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AMDアワード授賞式開催、「FIFAワールドカップ全試合を無料生中継」のAbemaTVが大賞に
2023年3月8日 14:30
一般社団法人デジタルメディア協会(Association of Media Digial:AMD)は3月7日、「デジタル・コンテンツ・オブ・ジ・イヤー'22/第28回AMDアワード」の授賞式を東京都内で開催した。
AMDアワードは、最新のデジタルコンテンツの中から優秀作品・サービスを選定し、制作者を表彰するもので、作品の質的向上と人材育成の促進を目的として開催している。
年間コンテンツ賞「優秀賞」の10作品および「江並直美賞(新人賞)」「リージョナル賞」はすでに発表されており、今回の授賞式では優秀賞の中から「大賞/総務大臣賞」および「AMD理事長賞」を選出した。
大賞はABEMAの「FIFAワールドカップ中継」
大賞/総務大臣賞は、「FIFA ワールドカップ カタール 2022」ABEMA全64試合無料生中継(株式会社AbemaTV)が選出された。サッカーのFIFAワールドカップカタール2022をインターネット放送の「ABEMA」で全試合を無料生中継したものだ。
AMDアワード審査員長の夏野剛氏は、これまでスポーツとインターネット中継は相性がいいはずと言われつつなかなかうまくいかなかったところに、日本中を熱狂させたこと、さらにマルチアングルで新しい可能性を見せたことを専攻理由として語った。
ABEMAを代表して壇上に立った野村智寿氏は、「ワールドカップは全試合見られないんじゃないかという声もあったが、無事全試合生中継できた」として関係者に感謝しつつ「何より世界最高峰のコンテンツを楽しんでいただいた視聴者のみなさんのおかげ」と喜びを語った。
さらに、マルチアングルなどの新しいスポーツの視聴体験に取り組んだことや、視聴者からもっと見たいアングルがあるという意見を受けて機敏にアングルをに変更を加えたことを紹介し、「新しい視聴方法を楽しんでいただくきっかけになればうれしい」と語った。
ドラマ「silent」がAMD理事長賞に
「AMD理事長賞」は、ドラマ「フジテレビ 木曜劇場「silent」」が受賞した。
フジテレビの村瀬健氏は受賞コメントとして「11時間かけて人の心を描くことを意識して丁寧に作ったところ、皆さんに愛してもらえるドラマになった。視聴率もさることながら、見逃し配信の再生回数が毎週1位を獲得したのは、皆さんが繰り返して見てくれたということで、感謝しかない」と語った。
壇上には、主演の川口春奈氏と、共演の鈴鹿央士氏も登場した。川口氏は、完全オリジナル作品なので全員で苦労しながら作り上げたことを語り、鈴鹿氏は、関係者全員が作品を愛していることが見た方々に伝わったのだと思うと語った。
「ONE PIECE FILM RED」のウタやELDEN RINGなどが優秀賞
年間コンテンツ賞「優秀賞」には、この2コンテンツのほか、8コンテンツが選ばれた。
「ウタ」(ONE PIECE FILM RED製作委員会)は、映画「ONE PIECE FILM RED」のヒロイン。アニメに始まり、武道館などでのライブや、VTuber活動、そしてキャラクターとして初めて紅白歌合戦出場など、リアルとアニメのシンクロによる新境地を切り開いた。
「ELDEN RING」(株式会社フロム・ソフトウェア/株式会社バンダイナムコエンターテインメント)は、ジョージ・R・R・マーティン氏とディレクターの宮崎英高氏による大作ゲームで、日本のみならず世界中のファンに広く遊ばれた。
「きつねダンス」(株式会社ファイターズ スポーツ&エンターテイメント)は、北海道日本ハムファイターズの「ファイターガール」によるパフォーマンス。「踊ってみた動画」などインターネットでも波及し、国民的人気ダンスとして表彰となった。
アニメ「SPY×FAMILY」(遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会)は、「少年ジャンプ+」連載時から注目を集めてアニメ化された作品。。登場キャラのアーニャとその口調がトレンドになるなど、さまざまな年間ランキングを席巻した。
「世界陸上オレゴン大会でのXRスタジオ」(TBS「世界陸上オレゴン」)は、世界陸上オレゴン大会において、LIVE映像とXR技術を組み合わせたテレビ放送中継を実施。スタジオにいながら現地から生中継しているような映像演出が評価された。
ファスト映画アップローダー訴訟も優秀賞に
今回の年間コンテンツ賞「優秀賞」の中でも異色といえるのが、「ファスト映画アップローダーに対する損害賠償請求訴訟の勝訴判決」(一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA))だ。先駆的ケースを作り上げ、著作権の保護、流通に大きな一歩を作り出した功績が評価された。
「ぷにるんず」(株式会社タカラトミー)は、デジタルキャラクターとアナログを融合し“ぷにぷに”触感を付加したおもちゃだ。リアルで触れ合える機会が急減した昨今において、子供たちを夢中にさせたとして評価された。
「VOICEVOX」(廣芝和之氏)は、AIによる高品質な音声合成ソフトだ。クレジット表記を入れれば無料・無許諾で商用利用できることや、オープンソースで制作されている点が特に注目された。作者の廣芝氏は、好きなキャラクターを使って好きなクリエイターたちによってコンテンツが作られるのがうれしいと語った。
新人賞は「TAROMAN」の藤井亮氏、リージョナル賞は静岡県が受賞
「江並直美賞(新人賞)」には、“1972年に制作された特撮作品”という体裁で岡本太郎の作品や言葉を体現した特撮番組「TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇」を制作した藤井亮氏が選ばれた。
藤井氏は受賞のコメントとして「過去どんな方々が受賞されているのか調べたら、去年は大人気のAdoさん。私のような業界の片隅でインチキな映像を作ってきた人間が本当にいただいていい賞なのかと、正直震えております」と会場の笑いをとりつつ、「よりいっそう、見る人が楽しんでもらえるような、変なものづくりをがんばっていきたい」と語った。
地域に根ざしたコンテンツを表彰する「リージョナル賞」は「30 歳になったら静岡県!・ふじのくにパスポート」(静岡県/ロントラ株式会社)が受賞した。静岡県など各地で若者の転出超過による労働人口が現象している中で、静岡県で暮らし働くことへの興味・関心をうながす情報を発信し、SNSで3万人以上のフォロアーを獲得するなどの成果を上げていることが評価された。
多種多彩なデジタルコンテンツ日本で生まれていることを反映
最後に、AMDアワード審査員長の夏野剛氏が総評を語った。
コロナがまだ明けきる前だが、「ONE PIECE RED」やサッカーのワールドカップなど、各メディアが工夫してメディアミックス展開を成功させたことが今回も表彰された。
一方で海賊版問題については、日本のコンテンツが強くても利益が海賊版に流れてしまいコンテンツ力が衰えてしまうと述べた。この問題に対して、日本のコンテンツ力を維持するために多大な労力がささえていることをきちんと表彰したいと説明した。
さらに、合成音声を使ったUGC(ユーザー生成コンテンツ)も日本のコンテンツの力だ。「このように多種多彩なデジタルコンテンツが日本で生まれている」ことが、今回の結果となったと語った。
作品名 | 制作・関連会社等 |
▼優秀賞 | |
ウタ | ONE PIECE FILM RED製作委員会 |
ELDEN RING | 株式会社フロム・ソフトウェア/株式会社バンダイナムコエンターテインメント |
きつねダンス | 株式会社ファイターズ スポーツ&エンターテイメント |
silent(AMD理事長賞) | フジテレビ 木曜劇場「silent」 |
アニメ「SPY×FAMILY」 | 遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会 |
世界陸上オレゴン大会でのXRスタジオ | TBS「世界陸上オレゴン」 |
ファスト映画アップローダーに対する損害賠償請求訴訟の勝訴判決 | 一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA) |
「FIFA ワールドカップ カタール 2022」ABEMA全64試合無料生中継(大賞) | 株式会社AbemaTV |
ぷにるんず | 株式会社タカラトミー |
VOICEVOX | 廣芝和之 |
▼江並直美賞 | |
藤井亮 | |
▼リージョナル賞 | |
30歳になったら静岡県!・ふじのくにパスポート | 静岡県/ロントラ株式会社 |