ニュース
これは始まりにすぎない――弥生が次世代クラウド会計ソフト提供開始、「弥生会計 Next」で中小企業の“経営プラットフォーム”目指す
2025年4月9日 06:00
弥生株式会社は4月8日、法人向けクラウド会計ソフトの新製品「弥生会計 Next」の正式提供を開始した。
また、2023年10月から提供している「弥生給与 Next」に、勤怠管理と労務管理の機能を新たに追加したことも発表した。
同社代表取締役社長執行役員兼最高経営責任者(CEO)の武藤健一郎氏は「いよいよ弥生会計 Nextを投入することになるが、これは始まりにすぎない。新たな機能を搭載し、中小企業のニーズに対応し、中小企業を変えていきたい」とコメントした。
「弥生 Next」シリーズは、これまでの弥生シリーズとは異なる製品ラインとして用意したものだ。武藤氏は「会計を全ての中小企業が利用できるようにし、事業を継続し、成長させることができる製品を目指している。完全自動化により、バックオフィスの業務をゼロにすること、データを利活用し、経営の意思決定を支援できるパートナーを目指している」と語る。
弥生 Nextシリーズとしては、先行して「弥生給与 Next」と「やよいの給与明細 Next」を提供しており、今回、中核製品となる「弥生会計 Next」も正式提供を開始したかたちだ。
弥生会計 Nextは、弥生がこれまで培ってきた会計領域の知見や経験を生かし、中小企業のデジタル化をさらに加速させるほか、豊富なデータをテクノロジーと掛け合わせることで、業績向上を支える経営プラットフォームを目指しているという。
「弥生会計 Next」は“誰でもカンタン”――その3つのポイント
同社次世代本部次世代戦略部部長の広沢義和氏は「これまでの弥生会計は、経理担当者の業務効率化にフォーカスした製品だったが、弥生会計 Nextは会計業務の効率化に加えて、経営や事業を成長させるものになる。経営者にとっても不可欠な製品になる」と位置付ける。
弥生会計 Nextの特徴として、「誰でも簡単である」を挙げ、それを構成する3つのポイントを示した。
1つめは、使い始めから簡単であることだ。初期設定が難しく、最初から脱落してしまうことがないように、4つのステップだけで初期設定を完了できるようにしたほか、新設法人もスムーズに設定ができるように工夫し、対話型で必要事項を入力するだけで、会計ルールに則したかたちで処理ができるという。同機能については特許を取得している。
2つめは、取引データなどの取り込みや仕訳が簡単であるという点。帳簿付けを簡単にすることで、継続的に利用してもらうことができるようにしているという。具体的には、明細ボックスを用意。金融機関からの入出金データを蓄積し、必要な会計処理を行い、会計帳簿に登録できる。これらの一連の作業にはAI技術が活用されている。「明細ボックスは、日常的に利用する画面であり、視認性やデザインにもこだわっている」という。
3つめは、数字確認が簡単であるという点。ドリルダウンやドリルアップにより、複数の帳簿や集計表を行き来しやすくすることで、決算に必要な数字を確認しやすくしているという。これも特許を取得した技術だ。また、「会計ソフトの価値を最大限に享受してもらうためには、数字が重要になる。数字を経営で活用してもらうことにつながる機能である」と述べた。
さらに、複数の業務をまとめて効率化できる点についても説明した。
弥生会計 Nextでは、会計業務だけでなく、経費精算、請求業務、証憑の保存を一元的に管理。外部サービスや金融機関との連携により、データ連携を強化している。また、会計事務所や税理士とのデータ連携も可能にしている。
「業務と取引データがシームレスにつながることで利便性が高まる。会計事務所ともつながることで、会計業務をスムーズに進めることができる」とした。
加えて、繁雑化する法令への対応にも迅速に対応するほか、長年蓄積してきたカスタマーサポートでのノウハウを弥生会計 Nextに注入。「中小企業が安心して利用できるようにしている」と胸を張った。
また、弥生会計 Nextでは、経営支援にも活用できるように進化させており、その足掛かりとなる機能として「資金予測β版」を搭載した。AIを活用することで、3カ月分のデータをもとに、今後3カ月の資金を予測する「キャッシュ予測・評価」では、現在のキャッシュの状況を確認し、今後の資金繰りを予測。弥生が運営するコンテンツを利用したり、サポートを活用したりすることで、資金状況の改善につなげられるよう案内する。
弥生会計 Nextは、2024年10月から先行体験プログラムを実施しており、1000件以上のフィードバックを得て、これらの声を製品化に生かしたという。また、中小企業へのインタビューによるニーズの反映や、社内のエンジニア、デザイナー、リサーチャーによる議論を通じた改善なども行ってきたという。「毎日、ユーザーの声を確認しており、今後も日々の改善を繰り返していく」と述べた。
また、今後もAIを活用した新機能を弥生会計 Nextに搭載する姿勢を示す一方で、「弥生の主要顧客である中小企業は、AIと言った途端に構えてしまう傾向がある。今日の発表資料には一切、AIという言葉を使っていない。弥生は、中小企業に対して、知らないうちにAIを使っているという提案をしていきたい」(武藤氏)と語った。
弥生会計 Nextの料金(税別)は、いずれも年契約の場合で、「エントリープラン」が年額3万4800円、有人によるメールやチャットによるサポートが付属した「ベーシックプラン」が年額5万400円、電話サポートや仕訳相談も付加した「ベーシックプラスプラン」が年額8万4000円。このほか、月契約による月額料金での提供も6月より開始予定。全ての機能を最大3カ月無料で使用できる無料体験プランや、有料プランの半額相当のAmazonギフトカードをプレゼントする「弥生会計 Next」スタート応援キャンペーンも用意している。
「小規模事業者が導入しやすい価格設定を目指した。ユーザーは最適なプランを選択することで不要なコストを抑えることができる。弥生会計の名に恥じないように大きく成長させたい」(広沢氏)と意欲を見せた。
なお、弥生では、個人事業主向けの「やよいの青色申告 オンライン」を販売しているが、同製品の弥生 Nextシリーズへの統合については「現時点では考えていない。個人事業主が法人化した際に、弥生会計 Nextを利用してもらうようになる。データやAIを活用した経営支援は共通の機能として考えたい」(武藤氏)と述べた。
「弥生給与 Next」が機能拡張、給与・勤怠・労務をまとめてデジタル化
一方、「弥生給与 Next」の機能拡張では、これまでの「給与計算」「年末調整」の機能に加えて、「勤怠管理」「労務管理」の機能を追加した。
勤怠管理機能の「弥生勤怠 Next」では、自社の就業規則に合わせて柔軟な対応ができ、スムーズな管理ができるのが特徴だ。PCやスマートフォン、ICカード、指静脈認証など、多様な打刻方法に対応しているほか、フレックス制や在宅勤務などの柔軟な働き方にも対応。集計作業は自動で行われる。
労務管理機能の「弥生労務 Next」では、入退社や公的保険の手続きがウェブで完結し、複雑な労務業務を効率化できる。雇用契約書など、入社前から必要な書類の作成や回収がオンラインで完結するほか、社会保険や雇用保険、労災保険関連など、110種類以上の届け出がオンラインで完結できる。これにより、企業が必要とする労務書類の多くに対応し、企業が成長しても使い続けることができるとしている。
広沢氏は「中小企業における給与ソフトは4割強の導入率となっているが、勤怠管理や労務管理のデジタル化は依然として進んでおらず、7割以上が手書きやExcelを利用している。手入力によるミスや工数の増加、属人化といった課題が発生しているのが実情だ。新たな弥生給与 Nextは、給与・勤怠・労務をまとめてデジタル化を進めることができる」とした。
弥生給与 Nextの利用料金(税別)は、年末調整を外部委託する場合は、基本機能が給与計算のみの「エントリーライト」が年額9000円、同じく勤怠管理も付属した「エントリー」が年額2万400円。年末調整を自社で対応する場合は、給与計算・年末調整・勤怠管理が行える「ベーシックライト」が年額3万6000円、これらに加えて労務管理も行える「ベーシック」が年額5万5200円、さらに電話サポートなども提供する「ベーシックプラス」が年額8万4000円。弥生給与 Nextでも、全ての機能を最大3カ月無料で使用できる無料体験プランと、有料プランの半額相当のAmazonギフトカードをプレゼントする「弥生給与 Next」スタート応援キャンペーンを用意している。
弥生は「日本で一番、中小企業のバックオフィス業務を理解している会社」
弥生では2025年1月、新しいミッションやビジョン、バリューを制定。弥生 Nextシリーズは、それに基づいた製品に位置付けている。
武藤氏は「従来は『事業コンシェルジュ』をスローガンに掲げていたが、新たに『この社会に、挑戦の循環を』とし、弥生が中小企業の挑戦の起点となり、それによって、社会に貢献していくという意味を込めた。また、ミッションには『中小企業を元気にすることで、日本の好循環をつくる』を掲げ、日本の企業の97%を占める中小企業を改革することで日本全体を活性化できると考えている。こうした好循環のサイクルをつくることを目指している」と述べ、「中小企業は、日本経済の低迷と労働力人口の減少、世の中の急速な変化による経営の舵取りの難しさ、デジタル化の遅れという3つの課題がある。これを解決するには、デジタルデバイドをなくすことが大切である。弥生は日本で一番、中小企業のバックオフィス業務を理解している会社である。日本の中小企業を助けることができるチャンスを持った会社であり、それを行うことを義務として捉えている」と語った。