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Amazon Echo Showを標準装備、スマートホーム化されたIoT対応賃貸マンションをリンクジャパンが公開
2022年2月1日 13:03
IoTスマートホーム事業を手がける株式会社リンクジャパンは1月24日、同社のIoT機器などでスマートホーム化した賃貸マンション「Brillia ist 上野」の一室を報道陣向けに公開した。この部屋は、賃貸物件でありながら、あらかじめIoT機器が組み込まれていて、入居すればすぐにスマート化された鍵、エアコン、照明、電動カーテンなどの利用が可能になる。
Brillia ist 上野は、東京建物の賃貸マンションで、JR上野駅から徒歩圏内にある。今回は、完成間近というタイミングでスマートホーム化が決まったため、スマートホーム化された居室は全36戸のうち6戸にとどまる。スマートホーム化にあたっては、リンクジャパンのIoT機器をハブとし、一部提携社の製品も連動する。
備え付けの機器でスマート化されたものは、玄関の鍵、エアコン、照明、電動カーテン、温度・湿度のセンサーなど。さらに入居者が持ち込むテレビや家電機器などを登録して連動させることも可能で、それらを一括制御が可能となる。
スマートホーム機器があらかじめ設置されたマンション
部屋にはスマートスピーカーの「Amazon Echo Show」も標準装備され、組み込まれたIoT機器は、このEchoやスマートフォンアプリからの操作できる。また、玄関にはシーン設定をした物理的な押しボタンを配置した多機能スイッチも用意されており、例えば外出時には、この多機能スイッチ1つで照明やエアコンの電源をオフにし、カーテンを閉めるといった操作を一括で行うこともできる。
設定も簡単で、入居時に用意される部屋のQRコードを手持ちのスマホでスキャンすることで機器の設定が完了し、鍵の操作などまで、すべてができるようになるという。
設置される機器としては、リンクジャパンのスマートハブを設置。そこからZigbeeの通信によってスマートスイッチ、温度湿度センサー、多機能ボタン、赤外線を発するスマートリモコンなどと通信する。リンクジャパン以外の機器、例えば玄関ロックは提携先の美和ロックの製品となるがネットを介して連携を行っている。
エアコンはエアコンメーカーのネットリモコン機能などは使わず、赤外線を送信することでさまざまな機器を操作可能なスマートリモコンで操作する形だ。そのため赤外線リモコンで操作するエアコンであれば、メーカーを問わず使うことができる。また、このスマートリモコンはスマートプラグにもなっていて、エアコンの電源をここに繋ぐことで、消費電力からエアコン稼働状況も把握することができる。さらに部屋には温度湿度センサーも取り付けられており、室温を遠隔で確認したり管理することも可能となっている。
また、スマートリモコンは、エアコン以外にもテレビなどさまざまな赤外線リモコン対応機器を操作することができる。このスマートリモコンは、エアコンのコンセントとして使えるのがポイントで、エアコンのコンセントは高い位置にあるため、まわりに障害物が少なく、部屋全体への赤外線の送出に適しているわけだ。
さらにユーザーが持ち込む機器にも対応する。リンクジャパンではカメラやCO2センサーなども市販していて追加できるほか、提携した各社の製品との統合操作も可能となっている。
ユーザーが導入するのではなく、建物に付属する方向へ
今回導入したBrillia ist 上野では、3つのタイプの間取りが用意されるが、いずれもターゲット層は30代の男女問わず。公開した部屋は広めのタイプの間取りで、夫婦などの2人暮らしを想定したものとなる。今後は賃貸マンションなどにも高付加価値が求められるとのことで、今回のスマートホーム化は、東京建物とリンクジャパンとの提携によって実現し、マンションの付属設備としての導入となる。
部屋のスマートホーム化に際しては、スマートスイッチや電動カーテン用などに、通常とは違った電気配線が必要になる。例えば通常の壁スイッチであれば、配線は電源の片方の極の入り切りをするだけとなるのだが、スマートスイッチの場合は、スイッチそのものを動作させる電源が必要なため、電源の両極が配線されている必要がある。また、電動カーテンレールも電源を必要とするため、カーテンの近くにコンセントの設置が必要となる。
部屋の鍵についても後付のスマートロックは市販されているが、鍵メーカーによるスマートロックを設置、動作の確実性や信頼性の面でも十分なものとしている。
これらの機器を美観を損ねずに導入するには、配線工事なども必要となるため、建物の工事段階からスマートホーム化を想定したものしておく必要がある。すでにできあがった住居に後から導入するには、それなりの工事が必要となってしまう。
すでにコンシューマ向けにもスマートホーム機器は市販されているが、自分で機器を選び、設置し、設定するという一連の行為はけっこう面倒なほか、場合によっては大掛かりな工事が必要なため普及が進んでいない。リンクジャパンにおいても、コンシューマ向けの機器も販売するが、マンションのデベロッパーやハウスメーカーなどとの提携を行い、機器の販売ではなく建物に設置するという形での事業に力を入れている。
ちなみに、Brillia ist 上野の場合は竣工寸前で導入を決定したため、配線変更とそれに伴う内装工事のやり直しが発生するなど、追加工事が必要になった。そのような事情もあって、Brillia ist 上野の全室がスマートホーム化されているのではなく、一部居室のみの導入にとどまっている。
リンクジャパンはハブとなる“家のOS”を提供する
リンクジャパンは、IoTプラットフォームでワンストップサービスを提供する、国内初のIoT専門企業。同社CEOの河千泰進一氏は、シリコンバレーでIoTという言葉が生まれたことを知って、ライフワークにしたいと思い起業した。住宅向けにフォーカスした理由は、ほかのジャンルよりも参入しやすかったからだといい、ここまでの発展は、当初は予想していなかったという。
同社ではすでに、赤外線スマートリモコンといったハードウェアの提供をしているが、現在はホームリンクアプリのサービス提供に注力。今後はハードウェアの開発に注力するのではなく「ホームリンクをベースにさまざまなサービスと技術をアップデートすることで機能を増やしていく」といい、「ハードウェアにとらわれず、アップデートできる世界を提供を提供していきたい」としている。
ソフトウェアに注力、将来的にはハードウェアは提携企業に任せるとしている河千泰氏だが、一方でハードウェアへのこだわりも強い。例えば同社のスマート電球の開発にあたっては、当初、既存製品と提携してスマート電球の機能を提供することも検討していたが、自らも自宅に設置して使いやすさなどを検証した結果、あまり使いやすくなかっため、手頃な価格で自社製品を登場させたのだという。
また、ホームリンクアプリ自体は今後も提携先を広げていく一方で、Zigbeeの米CSA(Connectivity Standards Alliance)が提唱するスマートホームの共通規格「Matter」への対応も検討していると言う。現在、リンクジャパンの製品はZigbeeの規格に準拠して作られているため「Matter」への対応が難しくなく、Matterに対応した場合は将来、一気に対応製品が広がる可能性もあるとしている。