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大塚家具元社長の大塚久美子氏が、バッファローの親会社メルコHDの社外取締役に

~株主&元社員として株主総会に参加してきました~

メルコHDの社外取締役となった大塚久美子氏(2015年撮影 家電Watchの記事より)

 2023年6月26日、株式会社メルコホールディングス(以下、メルコHD)の第37期定時株主総会が名古屋市内で開催された。メルコHDは大手PC周辺機器メーカーであるバッファローの親会社。麺製品のシマダヤもメルコHDの傘下だ。

 例年のメルコHDの株主総会は穏やかな印象だが、今年は、大塚家具元社長の大塚久美子氏が社外取締役に選任されることで、突然注目を集めることとなった。

 総会後、新聞やテレビはメルコHDが広報発表した「豊富な経験、実績、見識を有しており、企業価値向上に高い貢献をしていただけることを期待」のコメントを取り上げ報道。それを見た人たちの反応は「炎上」気味だ。

 元社員であり株主でもある筆者は、この株主総会に参加した。現役社員からの聞き取りなどを含め、例年とはやや異なる雰囲気となった株主総会の様子をお伝えしよう。

株主総会は名古屋・大須にあるメルコHD本社で行われた
ビル入り口の定時株主総会の案内看板

筆者とメルコHDの関係について

 最初に、筆者とメルコHDの関係をお知らせしよう。筆者がメルコ(当時)に転職したのは1995年6月。Windows 95発売の数カ月前だ。最初は販売促進の中で広報を担当し、福岡の営業所長、海外販促、フラッシュメモリのマーケティングなどを担当して、2000年9月に退職した。

 メルコ入社前の会社は12年在籍。その後、メルコ広報担当時代の出版社とのつながりで起業し、元メルコ社員で立ち上げたイーレッツは6年、現職のアイピーアールが17年。在籍期間がもっとも短かったのがメルコとなる。

 退職して20年以上経つが、メルコ社員や元社員との交流は、今でも続いている。2023年5月には、名古屋で元役員を含むメルコOB4人で飲み会、東京でメルコOB4人+現役社員1人で飲み会をするなどした。

 メルコ社員時代には持ち株会で毎月天引きで株を買っていたが、これは退職時に精算。それとは別に、記憶は薄いが当時は二部上場から一部上場に移行する時期で、社員以外の株主を増やすべく妻と娘名義でメルコ株を購入していた。この株も、イーレッツ時代に「メルコの株高いよ」とOB同士で話題となり、売却。一旦保有株はゼロとなった。

 2008年、OBの飲み会で株価の話となり「株主総会後の懇親会で飯も食えるし、面白そうだから株価1000円(100株で10万円)くらいになったら買おうかなぁ」と話した数カ月後に、リーマンショックで本当に1000円ほどになったので購入。翌2009年から株主総会に遊びに行くようになった。

 株主総会の夜は、メルコOBとの飲み会&報告会が恒例で、筆者にとっては、昼は現役社員と会う同窓会、夜は総会で撮ってきた写真などを見ながらOBとの同窓会という感じだ。筆者が現職で広報を手伝うクライアントには、メルコHDのライバル企業もある。例えばSynologyは2015~2018年まで日本の広報担当をしたので、メルコHDの株主総会で報告されるのNASの業績は、情報源としての価値もあった。

創業者である牧誠氏と最後にお会いできたのは2017年の株主総会。社内ではよく怒鳴っていたが、今でもOBから愛され、尊敬される経営者だった。2018年4月に逝去
懇親会で、グループ会社の1つであるメルコシンクレッツのオーディオ製品「DELA」を製品説明をする社員(筆者の昔の同僚)
2016年の懇親会、7年前の牧寛之代表取締役。今回、4年ぶりに参加して貫禄が増したことを感じた

 コロナ禍の3年は欠席で、今年は4年ぶりに株主総会に参加した。まさか、メルコHDの株主総会を取材して、記事を書く日が来るとは思わなかった。多くの人と同様、筆者も「大塚久美子氏が社外取締役」との一報を聞いて最初に思ったのは「何故?」だった。その疑問を晴らすべく、総会で質問をすることとした。


組織再編を始めるメルコHD

 現在、メルコHDは組織再編を計画している。1990年代からのPCユーザーはメルコという社名をご存知だろうか。当時は社名がメルコ、ブランド名がBUFFALOだった。

 2003年、メルコは純粋持株会社体制に移行した。純粋持株会社とは、自らは事業を行わず、グループ各社の株式を所有することで、グループ会社の事業をコントロールすることを事業目的としている会社をいう。具体的にはメルコHDの傘下にバッファローという新会社が作られた。シマダヤも傘下の1社だ。メルコHD傘下にはこのほか、PCパーツや玄人志向製品を扱うCFD販売、空気清浄機「Airdog」を扱うトゥーコネクトなど複数社がある。

2003年から純粋持株会社体制に移行。傘下にはBUFFALO、シマダヤなど複数社がある

 この、純粋持株会社体制からの組織再編が始まる。2024年(目標)シマダヤをスピンオフ上場、その後メルコHDとバッファローを合併し、バッファローが上場企業の新名称となる。これにともない監査等委員会設置会社への移行、プライム市場からスタンダード市場へ移行など、さまざまな変革が始まろうとしている。詳しくは2023年5月に発表された資料をご覧いただきたい。

メルコHD組織再編のステップ

 おそらく、若いPCユーザーはメルコという名を知らないと思われる。ユニクロほど有名であれば持株会社のファーストリテイリングの存在を知る人は多いと思うが、バッファローとメルコHDは、ユニクロほどではない。

 試しにGoogleトレンドで比較してみると、「バッファロー」で検索する人がもっとも多く、「BUFFALO」はやや少なめ。「メルコホールディングス」(「メルコHD」もほぼ同じ)は限りなくゼロに近い。認知度の高いバッファローと低いメルコHDを合併することは、企業価値の向上になりそうだ。

Googleトレンドで10年間のBUFFALO、バッファロー、メルコホールディングスを比較

総会の参加者は少なめ、質問は多め、大塚久美子氏に関心が集まる

 2019年までのメルコHDの株主総会は、100人ほどの株主が参加し、総会後に懇親会が行われるのが人気となっていた。2020年からは新型コロナウイルスの影響で総会はオンラインが基本で、懇親会もなくなった。

 2022年の株主総会参加者は10人。今年はオンラインの中継はなく懇親会が開催されないためか、30人弱の参加者となった。

2016年の懇親会の様子。コロナ禍前は参加者も多くにぎわっていた

 せっかく株主として参加するので記事にしようと思い、FacebookのMessengerで昔の同僚(現取締役)に取材について確認すると、株主として参加し記事にするのはOK、撮影はNG、報道各社の総会の取材はお断りしているとのこと。会場の写真は広報から提供していただくことにした。事前に大塚久美子氏の総会への参加はなし、オンラインの参加もなしと聞き、少々トーンダウンとなった。

 6月26日10時、株主総会が始まり一連の業績報告の後、質疑応答が行われた。毎年カウントしてはいないが、過去の総会より質問数は多め、時間も長かったと思われる。大塚久美子氏の選任については複数の株主から質問が行われ、この点に関する関心の高さがうかがわれた。

メルコHD株主総会における、取締役の面々(メルコHD提供)
メルコHD代表取締役の牧寛之氏(メルコHD提供)

大塚久美子氏を社外取締役候補とした理由

 株主総会の質疑応答で大塚久美子氏について言及した株主は、筆者を含め4人。そこで見えてきた、大塚久美子氏を社外取締役候補とした理由をまとめてみよう。

 メルコHDと大塚久美子氏の出会いは2020年以降、大塚久美子氏がヤマダ電機の傘下となった大塚家具の社長を辞任した後となる。金融機関の紹介で接点ができ、その後も「いろいろとご指導、ご相談、アドバイスいただいた」とのことで、ここ数年間交流があったと思われる。

 メルコHDにおける大塚久美子氏の今後の活動は、あくまで社外取締役の範疇にとどまり、ハッキリと言及はされていないが、重要な決定は取締役会で厳正な審議で行われるようだ。つまり、大塚久美子氏のメルコHDに対する影響は、極めて小さい。

 そもそも、社外取締役とはそういう立場のものだ。昨今、元アスリート、元女子アナなどが女性社外取締役として採用されているのを見ても明らかだろう。おそらく上場企業にお勤めの読者の中には、自社の社外取締役の名前を知らない人もいるだろう。

 メルコHDは組織再編という大きな過渡期を迎えるにあたり、社外取締役として社内の人間とは異なる視点、社内の人間ではなしえない経験の持ち主など、多様な経験・知見を持つ人材を探す中で、大塚久美子氏と元ビックカメラ社長の宮嶋宏幸氏が適任と判断したようだ。

株主総会の大塚久美子氏に関する質疑応答

 株主総会の質疑応答から、大塚久美子氏に関する4つの質問と、それに対するメルコHDからの回答を抜粋して紹介する。4番目が筆者の質問だ。

【質問者1】
取締役の1人、大塚さんっていう方、私は以前その会社の株持ってたんですがえらいことになっちゃって、これ、非常に怖いんです。もしもこの会社(メルコHD)に同じようなことが起こった場合、この会社がガチャガチャになりそうな気がしてしょうがないんですけど、なぜこの方を選んだのか。

【牧寛之代表取締役】
当社、メルコホールディングスの役員体制に対する考え方が、今回の株主総会に上程させていただく案はこれまでと少しコンセプトの違う形で、非常に長い期間議論させていただいた上で上程させていただいたということでございます。

どういったことかと申しますと、今期私どもが直面する経営課題がこれまでとかなり違うことでございます。どう違うのかというと、5月に対外発表させていただいておりますとおり、私どもは20年続けてきた純粋持株会社体制を今後やめていくということを発表させていただいております。

その中でグループとしてどのように連結の業績を最大化していくのかが最も大きな関心事で、そのための新体制構築だと思います。取締役は今回の監査等委員会設置会社に移行いたしますが、再編の方針をさまざまな角度で、役員から幅広い意見を受けきちんと実行していくことになると思い、今回、社外取締役の新しい候補者の方々を推挙させていただいた次第でございます。

【質問者2】
新任のあの社外取締りの方、大塚社外取締役ですけど、壇上にもおられませんしオンラインの方でも見当たりませんが、欠席されてるということなんでしょうか。欠席されてる理由などお伺いできればと思います。

左側スクリーンのオンライン参加の中に大塚久美子氏はいない

【矢野取締役】
株主総会において、新候補者の出席義務というのはございません。過去、ご紹介を兼ねて最後にご挨拶させていただいたケースもございますが、コロナ禍以降は迅速に株主総会を進める中で、リスクを減らすということもあり出席を見合わせておりました。今回もそれに準じて対応させていただいているという背景でございます。

【質問者3】
2号議案の大塚久美子さんの件です。今現在コンサルタント会社をやってるということで、特別の利害関係はないということですが、コンサルタントとして活用していくのか、またコンサルタントとしてふさわしい人かどうかよくわかりません。

これまでメルコの取締役の方は非常に安定感があって、私はどっしりとしたところが非常に良く思っています。次男さん(牧大介氏。2021年より取締役就任)が取締役に入ってこられたのも懸念してるところで、この利害関係なくても、これまでコンサルタントとしてなにかあったのか、あるいは今後活用してく意向があるかお聞かせください。

【矢野取締役】
候補者の大塚久美子氏ですが、現在、クオリアコンサルティングという会社を経営されております。ただし当社としまして、この会社とコンサルティング契約を結ぶ予定はございません。あくまで、大塚久美子氏個人の成功・失敗を含めた過去のご経験をもとにアドバイスをいただきたく取締役候補者としてあげております。

【質問者4(筆者)】
私も、皆さんから集中している大塚久美子さんのお話を聞かせていただきたいと思います。皆さん、まだモヤモヤしていてこれまで質問された方も納得がいってないだろうと思います。なので、細かく分けてお聞きしたい。

元々ご縁があったと聞いています。まず、ご縁があった時期はいつなのか。大塚久美子氏の経歴を見ると2009年にお父さんに代わって社長になる。2014年に、そのお父さんから解任をされる。2015年に取締役会で再任されて、社長に復帰、2019年にヤマダ電機の傘下に入って2020年に辞任。これらのどの時期にお知り合いになったのかを教えて下さい。

次に、資料のスキルマトリックスの大塚久美子さんの担当に「IT関連業界の知見」は入っていません。例えば、食品事業に女性目線が必要で、そこに注力をしてもらうとか、具体的に、取締役になった以降、取締役会に参加したり、いろいろなジャンルのミーティングに参加されたり、何をされるのか、どの分野を手伝っていただくのかなど、回答いただければと思います。

総会資料のスキルマトリックス(大塚久美子氏の部分は筆者が色付け)

【牧寛之代表取締役】
新任取締役候補と最初にご縁ができたのは2020年以降(大塚家具社長辞任以降)で、金融機関さんのご紹介でございます。私もお会いさせていただいた人間の1人でございます。その後も色々とご指導、ご相談、アドバイスいただいたこともあるというのが今回の選任理由です。

これから何をしていただくのかという部分に関しては、社外取締役でございますので、現在いらっしゃる社外取締役の方々と同様に、取締役会で審議に参加していただくことでございます。

今回、大塚久美子氏に関わらず、社外取締役の選任の話は先ほど申した通りですが、その上で、私の思いという部分もご説明させていただいきたいと思います。

3回ほど前の株主総会で申し上げた、2018年に大きく社外取締役の構造を変えたときは、創業者が他界して、私が暴走しないように、父代わりに見てくださる方というのが選任理由にあったと思います。

今回、グループ再編に際し私自身も思うに至ったのは、メルコホールディングスが3つの要素が混ざる非常に特殊な会社であることです。

1つ目が、上場会社でございますけれども、創業家にかなりの割合の持ち株があり、昔からあるオーナー企業的な気質の部分が少なからず残っていること。

2つ目は、食品、ITという非常に広い範囲の事業を行っていて、業界慣行も違い、言葉の言い回しにもすごく気を付けなきゃいけない違いがあること。

3つ目は、私自身、過去10年、5年と社長をやらせていただく中で、もう紙一重の経験を何度もしたこと。10年間、あそこでこちらを選んでたら会社は転がってたなということが非常に多くございます。

私がいろいろな方から助言をいただく中でありがたいのは、さまざまなご経験なのです。人生いいこともあれば悪いこともあり、同族企業の良い部分もあれば悪い部分もある中で、様々なご経験をされた方のお言葉というのは、私としても、役員としても、ハっと気付かされる部分があります。

もちろん、助言がそのまま経営の判断になるということではございません。私ども取締役会で厳正に審議をした上でやっております。ただ、幅広いご経験、幅広い考えというものを受けた上で、非常に特殊な3つの要素が混ざってる会社のグループ再編に向かっていくためにこういったチーム編成をご提案させていただいたという次第でございます。

▼参考:メルコHDのウェブサイトに掲載された株主総会の資料と動画
株主総会メルコホールディングス 第37期 定時株主総会招集ご通知
株主総会メルコホールディングス 第37期 定時株主総会(編集あり)

「女性」社外取締役の起用が求められている

 6月13日、政府は東京証券取引所プライム市場の上場企業に「2025年をめどに女性役員を1人以上選任」「2030年までに女性役員の比率を30%以上」という数値目標を発表した。すでに社外取締役に著名な女性を起用する動きは始まっていて、自動車メーカーのスズキでは、社外取締役に元マラソン金メダリストの高橋尚子氏が就任した。

 「女性有名人 社外取締役」で検索すると酒井美紀、島谷ひとみ、内田恭子、菊間千乃、竹内香苗、福原愛、福島敦子……と、多くの人が社外取締役となっていて、中には1人で4社の社外取締役に就いている人もいる。2025年に向けて、この動きは加速しそうだ。

現役社員に聞いた情報と、補足事項

 メルコHDが大塚久美子氏を社外取締役に、という話は、4月からいくつかの記事で取り上げられ、筆者が知ったのは5月。元メルコHD役員から、LINEで「メルコの社外取締役に大塚久美子氏。奥川さん、株主総会で質問して下さい」とメッセージが送られてきた。この件は、ほかのメルコOBの間でも話題になっていた。

 株主総会が終わった午後、新聞社のニュースが転載されたYahoo!ニュースのコメントは1000件を超え、世の中の人がそれほど関心があるのかと驚いた。コメントの中に「社員がかわいそう」「社員が辞める」といったものもあり、元社員である筆者は、かなりの違和感を覚えた。

 現役の社員数人に、電話で話を聞いてみた。その反応は「何故? とは思ったけど大した話ではない」「ヤフコメが盛り上がっていることに驚いた」「4月に聞いたときは“笑う”の笑撃でした」「社外取締役は何もしないでしょ」といった感じで、外部の盛り上がりとはかけ離れていた。

 もともと、メルコには多くの人が入ってきた。筆者が在席した1990年代でも日立、パイオニア、DEC(後にHPに買収)、ICM(当時のハードディスクメーカー)、カプコンなどから多数が入社しており、急成長する企業なので、入る人も出る人も多かったと記憶している。筆者の退社以降もソニー、パナソニックなどからの転職者が何人もいたと聞いている。まして、経営に対する実質的な影響力は小さいであろう社外取締役である。誰が就いても、社員は大して驚いたりはしていないようだ。

 バッファロー製品の今後を懸念するコメントも見かけたが、公開された取締役のスキルマトリックスを見ると、大塚久美子氏は「IT関連業界の知見」の対象外。BUFFALO製品への影響は皆無だろう。

 政府の掲げる「2025年をめどに女性役員を1人以上選任」について関係者に聞くと「ゼロではないと思うけど、それが選任の理由ではない」とのことだ。いわゆる客寄せパンダとか、イメージアップを意図した起用とかいう声もあるが、メルコHDという社名を変更するので当てはまらないし、女子アナやタレントとは違い、イメージアップに直接つながる人選とも思えない。

 そのほか、ヤフコメの中にあった「メルコHDがバッファローの親会社だと初めて知った」「シマダヤがメルコHDグループとは知らなかった」などは、多くの人がそう思ったのだろうと想像される。

 メルコの簡単に歴史を振り返ると、創業者の牧誠氏が、1975年にオーディオメーカーとしてメルコを創業する。メルコ(MELCO)の社名はMaki Engineering Laboratory Companyの頭文字を取ったもの。オーディオブームが去ってパソコン関連事業に参入し、プリンターバッファがヒットし、BUFFALOのブランド名が誕生した。後に純粋持株会社体制に移行したこともありメルコの知名度は低下した。

 シマダヤがメルコHDの傘下に入ったのは2018年。株主総会でも「食とITの融合ですか」などの質問がされたが、理由は他にある。シマダヤの社史を見ると、1931年(昭和6年)に、創業者の牧清雄が名古屋市中区(現:昭和区)にて米穀業「島田屋商店」を開業したとある。

 牧清雄氏はメルコの創業者である牧誠氏の父親。シマダヤがメルコHDの傘下に入ったのは、無縁の食品メーカーに出資したわけではない。

2018年、株主総会後の懇親会に設置されたシマダヤコーナー。メルコから出向したシマダヤ役員から「奥川君、食べて食べて」と製品の猛アピールを受けた

大塚久美子氏について

 筆者は他人のことに興味が薄い。昨今、著名人がプライベートの問題で「皆様にご迷惑をおかけいたしました。」などと頭を下げるシーンを見ても“会ったこともないし、話したこともないし、自分は迷惑でもないし、そもそも他人のプライベートなどほっといてあげなよ”と思っている。

 大塚久美子氏に関しても同様で、興味も記憶も薄いので念のために確認しようと「大塚久美子」で検索し、100以上のウェブページを読んでみた。ざっと経歴を見ると、以下のようになる。

1991年 一橋大学経済学部卒業、富士銀行入行。融資業務、国際広報業務を担当
1994年 大塚家具入社、経営企画室長 兼 営業管理部長
1996年~2002年 同社取締役、営業管理部長、総合企画部長、経理部長、商品本部長、広報部長
2004年 取締役退任
2005年 IR、広報を主業務とするクオリア・コンサルティング設立、代表取締役
2006年 筑波大学法科大学院入学
2007年 フロンティア・マネジメント株式会社 執行役員

 大塚家具入社からの10年は、個人商店の色が残る大塚家具で企業としての組織作りを行ったらしい。現職であるクオリア・コンサルティングを立ち上げたのは2005年。すでに創業から18年が経過している。

 大塚久美子氏が大塚家具から離れている間に、大塚家具で不祥事が発覚した。2007年に証券取引等監視委員会が、2006年2月にインサイダー取引を行ったとし、金融庁に3044万円の課徴金納付命令を出すよう勧告している。

 この事件をうけ、大塚家具のコンプライアンスの問題をコンサルタントの立場から解決するとして復帰、代表取締役社長に就任する。あくまで検索して得られた情報だが、ここまでの大塚久美子氏の評判は悪くない。経歴を見ても賢く優秀な人材だと思われる。

2009年 大塚家具 代表取締役社長・営業本部長
2014年 同社社長解任。取締役
2015年 同社社長・営業本部長復帰
2019年 ヤマダ電機の子会社に
2020年 同社社長辞任
2022年 大塚家具は法人消滅

 社長就任後の評判は芳しくない。総じて伝わってくるのは「頭はいいけど現場を知らない、家具の売り方を知らない、社員の気持ちを知らない」といった印象だ。業績不振が続き、社長就任から5年となる2014年に取締役会で社長を解任される。

 大塚久美子氏は妹の夫である取締役を寝返りさせるなどの切り崩しを行い、2015年1月に社長に復帰。ここから3月の株主総会まで、ワイドショーなどが連日報道を行っていたように、創業者で父の大塚勝久氏と、娘の大塚久美子氏との委任状争奪戦となる。

Googleトレンドで社長就任の2009年から現在まで「大塚久美子」を調べると、2015年1~3月に検索が集中したことが分かる

 当時の風潮は、古い体制の父に対し、中期経営計画をプレゼン資料で説明し株主への還元も強調、改革派のイメージを打ち出した大塚久美子氏をメディアも投資ファンドも歓迎する印象だった。結果、株主総会で勝利した大塚久美子氏が社長を継続、父は大塚家具を去り後に「匠大塚」を設立した。

 その後の大塚家具は赤字続きで、数百億の現預金もあっという間になくなり、人材は流出し、ヤマダ電機の子会社となる。子会社となった1年も黒字化することなく、大塚久美子氏は辞任、2022年には大塚家具は法人消滅となる。結果論で言えば、メディアも投資ファンドも見る目がなかった。

 社長就任以降の評判は元社員、元役員などのものしか見つけることができず、いい評判を目にすることはできなかった。印象としては「理論も知識もありテレビの解説者としては優秀だが、監督になると勝てない」といった感じだろうか。

 人は失敗をするもの。スティーブ・ジョブズはAppleを一度去り、復帰した。日本のプロ野球で活躍し、大リーグに挑戦するも結果が出ず日本球界に復帰する選手もいる。失敗=無能ではないと思うが、家具を売る才覚はなかったようだ。

何かがある

 最後は筆者の想像だ。大塚久美子氏が大塚家具を去った後に「金融機関の紹介」でメルコHDとの縁が始まる。その金融機関と大塚久美子氏の関係は不明だが、大塚久美子氏の魅力、能力、知見など何かしらの理由がないと、取引先であろうメルコHDの役員に紹介はしないと思われる。

 紹介された牧寛之社長などメルコHDの役員についても同様だ。会う前にはかなりネガティブな印象を持っていたかもしれず、それを覆す何かを、大塚久美子氏が持っていたのだろう。メルコHDは比較的地味で地道な選択をする企業だという印象で、社外取締役といえども、意味のない選択はしないと思われる。

 それが何なのかは部外者には分からないが、1年、2年と時間が経ったときに見えてくることを期待したい。