースを積極的に作ること」を挙げ、「コロナウイルス問題によって、話題に上ることが増えたテレワークや仮想化環境が、今後、一般化する可能性がある。また、これを機会にAR/VRおよびウェアラブルデバイスの業務利用の検討を進めるべきである。5Gが持つ広帯域性と低遅延性といった特徴は、これらのデバイスを、オフィス以外で活用するという観点で、有効な機会になる」としている。