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Teams新機能の「同じ背景に全員集合」で疲労軽減?日本マイクロソフトが語るデジタル改革
「カフェに集まる」「海に集まる」……そしてブレイクアウトルームやハートマークも実装
2020年11月18日 09:05
日本マイクロソフトが11月10日~13日に開催した法人ユーザー向けオンラインセミナー「お客様の取り組みに学ぶ、ニューノーマル時代リモートワーク最前線」において、日本マイクロソフト株式会社 執行役員 コーポレートソリューション事業事業部長の三上智子氏が、「中堅中小企業の変革の一歩をデジタルの力で」と題した講演を行った。
同講演は、会期4日目に行われ、この日は、「DXをあらゆる企業に-中堅中小企業様向け特別セッション」として、中堅中小企業に向けた内容で構成された。
三上事業部長は、約1年前には、Microsoft Teamsの1日の利用者数が全世界で2000万人だったが、現在では6倍となる1億1500万人なっていること、1日にTeams会議に参加している人が1日2億人に達していること、日本においては、Windows Virtual Desktopの月間アクティブユーザー数は、3月時点に比べて106倍に増加していることを示した。
「Microsoft Teamsの利用状況をみても、厳しい環境のなかでもデジタルを活用して前進するという動きが見られている。しかし、新型コロナウイルスが終息しても、もとの形には戻らないと考えている経営者や管理者、従業員が多い」としている。
全世界を対象にした調査によると、管理者や従業員の71%が、継続的にリモートワーク実施することを希望しており、管理者の82%がフレキシブルなリモートワークポリシーを希望しているというデータを示しながら、「コロナによって働き方が変わり、ニューノーマル時代においては、ハイブリッドで働く環境が常態化していく」と指摘した。
7割の中小企業がリモートワーク継続導入における課題解決が分岐点
その一方で、日本においては、中堅中小企業におけるデジタル化こそが重要であると訴える。
「日本の労働人口は、2025年までに58%減少する一方で、1時間あたりの労働生産性は、先進7カ国中最下位となっている。これだけをみると、日本の未来は悲しいものになる。とくに労働力不足は、中堅中小企業から始まっており、労働生産性は大企業の4割程度に留まると言われている。厳しい状況にあるのは、中堅中小企業の方である。それにも関わらず、デジタルは難しいと思っており、コロナ禍の直前まで、リモートワークの準備もできていなかった」と、コロナ禍以前の状況について語った。
「だが、コロナ禍でデジタルを活用しなくてはならなくなった結果、意外とできてしまったという中堅中小企業も多かったのではないだろうか。これまではできないと思っていたことが、わずか数週間で、人事制度のルールを変えて、デバイスを調達し、在宅で勤務できるようにしてしまった。調査によると、2020年5月には、89%の中小企業が、なんらかの形でリモートワークを実施している。その後も7割の企業がリモートワークを継続している。日本の中堅中小企業には、すごいパワーがある」と述べた。
こうした仕組みが、中堅中小企業にも備わったことで、必要なときに出社したり、リモートで仕事をしたり、フレキシブルな時間に働くことができるという環境が生まれ、その結果、地方でも仕事ができ、シニア層を含めて多くの人が働けるようになり、人材不足の解消につながったり、地方の企業も才能のある人を採用でき、働く人は生産性を高めることができるというメリットが生まれるとした。
だが、「リモートワークの適用が拡大するとともに、導入における課題も明確になってきた」とも語る。
たとえば、業務特性がテレワークに適していないため、対面でのコミュニケーションが必須だとする企業は62%に達し、様々な場所から、様々なデバイスで会社のデータにつなぐため、セキュリティリスクやサイバー攻撃が増加することを懸念している人は70%に達している。また、見積書や受発注書のハンコのために、出社を余儀なくされた決裁権限者や営業職は、74%に達したという。さらに、ITインフラやネットワークインフラが整っていないという企業は78%もあるという。
三上事業部長は、「リモートワークは課題が多く大変だから、元に戻そうとするのか。それとも、課題に対して解決策を考え、一歩進めていくのか。そこが、これからの大きな分岐点になる」とし、「先に触れたように、中堅中小企業は、大手企業の4割の労働生産性しかないと言われるが、2~3割の企業は大手企業よりも労働生産性が高いと言われている。中堅中小企業は、二極化が進んでいる。労働生産性が高いと言われる企業は、ITやデジタル化に積極的な投資を行っており、それによって、ビジネスを成長させ、従業員の給与所得も保証されている傾向がある。また、イノベーションは、身軽な中堅中小企業の方が生まれやすいというデータもある。もとに戻すのか、一歩進めるのかの判断は、飛躍ができるのか、できないのか、その可能性を秘めた分岐点である。地方にもリモートワークの波が出てきた。日本が元気になるきっかけになる」と述べた。
コミュニケーション課題はTeamsで解決ウェブ会議・ホワイトボード共有など
では、リモートワークの課題を解決するにはどうしたらいいのか。
三上事業部長は、「難しいテクノロジーを使わなくても解決できるものが多い。そして、Microsoft Teamsだけで解決できる部分も多い」とする。
たとえば、対面でのコミュニケーションが必須だとする企業が多いことについては、「店舗や工場など、どうしても現場に行かなくてはならない場面もあるが、Microsoft Teamsには、ウェブ会議やチャット、通話などの機能があり、コミュニケーションに関する課題が解決できる。ホワイトボード共有機能では、離れた場所から会議に参加している人も、会議室のホワイトボードを見ることができ、同じ空間で会議をしているような環境を実現できる」と述べた。
対面の会話や電話、メールが中心となっているコミュニケーションを、ウェブ会議やチャット、通話を活用した柔軟なコラボレーションに変えたり、コミュニケーション頻度や質の低下は、SNSの感覚で行える気軽なコミュニケーション手法に置き換えたり、コミュニケーションミスの増加については、共同編集や会話履歴の共有機能を活用するなどの例も挙げた。
「海中やカフェ」に全員を切り抜いて合成Teamsの新機能「Togetherモード」
また、オンラインでありがちな相手や自分の感情が伝わりにくいという課題も、Microsoft Teamsの機能の進化によって、臨場感のあるウェブ会議によって解決できるとする。
たとえば、会議などに参加している人の顔がグリッド内に表示されるこれまでの仕組みでは、脳への負担が大きいことがわかっているため、新たに追加され、順次配布中の「Togetherモード」では、顔の部分だけをくりぬいて、1カ所に人が集まっているように表示。観客席や講堂のような背景のほか、潜水艦やカフェ、海のなかにいるような背景も利用でき、脳への負担を減らしながら、一緒にいるという雰囲気を生むことができるという。
参加者をグループ分け「ブレイクアウトルーム」機能も
「ブレイクアウトルーム」は、会議の参加者を小グループにわけて、ブレインストーミングやワークショップに利用できる新機能であり、「ライブリアクション」は、ハートマークや拍手マークを送ることで、参加者のリアクションがわかるというものだ。この、ブレイクアウトルームは「一部実装されている人がいる」という段階とのこと。
「カスタムレイアウト」(2020年中に提供予定)は、プレゼンテーション時の演出を自動的に行うもので、発表者がスライドの前で説明を行なっているような表示を実現。発表者の手ぶりや表情から、AIが判断して、ダイナミックにレイアウトを調整するという。そして、年内に提供が開始される「ミーティングリキャップ機能」は、会議の要約文を文字起こししてくれるというもので、まずは英語で提供され、順次、他言語でも提供されることになる。
「Microsoft Teamsの新たな機能では、コミュニケーションの壁をなくすという工夫が凝らされている。フェイス・トゥ・フェイスでのコミュニケーションに勝る機能も追加している」とする。
確かに、カスタムレイアウトやミーティングリキャップといった機能は、デジタルだからこそ実現できる機能だといえるだろう。
「チャットが終わらない…」 リモートワーク特有の課題も解決
また、三上事業部長は、リモートワークが働く人に与えている影響について興味深い調査結果を示した。
調査によると、1週間あたりの会議や通話の数は55%増加しており、時間外にチャットを行うTeamsユーザーの数は2倍に増加、時間外での1人あたりのチャット数の増加率は69%となっているという。これは、リモートワークだからこその弊害だといえるだろう。
こうした背景から、燃え尽き症候群を感じている日本のリモートワーカーは23%もおり、仕事と生活の融合が精神面に悪影響を与えていると感じるリモートワーカーは33%と、約3分の1を占めたという。そして、「仕事関連のストレスの軽減に瞑想が有効だと考えるリモートワーカー」が70%に達しているという結果も出ているという。
三上事業部長自身も、「リモートワークが増えて、チャットが終わらず、プライベートと仕事の時間が分けにくくなる。これが蓄積していくと心と身体に負担が生まれる」と自らの経験を披露する。
だが、ここでも、Microsoft Teamsは利用者のケアを行うための機能を搭載することで、解決を提案するという。
Microsoft Teamsでは、MyAnalyticsの機能を活用することで、健康と生産性に関するインサイトを提供し、生産性の向上とともに、メンタルヘルスの向上も図ることができるからだ。実際、三上事業部長は、「MyAnalyticsによって、1カ月の間に、完全にオフだった日が2日間しかなかったと指摘された」という。休日も仕事のメールをチェックしてしまうということが行われたためのようだ。
MyAnalyticsでは、Office 365のメールや会議に関するデータ、TeamsやSkype for Businessでの通話およびチャットに関するデータなどをもとに、作業時間などを分析。作業者の生産性向上を高めるために、仕事の仕方を提案する自己分析ツールだ。
今後、MyAnalyticsを通じて、休憩を促したり、作業項目をチェックしたりといった機能が提供され、働きすぎを防止したり、健康面にも配慮した仕事の仕方を提案することになる。
PowerPoint感覚で紙ベースの業務課題を解決 「Power Platform」
一方、セキュリティについては、社内からの接続だけでなく、様々な場所からつなげることで発生するリスクを懸念する声が多いというが、日本マイクロソフトでは、社外でもデータを保護し、マルウェアからデバイスの保護を行う。さらに、デバイスの紛失時には、遠隔操作によるデータ管理と消去、標的型メール攻撃にはクラウドベースの電子メールフィルターを提供していることを紹介した。
「デバイスやメール、ファイル、SNSといった、すべての『蛇口』で対策をする必要がある。また、マイクロソフトは、新たな脅威が生まれても、わずか数秒後にはブロックすることができるようにしている」としている。
紙ベースの業務フローの課題を解決するためには、「Power Platform」を訴求した。
「Power Platformを活用することで、ノーコード、ローコードで、PowerPointの資料を作るような感覚で、1日、2日で、簡単にアプリケーションを開発できる。たとえば、申請、承認用のアプリを作って、これをPower Automateに乗せたり、集まってきたデータをPowerBIのダッシュボードで見える化したりといったことができる。さらに、電話やメールの問い合わせには、AIのチャットボットで対応できるような提案も行える」とした。
そして、IT機器や通信環境インフラの課題については、「モバイルPCを活用して、自宅から、セキュアにアクセスできる環境を実現したり、クラウド経由で電話の受発信をすることで、固定電話にかかってくる電話を取るために会社に行くということもなくなる。また、VPNに依存しない企業リソースへのアクセスや、仮想デスクトップから安全に社内リソースを利用するなど、ネットワーク帯域が厳しいために、家で働く環境が厳しいといった課題も解決できる」などと述べた。
最後に三上事業部長は、「生活様式や働き方が変わっていく今だからこそ、デジタルの力を最大限に使ってほしい。そこに日本マイクロソフトが貢献したい」とし、「最初から100点満点を取ろうとすると、何もできない。まずは、できる範囲から進めることが大切である」と提案した。