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「JEPA電子出版アワード2023」、“広義の電子出版”として生成AIやタテスクマンガがノミネートされ、一般投票受付中

 一般社団法人日本電子出版協会(JEPA)は11月24日、「電子出版アワード2023」の候補プロダクトを発表し、一般投票の受付を開始した。投票締切は12月4日23時。投票フォームより誰でも投票可能。

 同アワードは、日本の電子出版物の育成・普及を目的にJEPAが2007年より実施しているもので、今回で17回目となる。“広義の電子出版”の技術・仕組みなどを対象とし、電子出版関連メディアの編集長・記者らが授賞部門の設定および候補プロダクトを選出。一般およびJEPA会員企業による投票で大賞を決定する。

 今年は以下の5部門(賞)で、計24プロダクトがノミネートされた。そのうち生成AI関連が3件、タテスク(縦スクロールして読む)マンガ系が2件選出されているほか、19作品が新たに選出された作品となってて、業界が活性化していることが分かるラインアップになっていると、JEPAではコメントしている。

 集計結果および大賞は、12月21日16時に発表の予定とされている。

デジタル・インフラ賞(4プロダクト)

Xfolio:クロスフォリオ(BookLive)

 ポートフォリオ作成からファンコミュニティ、マネタイズまで、クリエイターに必要な機能を集約して展開する総合プラットフォーム。2022年にマンガ・イラストを対象としてサービスを開始し、2023年5月には小説カテゴリを追加。

MDAM:エムダム(集英社・大日本印刷)

 集英社が中心となって開発し、小学館、講談社など、複数の出版社が採用する総合誌面制作基盤。雑誌制作ワークフローの標準化と、コンテンツの二次利用を促進するアセットマネジメント機能を備える。

Bingチャット(日本マイクロソフト)

 Open AIと提携しサービスを提供する生成AI。

UDデジタル教科書体(モリサワ)

 Windows10にも標準搭載される、弱視(ロービジョン)や識字困難(ディスレクシア)など、読み書きに困難を抱える人に配慮したユニバーサルデザイン書体。文字の太さの強弱を抑えながら、点やはらい、画数、筆順を学習指導要領に準拠しており、教育現場で支持されている。

スーパー・コンテンツ賞(5プロダクト)

KADOKAWA「タテスクコミック」レーベル(KADOKAWA)

 同社は2021年8月に「タテスクコミック」レーベルを設立し、国内出版社でいちウェブトゥーン事業に参入。既存人気作品のフルカラー化、縦スクロール対応だけでなく、オリジナル作品も展開し、全マンガ編集部参加によるコンペティション「タテスクコミック大賞」も開催。海外向けにも積極的に配信を行う。

小学館世界J文学館(小学館)

 1冊の紙書籍「名作図鑑」を手に取り、ページ端のQRコードを読み込むことで125冊の世界名作を電子デバイス上で閲覧可能な全集。

文學界(文藝春秋)

  同誌に掲載し、芥川賞を受賞した市川沙央氏の「全ての人が自由に本を読める環境『読書バリアフリー』を進めてほしい」という提言直後の9月号(8月17日配信)から、リフロー型EPUBの電子版配信を開始。

週刊文春電子版(文藝春秋)

 週刊文春の記事が発売日前日の正午に読める、サブスクリプションの電子雑誌。2021年3月にスタートし、2023年7月に有料会員が1万人を突破。取材活動を寄付で支援するプランも開始し、約2カ月で350万円超の寄付を集めた。

生成AI導入の教科書(ワン・パブリッシング)

 生成AIに関する解説書。執筆にもChatGPTが活用された。

エクセレント・サービス賞(5プロダクト)

丸善リサーチ(丸善リサーチサービス/Legal Technology)

 2023年10月リリースの、専門書を横断的に検索・閲覧できるサービス。

論文のXML化推進(JST 科学技術振興機構)

 "日本の学術論文の総元締め”として、600万件近い論文や資料を保管・配信。近年はWordからXMLへの変換、学術論文XML(JATS)の推進、プレプリント(査読前論文)の公開用サイトの開発・運営など、論文のデジタル化を推進している。

コミチ+(コミチ)

 白泉社「ヤングアニマル」、秋田書店「ヤンチャン」、小学館「ビッコミ」などで採用されているウェブマンガ誌運営サービス。SaaSで安価で短期間にサービスを立ち上げられることが特徴で、媒体や作品のブランディングや運用支援も行う。

ノベルピア(NOVELPIA JAPAN)

 投稿ユーザーに対し1円/1PVという破格の収益還元で作品を募り話題となった、韓国発のウェブ小説投稿サービスの日本版。

bookend(アイドック)

 有斐閣、Gakken、オーム社、ハルメク、誠文堂新光社、飛鳥新社、扶桑社などが採用する、電子書籍配信プラットフォーム。会員向けコンテンツ配信や、出版社向けの電子書籍販売ソリューション、ソーシャルDRMソリューションなどを提供。

チャレンジ・マインド賞(5プロダクト)

YourEyes(スプリューム)

 紙面の画像をOCRしてAIで解析し、音声化して読み上げることで、読者バリアフリーを実現するツール。iPhoneのカメラで本を1ページずつ撮影して利用できる。AIで修正できない部分を人によって修正するツールも備える。

HykeComic(HykeComic)

 ウェブトゥーンに特化したアプリ上の配信プラットフォーム。今後への期待からのノミネート。

Windows 11 23H2(日本マイクロソフト)

 Windows 11の、2023年10月時点の最新アップデート。デスクトップAI「Copilot in Windows」が搭載されたほか、「イマーシブリーダー」などアクセシビリティ機能の改善・向上もノミネート理由に挙げられている。

大江健三郎文庫・書誌情報データベース(東京大学大学院人文社会系研究科・文学部)

 著作権の切れていない作家のものとしては国内最大級のデジタルアーカイブ。

YOMcoma(ブックリスタ)

 ショートマンガ専門の創作支援サービス。新作よりも「読んでいない作品」が届きやすい仕組みで、X(旧Twitter)への投稿一括取り込みや、AIによる投稿サポートなどの機能を備える。

エキサイティング・ツール賞(5プロダクト)

Adobe Firefly(アドビ)

 画像生成AI。学習にAdobe Stockの画像やオープンライセンスのコンテンツなどをして、生成物を商用するにあたって課題となる著作権の問題をクリア。

Thorium Reader(Thoriumプロジェクト)

 アクセシビリティに関するメタ情報の埋め込み、TTS(Text to Speech:読み上げ)対応など、読書バリアフリーに向けた機能拡充が特徴のEPUBリーダー。

Comic-Copilot(集英社 少年ジャンプ+)

 マンガ創作サポートに特化した対話型AIサービス。クリエーターが生成AIにネガティブな見方を表明している中でリリースされ、生成AIの創作利用に一石を投じたことが評価されている。

ライトアニメ(大日本印刷)

 マンガ原稿を活用し、期間とコストを大幅に抑えてアニメ化できる新しいフロー、従来の手法ではアニメ化が難しかった作品や、原画のタッチを生かしたい作品などのアニメを、従来よりも容易に提供可能。自治体や学校の電子図書館向けコンテンツとして提供を開始している。

CLIP STUDIO PAINT(クリスタ)(セルシス)

 独自の描画エンジンを搭載し、シェアを拡大するペイント・マンガ原稿制作ソフト。デジタルコミック・ウェブトゥーン業界のクリエイターたちの定番ソフトとして利用されている。