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弥生、新ブランド「弥生Next」を発表。“業務効率化”の先へ
データ活用により新たな価値を創出し、業績向上を実現
2023年10月12日 06:15
弥生株式会社は10月11日、事業戦略についての記者説明会を開催した。代表取締役・社長執行役員の前山貴弘氏が登壇し、前半は同社の業績やインボイス対応への取り組みについて、後半は同社が展開する新ブランドについて語った。
「デジタルインボイス」に対応する新たなソリューション、10月24日に提供開始へ
弥生は2023年4月に新たな経営体制となり、2022年度の売上が221.1億円だったのに対して、今年度は過去最高の251.4億円を達成。登録ユーザー数も2022年度が284.4万人だったのに対して今年度は310万以上に増えて順調に成長しているという。
弥生シリーズのシェアは、クラウド会計ソフトにおいて52.8%、業務デスクトップソフトでは64.9%と、いずれも1位となっている。また、会計事務所のネットワークについても、「弥生PAP会員」が今年度の時点で約1万2000事務所以上に拡大した。
最新のデスクトップソフトは10月20日に一斉発売する予定で、クラウドサービスについても機能を順次拡大する。今回のアップデートでは、インボイス制度(仕分・集計)および電子帳簿保存法に対応するとともに、証憑を効率的に管理できる「スマート証憑管理」との連携機能を搭載するほか、AIによる自動仕分機能「スマート取引取込」の強化と改善も図った。
デスクトップソフトについては、「弥生会計24」「やよいの青色申告24」「やよいの給与計算24」といった名称に「+(プラス)クラウド」という言葉が追加された。弥生はクラウドサービスを提供する一方で、実はデスクトップソフトにおいてもクラウドの機能を利用可能だが、この点についてはユーザーに今ひとつ伝わっていなかったため、今回の措置に至ったという。
インボイス制度への対応については、弥生シリーズは2023年6月に全て完了している。その軸となるのは、2023年1月にリリースしたクラウドサービス「スマート証憑管理」だ。同サービスを使うことで紙やPDFファイルなどさまざまな形式が混在している納品書・請求書や領収書・レシート、デジタルインボイスなどを一元管理できる。
前山氏はスマート証憑管理の活用事例として、千葉県で広告代理業やイベントプロデュースなどの事業を手がける株式会社レインカラーズの取り組みを挙げた。レインカラーズでは、PDFや紙などさまざまな証憑をスマート証憑管理で全て取り込んで一元管理できるようにした。これにより、証憑がすぐにソートできる状態になり効率化を図れたほか、未払金の確認にも活用できるようになった。
さらに、仕訳時に二度手間となる作業が無くなり、担当者からは「複雑なインボイス制度の処理がスマート証憑管理を使えば一発で終わる。インボイス制度に対応するのは大変だと思っていたが、(スマート証憑管理のおかげで)以前よりも楽になったかもしれない」との感想が寄せられたという。
前山氏は、インボイス制度の下で圧倒的な業務効率化を図るには、証憑を同じ規格で統合してデジタルデータで受け渡しを行う「デジタルインボイス」の普及が不可欠であるとして、10月24日にはデジタルインボイスに対応する新たなソリューションを提供開始予定であると発表した。「本当の業務効率化を目指す皆様は、ぜひお使いいただければと思います」と前山氏は語った。
新ブランド「弥生Next」で、業務効率化だけでなく業績向上も実現
続いて、弥生が展開する新たなブランド「弥生Next」についての発表が行われた。前山氏は新ブランドの説明に先立って、まずは“会計”の歴史について振り返りを行った。その始まりはメソポタミア文明にまで遡り、そのころは粘土製の証憑と容器で商取引を管理。日本では飛鳥時代の7世紀ごろ、律令制下で行われた正税帳による帳簿付けが始まりだという。そして16世紀になると、“簿記会計の父”と呼ばれるイタリアの数学者、ルカ・パチョーリによって複式簿記という概念が提唱された。
そして時が進み、1960~1980年半ばにかけてオフコンベースの数百万円する会計ソフトが登場し、大企業を中心に利用された。一方、1983年に米Intuitが低価格の会計ソフト「Quicken」を発売。日本では1987年に「弥生シリーズ」が定価8万円で発売され、それまでは数十万円した会計ソフトを購入しやすい価格で提供したことから、以後は中小企業も含めて会計ソフトの普及が進んだ。
2023年9月末現在、弥生の登録ユーザー数は310万以上で、カスタマーセンターへの年間問い合わせ数は120万件以上に上る。前山氏は、弥生の歴史は中小企業会計の歴史であり、同社がこれまでの36年間で取り組んできたのは「Democratization of Accounting Software(会計ソフトの民主化)」であると語った。
このような状況の中、弥生はスモールビジネスの課題として、大企業ではデータ活用の専門家がデータを業績向上に役立てているのに対して、中小企業はデータ活用の専門家がいないため、データの活用に差があることに着目。これからは全ての中小企業が会計データの可視化によりデータを利用した新たな価値を創出できるようにするとともに、誰でも会計業務が行えるようにして、バックオフィス業務を忘れてビジネスのコアに集中できるようにすることが必要であると考えている。弥生が目指すのは「Democratization of Accounting(会計の民主化)」であり、それを実現するための新ブランドとして「弥生Next」を立ち上げた。
これまで中小企業にとって会計業務は手間がかかる面倒な作業であり、弥生はそれに対して業務効率化を図るためのサポートを行ってきたが、これからはデータをもとにAIによる分析や、同業者との比較をすることによって、業務効率化だけでなく経営の意思決定を支援するパートナーとしての価値も提供し、業績向上につなげていけるようにする。
「会計が持つ可能性はもっと広いです。われわれはなぜ今までこれをやってこなかったのか、大きな反省です。テクノロジーが向上し、できることがどんどん増えているこの時代だからこそ、われわれはもう1回、会計の原点に立ち返り、皆さんと未来を考えていきたいと思います。」(前山氏)
そのために、弥生は会計の分野だけでなく、ビジネスのコアとなる商取引や給与の分野など、全てのデータをきちんと管理・分析し、次のアクションに生かすためのソリューションを提供していこうと考えており、今後はサービス提供領域を広げていくことも新ブランドのコンセプトの1つとなっている。
今後の製品ラインアップは、従来提供してきたクラウドサービスの「弥生 オンライン」およびデスクトップソフトの「弥生 24 +クラウド」シリーズに加えて、新たに「弥生Next」が加わり、計3つのラインアップとなる。その顧客像としては、起業初期の企業や、業務の自動化を図りたい企業、小規模~中規模の企業などを想定している。
弥生Nextシリーズ第1弾の製品としては、10月20日に給与計算ソフト「弥生給与 Next」および「やよいの給与明細 Next」が発売される。弥生給与 Nextは、これまで煩雑だった年末調整に関する従業員とのやり取りも全てデジタル化し、業務効率化を図るとともに、給与計算そのものも自動計算で行われる。また、法令改正にもタイムリーに自動的に対応できる。弥生給与 Nextは初年度は無償で提供され、次年度以降はセルフプランは3万1000円、ベーシックプランは5万4200円、トータルプランは7万5000円(全て税別)で提供される。
給与分野においては今後、勤怠管理などのソリューションも順次提供するほか、会計分野や商取引の分野においても2024年以降、順次ラインナップを広げていく予定としている。
弥生の取締役会長を務める平野拓也氏は弥生Nextについて、「これまでの弥生は、安心・安全で“お客様に寄り添う”ことを心がけてきましたが、今後はそれに加えて、お客様により元気になっていただき、ビジネスを向上させる、もっと前向きなところにコミットしていきたいと思います」と語った。
※写真提供:弥生株式会社