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IT人材不足感も企業は要件不明確、個人はスキルレベル「わからない」が3割超――IPAが調査報告書公開

 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は22日、「デジタル時代のスキル変革等に関する調査報告書」を公開した。第4次産業革命、デジタルによる業務改革の実現に向けて、人材の動向を把握し、今後のIT人材や組織のあり方を考察する目的で2020年度に実施したアンケート調査の結果をまとめている。

 同アンケート調査は、国内企業1857社、国内企業に所属するIT人材1545人、海外企業に所属するIT人材616人を対象に実施した。

 DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいると回答した企業は、2019年度では41.2%であったのに対して2020年度では53.2%と増加。2019年度は小規模な企業ほどDX実施率が低い傾向が見られたが、2020年度には小規模な企業のDXが進み、規模による取り組み格差が解消しつつあるとしている。

企業の「DXに取り組んでいますか」回答。2019、2020年度比較(IPA公開資料より)

 DXの「成果なし」と認識している企業のうち、52.9%がIT人材が「大幅に不足している」と回答。IT人材を新規採用するにあたっての阻害要因として、「成果なし」の企業は「採用したい人材のスペックを明確にできていない」(33.5)、「魅力的な仕事を用意できない」23.5%、「魅力的な処遇が提示できない」(40.8%)と回答しており、これらの割合はDXの「成果あり」と認識している企業を上回る。IT人材に求める要件の定義や、社内の制度面の整備が遅れていることがうかがえる回答となっている。

 一方、「成果あり」と認識している企業では、採用したい人材のスペックが明確で、魅力的な仕事と処遇を用意できている、とする傾向がみられる。また「要求水準を満たす人材がいない」との回答は46.9%に上り、「成果なし」の企業よりも多くなっている。

企業の「IT人材を新たに採用するにあたっての阻害要因は何ですか(複数選択)」回答

 個人に関する調査では、人材市場における自身のスキルレベルをどのように見極めているかを、日本、アメリカ、ドイツの3カ国を対象に調査している。

 最も多かった回答として、アメリカとドイツでは、「転職活動の中で募集要件等を見て、自身のスキルレベルと比較している」がそれぞれ40%以上だったが、日本は「自分のスキルレベルの水準はわからない」が最多で34.3%(アメリカ:2.7%、ドイツ:6.1%)だった。

 また、自分のスキルレベルに「十分な競争力がある」との回答が、アメリカは69.4%、ドイツは65.0%に上ったが、日本は21.5%と大幅に下回っている。

個人の「ご自身の人材市場におけるスキルレベルを見極める際に特に気にかけていることは以下のうちどれに該当しますか(3つまで選択)」回答(IPA公開資料より)
個人の「ご自身の現在のスキルレベルは人材市場においてどの程度競争力があると思いますか」回答(IPA公開資料より)