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KADOKAWAの「デジタル改革」をそのまま提供、DXのための人材育成サービス「KDX 道場」が提供開始

「DXの成功には経営陣の強い意志決定が必要」と各務社長

KADOKAWA Connectedが行なったKDX 道場の記者会見

 KADOKAWA グループのグループ会社「株式会社 KADOKAWA Connected」(KADOKAWA Connected)以下は3月15日に記者会見を開催し、同社が業界初のDX 人材育成サービス「KDX 道場」を同日より開始すると明らかにした。

 KADOKAWAグループと言えば、雑誌やマンガなどの出版・メディア事業で知られているが、アスキーブランドのITメディア事業を展開している他、傘下にはニコニコ動画の「株式会社ドワンゴ」(以下ドワンゴ)もあるなど、近年はIT企業としての側面を強めている。

 そのKADOKAWA グループのDX(デジタルトランスフォーメーション、デジタルを活用して企業や社会の変革を促すこと)推進する子会社がKADOKAWA Connectedで、KADOKAWA グループ内で実際に行なわれたDXの取り組みを行ない、そのノウハウを外部の企業や組織に提供するビジネスを行なっている。今回発表されたのは、これまで同社が提供してきたDXの取り組みをさらに進化させ、実際の企業や組織でDXを担当する担当者、ユーザー向けの研修サービスが今回発表されたKDX 道場となる。

「アナログ資産を生かすためにデジタル化を目指すのがDX」KADOKAWAグループでの経験を横展開

株式会社 KADOKAWA Connected 代表取締役社長 各務茂雄氏

 株式会社 KADOKAWA Connected 代表取締役社長 各務茂雄氏は「弊社でのDXの定義はアナログの資産を生かすための、その価値をデジタルで最大化するというものだ。KADOKAWAという事業会社で実際にやっている視点をサービス化している」と述べ、KADOKAWA Connectedが提供するDX関連事業は実際にKADOKAWAグループで行なわれたDXの取り組みのノウハウを、他社に提供する仕組みだと強調した。

DXとは
KADOKAWA Connectedの歴史
目指すところ
ドワンゴを始めとしたKADOKAWAグループのIT企業や外部人材により構成されている

 KADOKAWAと言えば、ドワンゴやアスキー事業などのIT関連の事業もあるが、やはりその主力は雑誌や漫画などのメディア事業。そうした出版メディア事業の多くは中小企業で、実のところDXが遅れている業界の1つと言ってもよい。

 各務氏によればKADOKAWA Connectedは2019年4月にKADOKAWAグループの子会社として創業し、これまでKADOKAWAグループのDXアドバイザリーサービスなどを行なってきており、実際にKADOKAWAグループの各社で実際にDXを推進してきたことで、様々な知見が集まってきていたという。その知見をKADOKAWAグループ以外の外部組織に提供するというのが今回発表された「KDX道場」の取り組みになると各務氏は説明した。

DXは5~10年単位

 各務氏は「DXというのは1年や2年で終わるような取り組みではなく、5年~10年続くような長い道のりを歩む必要がある経営改革だ。このため、弊社ではKADOKAWAグループで実際にやってみて効果があったことを横展開していく。その第一歩となるサービスを提供していきたい」と述べ、今後も継続してDXを実現する知見やノウハウを継続して提供していきたいと表明した。

DXは山登りのよう、山登りをする企業の担当者や従業員をサポートするKDX道場

株式会社 KADOKAWA Connected Customer Success部 部長 菊本洋司氏

 株式会社 KADOKAWA Connected Customer Success部 部長 菊本洋司氏は、今回発表されたKDX道場に関して具体的な説明を行なった。

KDXが考えるDX道
DX推進のギャップを埋める
DX道を極めるKDX道場

 菊本氏は「弊社が考えているDX推進とは山登りに似ていると考えている。小さい山に登ると次の山が見えるのが山登り。丹沢に登ると、南アルプスが見え、次には富士山が…DXもそれと同じで小さな課題を解決すると、次により重要な経営課題が見えてくる。そういう山の連なりが見えてきて道を作っていき、徐々に登っていって山頂に到達する、それを弊社ではDX道と呼んでいる」と述べ、DXの取り組みとは次々に次のターゲットが見えてくる山登りのようなものだと説明した。

KDX道場

 その上で「そうした中でDXを推進するリーダーは、様々な課題を掘り当てて大変な状況になっている。業務プロセスを明確にして、属人化を排除して…と1つ1つDXをやっているが、そういう担当者をサポートする。また、そもそもそういう道作りをするリーダーが足りていない。そうした次世代リーダーの育成が重要だと考えた」と述べ、DX化で重要なことはDXを推進しているリーダーを助け、そしてそのリーダーの後を継ぐような次世代のリーダーを育てることだと述べ、そのためにKDX道場とDX人材育成プログラムを提供していくのだと強調した。

KDX道場におけるDX人材育成プログラムの位置づけ

 菊本氏は「キャズム理論に基づいて提供していく、イノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティと属性の違いで段階的に受け入れられていくが、アーリーアダプターとアリーマジョリティの間にキャズムがある。これまでイノベーター向けのメンターサービスやアーリーアダプター向けのDXアドバイザリーサービスを提供してきたが、今回はアーリーマジョリティ向けのサービスとして提供するのがDX人材育成プログラムだ」と述べ、企業の中でDXを成功させる上で重要なアーリーマジョリティと呼ばれる比較的感度が高い従業員やリーダーに研修などを行なうサービスが今回の発表内容だと明らかにした。

 なお、菊本氏によればそうした従業員向けのプログラムだけでなく、クリエイターや一般消費者向けを想定顧客にしたサービスも現在KADOKAWA社内でトライアルを行なっている状況で、知見が有益になった段階でそうしたサービスも開始したいと述べた。

DX人材育成サービス
出版された書籍、マンガ
守りのDXの進行
事例など

 同社の発表によれば、DX人材育成プログラムはDXサービスオーナー向けのチーム研修と輪読会、そして従業員向けのITツール(Slackなど)体験トレーニングやマンガによるITツール活用術輪読会などが用意されており、200名以上の中小企業wp対象としており、料金は10万円/時間(月4回で40万円、ディレクター担当)ないしは5万円/時間(月4回/20万円、シニアコンサルタント担当)となる。サービスは3月15日より開始されている。

DXの最大の障害は経営陣の不明確な意思決定DXを推進するには強い意思決定が必要

左から菊本氏、株式会社 KADOKAWA Connected 渡辺基子氏、オンライン参加の漫画家 かんべみのり氏

 次いで菊本氏、株式会社 KADOKAWA Connected 渡辺基子氏、さらに漫画家 かんべみのり氏が参加して、同社が出版した「マンガでわかる!驚くほど仕事が捗るITツール活用術」というマンガによるDX入門書に関して説明が行なわれた。

 渡辺氏は同書が作られた背景について「こうしたIT関連の書籍ではツールの使い方をステップバイステップで学ぶ書籍がほとんどだ。しかし、このマンガでは、どうやったら業務に生かせるかの考え方や、実際にどう生かしたかのノウハウを書いている。これまでのIT系の書籍はIT業界ではない人には難しくてとっつきにくい。そういうIT音痴だと自分では思っている方にも楽しく習得してもらえるようなマンガになっている」と述べ、従来のIT系の書籍とは一線を画して初心者にもわかりやすくDXを説明しているマンガになっていると述べた。

Slackで連載
IT苦手な人が主人公
目次

 渡辺氏によれば同書はKADOKAWAグループ従業員向けのSlackで連載していたマンガがベースになっており、ITが苦手な主人公がITツールを活用して仕事を効率化していく様子をマンガでわかりやすく解説しているという。

マンガの中身

 マンガの作画を担当した漫画家かんべみのりさんは「このマンガを書くに当たって、クラウドでやりとりするのになれた。そうしたら今度は資料がメールで来るのが面倒に也、他の方と仕事するときもクラウドにあげて欲しいと思うようになった」と述べ、マンガを書くうちに自分でもクラウドやSlackなどの新しいツールの利便性を体感していったと説明した。

各務社長(右)とSlack Technologies 日本法人代表 佐々木聖治氏(左)
Slack Spotlight Awards

 先週の記事「Slackの革新的な活用で、「KADOKAWA Connected」と「N高」表彰」でも触れられている通り、KADOKAWA ConnectedはそのSlackとマンガの活用で、Slack Technologiesが行なったSlackを活用した革新的な取り組みを表彰する「Slack Spotlight Awards」で日本部門賞を受賞しており、今回の記者会見でSlack Technologies 日本法人代表 佐々木聖治氏がオンラインで参加してAwardの授与セレモニーが行なわれた。

 最後に行なわれた質疑応答では「企業や組織がDXを行なう上で障害となっているものは何か」という質問がされ、各務氏は「DXが進まない最大の理由はマネージメント層にあると考えている。特に上層部が明快な意思決定をしないでDXを進めて行くと、中堅のマネージャーや現場の人が振り回されて、なかなか進展しない。例えば一部のチームが縦ではDX出来たので、それを横展開すると、利害の調整がうまくいかなくて組織の壁に阻まれて出来ないという例をいくつも見てきた。そうしたことをデジタル技術やデジタル的な思考で物事を進めるDXが、我々がお薦めするDXの一丁目一番地だ」と述べ、DXを推進するには経営者が強い意志を持ってDXを進めるという点にあると強調した。