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順天堂大学とIBMが「メタバース×医療」の共同実験、治療に関する理解の深化や不安の軽減などを検証

「順天堂バーチャルホスピタル」を起点に新サービスを開発

 順天堂大学と日本アイ・ビー・エム株式会社(日本IBM)は4月13日、メタバース技術を活用した医療サービスを研究・開発するための産学連携の取り組みを開始し、「メディカル・メタバース共同研究講座」を設置した。順天堂医院を模した「順天堂バーチャルホスピタル」を構築し、新しい医療サービスを研究・開発するという。

 新型コロナウイルス感染症の拡大にともない、臨床現場でのオンライン診療の活用が広がっている。また、VR/ARといった技術を臨床現場で活用するための研究が進み、メタバースの概念も注目されている。

 こうした背景を踏まえ、メタバースを使った医療サービスの構築、臨床現場における有効性の検証に取り組み、患者やその家族へのよりよい医療の提供へつなげることを目指すという。

 具体的な取り組みとして、次の3点が挙げられている。

 1点目は「順天堂バーチャルホスピタル」の構築と、患者や患者の家族が来院前にバーチャルで病院を体験できる環境の検討だ。ユーザーはアバターとしてバーチャルホスピタルを訪問し、医療従事者やほかの患者らと交流できるようにすることを目指すという。

 2点目は、外出が困難な入院患者のコミュニケーションの場となる「コミュニティ広場」や、説明が複雑になりがちな治療の疑似体験ができるサービスの構想だ。疑似体験では、治療に対する患者の理解を深めたり、不安を軽減したりできるかを検証する。以上2点は短期実施テーマで、2022年中に試作品を発表することを目指すとしている。

 3点目は、メタバースでの活動を通じて、メンタルヘルスなどの疾患の改善を図れるのかを学術的に検証する。これは中長期的な実施テーマとしている。

順天堂バーチャルホスピタルのイメージ

 この取り組みについて、順天堂大学の服部信孝氏(医学部長・研究科長)は、「研究成果をメタバースでの新たな医療サービスとして社会実装し、患者さんの体験向上やメンタルヘルス改善などの場面において、社会に還元していきます」とコメントしている。

 また、日本IBMの金子達哉氏(ヘルスケア事業担当執行役員)は、「デジタルテクノロジーが人の温かみを届けられる世界を順天堂医院と共同で構築し、一人一人の健康に役立てるプラットフォーム・サービスの提供を目指していきます」と述べている。