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NTT、世界初のVRゴーグル不要でキャラが飛び出して見える「超鏡空中像表示システム」を開発

鏡の中の映像に「手を伸ばす」インタラクションも可能に

超鏡空中像の視聴イメージ。緑の枠(左上)は鏡の中の空中像、赤の枠(左下)は鏡の外の空中像

 日本電信電話株式会社(NTT)は7月26日、バーチャルキャラクターが鏡の中と外の空間を自由に移動できるという超鏡空中像表示システムを、世界で初めて開発したと発表した。VRシステムや3Dグラスなどを使わなくても、キャラクターが鏡から飛び出す映像を視聴できる。

 半透明な鏡(ハーフミラー)の裏にディスプレイを設置して、鏡の中に情報を表示する「ミラーディスプレイ」や、空間中に映像を結像させる「空中像技術」が、デジタル情報を日常空間に溶け込ませる技術として登場している。しかし、これらの方法では、デジタル情報を表示できる領域は鏡の中、もしくは外のいずれかに限定されていた。

 今回発表された超鏡空中像表示システムは、鏡の中と外をデジタル情報が自由に移動できることが特徴。これによって、ミラーディスプレイとしてバーチャルキャラクターを鏡の中に表示するだけでなく、鏡の外に飛び出し、ユーザーと同じ空間を共有しているかのような演出も可能になる。

鏡の内外を行き来する超鏡空中像表示システムのデモンストレーション

 このシステムを実現した技術のポイントは、リアル空間とバーチャル空間(ハーフミラーの中)をつなぐ「超鏡空中像光学系」にある。

 ハーフミラーの左右にそれぞれ光源となるディスプレイを配置し、ディスプレイに映像を表示する。ディスプレイからの出射光はまずハーフミラーで反射され、次に再帰反射材(どの方向から光が当たっても光源方向に向けて光を反射する特性を持つ光学素子)で再帰反射される。この光がハーフミラーを透過し、空間中に空中像として結像される。

 ディスプレイに移動機構を持たせ、ハーフミラーをはさんで前後させることで、空中像が空中像が鏡の中と外を連続的に行き来できるようになる。また、また、ハーフミラーを三面鏡のように配置することで、空中像が結像されるまでの距離を大きく伸ばすことなく(大きく伸びると画質が低下してしまう)空中像を視聴できる範囲を拡大し、広い範囲から視聴可能にして、同時視聴可能なユーザー数を増加させる。

超鏡空中像の光学系と動作。鏡の中への空中像表示(左)と鏡の外への空中像表示(右)

 あわせて、鏡の外と中の双方に対して、直感的なインタラクション手法が考案された。鏡の外の映像に対しては直接手を伸ばすことも可能だが、鏡の中に手を入れることはできない。しかし、同システムでは、新たに開発した方法により、鏡の中の映像にも同じように手を伸ばすことができる。

 その方法は、空中像の表示領域に応じて座標を切り替えるものだ。センサーによってリアル空間のユーザーの手の位置座標を取得し、空中像に対しては、その座標を使って空中像を操作する。鏡の中の像に対しては、鏡に映った手の座標を算出して空中像を操作する。

鏡の中(左)と外(右)の空中像とのインタラクション

 同社では今後、空中像の実在感を向上させるための立体感や高画質化に向けた研究開発を進めるとともに、博物館などの文化施設やイベントなどのエンターテインメントの場において、新たな映像視聴体験の創出をめざすとしている。