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「電力効率チューン」されたノートPC、MousePro-NB430Z レビュー
Core i7搭載、オフィスアプリでバッテリー動作16時間!
2023年3月14日 06:40
マウスコンピューターのビジネスPCブランド「MousePro」の「MousePro-NB430Z」は、23.5時間駆動をうたう、14型・1kg少々の軽量なビジネスノートPCだ。
このモデルはBTOカスタマイズで4G LTEも搭載できるため、軽量・長時間駆動とあわせ、なかなか魅力的な製品といえる製品だ。
しかし、最大のウリである「23.5時間駆動」というのは「本当?」と疑ってしまう読者も多いと思う。実際、この数値はもちろん、特定条件下における公称値なので、「いつでも実現できる値」とは言えないが、「本当のそれがどの程度の実力なのか」が気になる読者は多いだろう。
そこで、今回、この製品をお借りしたレビューをお届けする。
筐体サイズは「少し前の13.3型」並みで、重量は約1.1kg
さて、まずは筐体から紹介していこう。
この製品のディスプレイは14型。「14型」というと、「大きいのでは?」と思う人もいるかもしれないが、この製品が採用しているのは狭額縁ベゼル。こうした狭額縁ベゼルの採用で、昨今のビジネスモバイルはもはや13.3型よりも14型が主流になってきた印象がある。実際、この製品も、ベゼルが太かった頃の13.3型並みにコンパクトだ。
解像度はフルHD(1920×1080ドット)。ビジネスモバイルのスタンダードだ。日々働くビジネスマンの方の中には、眼精疲労や老眼など、大きな文字を求める方もおり、そうした方の中には解像度が低い(=文字が大きい)ほうがよいという方もいるかもしれない。
しかしWindows 10以降、デスクトップのスケーリングが可能になり、100%から125%に引き上げればフルHDのままUIを大きくできる。テキストに関しても、フルHDならではのエッジの高精細を保ったまま大きく表示されるので、より判別しやすい。
ディスプレイパネルは180°まで開くことが出来る。ここはビジネスモデルの必須機能だろう。パネルスペックはとくに記載されていないが、正面、ある程度斜めから見ても色味の変化は小さい。一般的には問題のない視野角と言ってよいだろう。
本体サイズは322×216.8×16.9mm(突起部含まず)。先のとおり狭額縁パネル採用モデルなので横幅が抑えられ、一方、2cmを切るスリムなボディはビジネスかばんへの収まりがよい。
奥行きは、ヒンジからディスプレイパネル下辺まで少し高さがある点、ベゼル上部のWebカメラ部がわずかに突き出ている点で、14型モバイルとしては特別小さいというほどではないが、かばんとの相性は問題なかった。
また、重量は約1.08kg。最軽量クラスではないが十分に軽量。「バッテリー駆動時間との兼ね合いで見ればなかなかよい」というところだろう。
実際、軽量モバイルノートPCにとって、バッテリーの質量は無視できない。駆動時間を延ばすために大容量化すれば重量が増す。かといってほかで軽量化しようにも、筐体の剛性や冷却パーツなど削減できる部分は少ない。
付属ACアダプターは65W、USB PDによる充電も可能
23.5時間駆動を実現するバッテリーは73Whと大容量。これに消費電力を従来品(MousePro-NB420シリーズ)より38%抑えたという新たな液晶パネルを組み合わせている。
ACアダプターは出力65Wのものが付属する。かなり小さくスリムだが、USB PD対応のものではなく専用ジャックを利用するタイプだ。MousePro-NB430Z自体は、USB Type-C端子を備え、USB PDによる充電もサポートしている。2つの充電方法をサポートしているため、自宅/会社とモバイルなど、シーンに応じて使い分ければよいだろう。
キーボードはタイピングの快適さを重視通信はWi-Fi 6とオプションのLTE
次にインターフェースを見ていこう。
まず、左側面にあるのがACアダプター用ジャック、HDMI出力、USB 3.1、Thunderbolt 4。右側面にあるのが電源ボタン、microSDカードスロット、ヘッドホン/マイクコンボジャック、USB 3.0、セキュリティロックスロット。このほか前面左寄りにオプション選択時に利用できるLTE機能用のmicro SIMスロットが用意されている(評価機は非搭載のため利用できない旨のシールが貼られている)。
なお、そのUSBポートの総数は標準的かやや少なめだが、トータルでType-C×1、Type-A×2とすれば、とくにモバイル時などは不足するということもないだろう。とくにType-CはThunderbolt 4対応なので高速転送をサポートしつつ、映像出力として、さらに前述のUSB PD給電用としてマルチに利用できる。
そしてLTE対応だ。ポータブルWi-Fiルータが主流と思われるが、モバイルノートPC自体がそのままLTEに繋がれば持ち物を一つ減らせる。機動性を重視するユーザーなら、LTEオプションを検討したい。なお、無線LANはWi-Fi 6に対応している。
キーボードはスタンダードな10キーなしの88キー日本語配列で、独特なクセはほとんどない。
英数キーのほか左側のFn、Windows、Alt、無変換キーなどが同じ標準的なキーピッチ(19.1mm)なので、かなりタイピングしやすい。キーストロークも1.2mm。スリムなノートPCとしては十分だろう。ホワイトLEDバックライトも搭載しており、暗い室内でもキーの周囲が照らし出される。なお、昨今のモバイルノートPCではキーボードの右上にほかのキーと並んで電源ボタンを搭載するものが増えているが、本製品は側面に配置しているため、誤って電源ボタンを押す心配をしなくてよい。地味ながらありがたい設計だ。
CPUは第12世代Core、メモリは8~40GB、SSDは256GB~2TBPCIe 4.0x4のSSDもアリ
筐体的な特徴はここまでで解説したので、次にスペックに触れておきたい。
先に言っておくと、「ビジネスPCとして安心できるスペック」と言える。
まず、搭載CPUはIntel第12世代のCore i7-1255Uを採用している。「U」なのでベースパワー15Wの省電力モデルだが、第12世代Coreの特徴はハイブリッドアーキテクチャ。消費電力は大きめだが高性能のPコアは2基4スレッド、これに低消費電力のEコア8基を加え、トータル10コア12スレッドを実現している。バッテリーへの負担は小さく、一方でCore系統の高いパフォーマンスが得られ、現在のマルチスレッドアプリケーションにも対応できる。
GPUはCPU内蔵で、系統としてはIntel Iris Xe Graphics。ただしメモリのコンフィギュレーションによって、シングルチャネル時はIntel UHD Graphics表記になるので注意が必要だ。
そのメモリだが、標準構成は8GB(シングルチャネル)。この8GBはオンボード実装で、これとは別にSO-DIMMスロットが1基あり、ここにカスタマイズで8GB、16GB、32GBを追加搭載できる(合計で16GB、24GB、40GB)。
標準構成の8GBでも一般的なタスクなら問題ないが、ブラウザーを開きつつ表計算にワープロ……と多数のウインドウを取り扱うなら計16GB以上、デュアルチャネルで運用したい。なお、動作モードとしてはDDR4-3200。サポートの問題はあるが、後から増設ということも不可能ではない。
ストレージはM.2 NVMe SSDで標準構成は256GB。ビジネス向けPCとしては最低限の容量ともいえるが、BTOが可能なので、豊富な容量、速度の選択肢が用意されている。
選択できるのは容量では512GB、1TB、2TB、インターフェース速度もより高速なPCI Exprss 4.0 x4接続のものも用意されている。標準構成の256GB SSDはPCI Exprss 3.0 x4あたりと思われる。シーケンシャルリードが3.1GB/s、同ライトが1.2GB/sで、ランダム4K Q1T1リードが55.34MB/sと、NVMe SSDなりの速さはあるが超高速ではない。コストとの兼ね合いといった選択だろう。
パフォーマンスの味付けは「バッテリー重視」オフィスアプリで16時間も動くが、CPUの最大速度は75~90%
それではMousePro-NB430Zのパフォーマンスをベンチマークソフトで計測していこう。
最初に、計測時の電源設定について説明しておこう。
OS側の電源設定は最適なパフォーマンスとし、同社ユーティリティ「Control Center 3.0」のパワーセッティングは「バランスモード」として計測している。同ユーティリティにはバランスモードの上に「パフォーマンスモード」が存在しているのだが、この製品ではこの項目がなかったため、この「最適なパフォーマンス」+「バランスモード」が本製品のパフォーマンスの最大設定となる。
CPU速度は「バッテリー持続」にチューニング
ではベンチマーク結果を見ていこう………というところだが、CINEBENCH R23を動作させたところ、興味深い数字が出てきた。この製品の「性能と電力の味付け」という視点で紹介しておこう。
まず、CINEBENCH R23の結果はCPU(Multi Core)が6726pts、CPU(Single Core)が1600ptsだった。
実はこの数字は同じCPUを搭載した他モデルと比べ、マルチスレッドが75%弱、シングルスレッドが90%弱といった数字だ。
これはもちろん、Control Centerユーティリティが「バランス」だから、という理由もあると思うが、一番大きいのは、本製品が「バッテリー駆動時間に特化した製品だから」という理由だろう。
気になる方も多いと思われるので、OS側の電力設定とControl Center側の設定の組み合わせでプロセッサーベースパワー(PBP)と最大ターボパワー(MTP)がどのように変化するか、ハードウェア情報表示ツールを用いて調べ表にしてみた。
表を見てみると、Control Center 3.0側がバランス設定の時、MTPが46Wになっているが、Core i7-1255U本来のPBPは15W、MTPは55W。やはり本来のMTPより低いことが分かる。消費電力もそうだが、クーラーのチューニングもMTP46Wをターゲットにしている可能性もあるかもしれない。
パフォーマンス | バランス | 静音 |
最適なパフォーマンス | PBP:15W/MTP:46W | PBP:5W/MTP:10W |
バランス | PBP:14.75W/MTP:46W | PBP:5W/MTP:10W |
トップクラスの電力効率 | PBP:15W/MTP:46W | PBP:5W/MTP:10W |
さて、「CPU速度」という点では、Core i7-1255Uのフルスピードが出ない設計になっている本機だが、その代わりに得ているのが十分な駆動時間、静音、スリム、軽量……等々のモバイルにおけるメリットだろう。
オフィスアプリでの影響は少なめ
そこで気になるのが、「PC全体のパフォーマンスとしてはどうなのか?」という点だ。その影響をPCMark 10で見てみよう。
まず、PCMark 10のスコアはOverallが5071。シナリオ別に見るとEssentialsが9743、Productivityが6772、Digital Content Creationが5363といった配分だ。
Core i7-1255UをMTP55Wまで使い切れるモデルと比較をすると、EssentialsとProductivityが700ポイントほど低く、Digital Content Creationは300ポイントほど低かった。MTP55Wまで使い切るモデルのスコアと比べると、EssentialsやDigital Content Creationで6~7%弱、Productivityで12%ほどのパフォーマンス低下、ということになる。
先のCINEBENHCH R23はほぼCPU依存のベンチマークだったため、性能面で顕著な差が生じた。
CPU性能に依存するものとしては、ソフトウェアエンコード、(大規模な)プログラムのコンパイルなどが挙げられるだろう。一方、ホームやビジネスで用いる一般的なアプリケーションではCPUも重要だがメモリ、ストレージ、GPUといったほかのコンポーネントの性能も重要だ。
PCMark 10が若干スコアを落とした程度で済んでいるのはこのためだ。CPU依存のアプリケーションを目的とするならMousePro-NB430Zはふさわしくないかもしれないが、標準的なビジネスアプリケーションを目的とするなら影響は小さく、それをモバイルでやろうというならマッチするだろう。
バッテリー動作は「オフィスアプリで16時間」
さて、本機のポイントである「駆動時間」にフォーカスした計測だ。
PCMark 10のバッテリーベンチマークから、Modern Officeシナリオで検証した。
OSの電源設定はバランス、Control Center 3.0の設定もバランス、そのほかはWi-Fi接続済み、ディスプレイ輝度50%という条件で計測したが、駆動時間は16時間9分、パフォーマンススコアは5969だった。
公称値の23.5時間はJEITA 2.0測定法なので「実用」という数字ではないにしても、オフィスアプリケーションを利用しながら16時間という駆動時間は実用面で十分なスコアだろう。さらに必要ならOSの電源設定をトップクラスの電力効率、Control Center 3.0の設定を静音モードとすることで駆動時間を延ばすことができる。
「電力効率チューン」はGPUにも影響アリ
ベンチマークの最後は3DMarkだ。ゲーミング性能が、と言うよりもMTPを抑えた設定が統合GPUにも影響するのか確認してみよう。
シナリオ別に見るとOverallはTime Spyが997、Fire Strikeが2161、Night Raidが8001だった。
このスコアも、同じCore i7-1255U搭載&統合GPU利用モデルと比べて若干低い。分かりやすいところでTime Spyを例に見ると、OverallはMTPを55Wまで使い切れるモデルと比べて68%、Graphicsスコアも68%、CPUスコアは59%という結果だった。
このように、3DMarkの結果からGPU性能も影響を受けていることが分かった。本製品はゲームを楽しむには不向きだし、ビジネスモバイルであるからそこまで重要ではないだろう。一方でPCMark 10もOpenCLという形でGPUを利用している。そちらはそこまで大幅な低下が見られていないので、GPU負荷が高いアプリケーション(3D)では顕著でも、オフィスアプリケーションが利用するGPUアクセラレーション程度では低下は大きくないというところだろう。
ビジネス向けに「電力効率チューン」した特別モデル
MousePro-NB430Zは、とくに後半で説明、検証したとおり、バッテリー駆動に特化した製品だ。
MTPを抑えて性能にも制限をかけてはいるが、方向性として電力効率の最大化を目指していると言い換えることができるだろう。実際、本製品のメインユーザーが使うだろうオフィスアプリケーションでは性能面での影響は最小限に抑えられており、一方でバッテリー駆動時間は実用性重視の設定でも16時間を記録した。
価格で見るとMousePro-NB430Zは標準構成で17万9850円から、Officeバンドルモデルで20万7350円から。Core i7搭載モデルとすれば平均価格に近いところと言えるだろう。スリム&軽量さなど筐体側でもモバイルにこだわった製品という点も魅力だ。