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6割以上が「参考にする」動画、ディープフェイクを「見分けられる」と思う人はわずか2%~トレンドマイクロ調査

 トレンドマイクロ株式会社は7月3日、ディープフェイクの実態を調べる「ディープフェイクに関する国内実態調査2024」の結果を発表した。約4割がディープフェイクを知っており、また全体の1割強がディープフェイクの悪用にあったことがあると回答した。

 ディープフェイクとは、AI技術により生成されたフェイク(偽)の映像や音声のこと。例えば、有名人が本人の考えとは異なることを発言しているかのような、精巧なディープフェイク映像が動画共有サイトに投稿されることで、視聴したユーザーが本人の発言だと思ってしまう、のようなことが起こり得る。

 同調査は、2024年5月31日~6月1日に、18歳以上の男女2585人を対象にウェブ調査で行われた。

6割以上が動画や画像などの情報を参考にしている

 ニュースの収集や商品購入のために画像、音声、動画による情報を参考にしているかたずねる質問では、15.9%が「とても参考にしている」と回答し、46.3%が「やや参考にしている」と回答した。合わせると、参考にしているとした回答者は6割以上という結果となる。

質問「ウェブページやSNS(YouTubeなどの動画共有サイトを含む)上にある画像、音声、動画を介して得る情報を、日常のシーンでどのくらい参考にしていますか」(n=2585)

 年代別に見ると、10代では27.6%が「とても参考にしている」、60.5%が「やや参考にしている」と、合わせて約9割が参考にしていると回答している。20代では26.5%が「とても参考にしている」、53.8%が「やや参考にしている」と合わせて約8割が参考にしていると回答しており、若い世代で頻繁に動画や画像などの情報が活用されていることが分かる。

約4割がディープフェイクを目にしたり耳にしたりしたことがある

 ディープフェイクの認知度を調査したところ、15.7%が「よく知っている」、31.8%が「名前だけ知っている」と合わせて約半数が知っていると回答した。知っているとした回答者1227人を対象にディープフェイクと思われるものを実際に見たり耳にしたりしたことがあるかたずねたところ、37.5%が「目にしたり耳にしたりしたことがある」と回答した。

質問「ディープフェイクと思われるものを、あなたご自身で目にしたり、耳にしたことがありますか」(n=1227)

悪用に遭った5割以上がフェイクニュースやデマ情報に煽動された経験あり

 ディープフェイクの悪用に遭った経験があるかをたずねる質問には、1割強があると答えた。ただし、このデータは自身が認識している数であるため、実際に気づいていない被害はまだあるかもしれないとしている。

質問「あなたご自身がディープフェイクの悪用に遭ったことはありますか」(n=2585)

 ディープフェイクの悪用に遭ったことがあると回答した377人を対象に、実際にどのようなケースに遭ったかをたずねたところ、54.4%が「フェイクニュースやデマ情報に煽動される」と回答した。以下、「偽サイトに誘導する広告」が42.4%、「投資詐欺への誘導」が29.2%と続いた。

質問「あなたご自身がディープフェイクの悪用に遭ったことはありますか。当てはまるものを全てお答えください(n=377 複数回答)」

ディープフェイクを「見分けられる」と思っているのは2%未満

 ディープフェイクを見分けられるかをたずねた質問では、「本物かどうか見分けることができる」と回答したのは1.9%にとどまった。36.6%は「わからない」、31.8%は「おそらく見分けられないと思う」と回答し、15.6%は「見分けられないと思う」と回答した。「見分けることができる」と回答した割合を高い順に年代別で見ると、20代で3.4%、次いで30代が2.7%となった。

質問「ディープフェイクを、ご自身で本物かどうかを判断し見分けることができると思いますか」(n=2585)

 同社では、オウンドメディア「Security GO」でこの結果を踏まえて解説を行い、「組織としての技術的なセキュリティ対策も必要ですが、ソーシャルエンジニアリングと同様、人の認識につけこんだ詐欺的要素が強いため、『騙されない』という一人ひとりの心構え、姿勢も重要になってきます」と説明。企業においては、ディープフェイクにより本物そっくりに作られたコンテンツを介したサイバー攻撃の事例を周知するとともに、気を付けるべきポイントをまとめて、従業員が攻撃に気づける可能性を高める取り組みが求められるとしている。