坂本龍一氏の愛用していた楽器・機材を移設したスタジオ来春開設、作品制作に活用できる環境を次世代クリエイターらへ提供

　株式会社デジタルガレージ（DG）は9月4日、「坂本龍一ネットワークスタジオ構想」を発表した。神奈川県横須賀市に開設したインキュベーションセンター「DG CAMP AKIYA Yokosuka City」内に、坂本氏の遺志を継いだ「アーティスト・イン・レジデンススタジオ」を来春開設。坂本氏が生前に愛用していた楽器や機材を移設し、音楽や映像の制作を行なうための設備を備えることで、アーティストが滞在しながら創造活動に専念できる場所を提供する。

　アーティストやエンジニアを育成するプログラムも同時に実施予定。クリエイティブなコミュニティを築くとともに、音楽と環境保護の融合を追求し、創造と共感の輪を広げていく新たな拠点となることを目指す。

かつてのアルファレコード“伝説のスタジオ”の次世代版

　DGと坂本氏との交流は、同氏が出演・音楽制作を担当した映画「戦場のメリークリスマス」にさまでかのぼる。その後、DG取締役の伊藤穰一氏との出会いや、慶應大学教授・村井純氏とのWIDEプロジェクトを通じたインターネット黎明期における共同作業、同氏が取り組んできた環境保護や社会活動など、多岐にわたってきたという。

　今回のプロジェクトは、作品へのメディアテクノロジーの導入などを積極的に行なってきた坂本氏の東京／ニューヨークでのプライベートデジタルスタジオを、次世代のクリエイターに継承していき、同氏の哲学・美学を伝えていくもの。

　今回の発表に際し、村井氏は「アーティスト・イン・レジデンススタジオが、坂本龍一という巨人がいつも抱いていた、“次の世代への期待と愛情を育む場”として、そこから新しい人が坂本さんの夢の一部として世界に羽ばたいていくのを楽しみにしている」とコメント。

　また、伊藤氏は「坂本さんの思いやスピリットが、このスタジオを活用するアーティストやエンジニアにもインスピレーションを与え続けることを願ってやまない」とコメントした。

　「坂本龍一ネットワークスタジオ構想」の詳細は、2025年2月に発表予定。DGでは、最新の通信ネットワークやDAOを活用した国内外のスタジオとの連携などを視野に入れている。「アーティスト・イン・レジデンススタジオ」はその“α版”との位置付けだとし、「かつてアルファレコードがYMOや荒井由実などの世界的アーティストを輩出した伝説のスタジオの次世代版を目指す」としている。

横須賀のロケーションを生かした「DG CAMP AKIYA Yokosuka City」

　「アーティスト・イン・レジデンススタジオ」を併設するインキュベーションセンター「DG CAMP AKIYA Yokosuka City」は、横須賀の海と丘陵に囲まれたロケーションを生かし、オーシャンビューのカンファレンスルーム「Dragon Gate AKIYA」や5室の滞在スペースなどを備えている。スタートアップスタジオやハッカソン、ピッチイベントなどの活用を想定している。

　なお、DGはスタートアップ支援事業「Global Investment Incubation Segment」に取り組んでいる。今後は、同センターがスタートアップをつなぐインキュベーションハブとしての役割を担い、DGのネットワーク「DG Global Incubation Stream」と連携していくとしている。