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マネーフォワードの「MFクラウド会計・確定申告」、開始1年で利用者12万人

 株式会社マネーフォワードは23日、クラウド型会計ソフト「MFクラウド会計・確定申告」についての報道関係者向け説明会を都内の本社オフィスで開催した。税制改正の影響などを交えつつ、会計ソフトのクラウド化によるメリットを解説した。

マネーフォワード代表取締役社長CEOである辻庸介氏。ソニーでの経理職、マネックス証券を経て、マネーフォワードを起業した

個人事業主・中小企業向けサービスで利用者12万人

 コンピューターを使った会計ソフトは1970年前後に本格導入が始まったが、当初は大型の専用機によるものだった。これが1980年台後半ごろからPCで利用できるインストール型へと進化。2010年代になるとクラウド型へと発展してきた経緯がある。

 クラウド型会計ソフト急発展の背景について、マネーフォワードの代表取締役社長CEOである辻庸介氏は、ある意味必然的なものだと説明する。「GmailやAmazon Web Servicesを見て分かるように、クラウドはどんどん進んでいる。また、中小企業のクラウドサービス利用率を日米で比較した場合、日本はまだまだ低い。日本で普及していく余地は大きいだろう」(辻氏)。

 マネーフォワードのサービスは大きく分けて2つ。個人向けオンライン家計簿の「マネーフォワード」は基本利用料無料で、一部のプレミアム機能を有料提供する方式。対して、個人事業主・中小企業向けの本格会計ソフトである「MFクラウド会計・確定申告」も一部プランは無料、高機能プランが有料となっている。

 利用者数は個人向けマネーフォワードが180万人。また、法人向けのMFクラウド会計・確定申告は12万人が利用しているという。辻氏は「MFクラウド会計・確定申告は2014年1月に正式サービスの提供を開始したが、利用者数を発表したのは今回が初めて。急ペースで増加しており、シェア1位も取れるのではないか」と期待感を示した。

 売上額や有料会員数については明らかにしていないが、売上構成比については個人向け・法人向けがそれぞれ半々程度という。なお、個人向けサービスでは広告の掲出も行っている。

日米での会計ソフト利用比較
MFクラウド会計の利用者数は現在12万人

 クラウド型会計ソフトのメリットとして挙げられるのは、外部サービスとの連動による取引データの自動取得機能だ。MFクラウド会計では、銀行・カード会社・電子マネー・通販サイトなど1738社のサービスに対応。一度設定を済ませておけば、後は自動的に記帳される仕組みとなっている。「言語解析による仕訳ルール学習機能もある」「個人であれば、支出を銀行とカードにまとめることで、ほとんど仕訳入力が不要になる」と辻氏は説明する。

 辻氏は今後の方針として「Excelで経費計算をするのは大変。スマートフォンで手軽にやれるのが理想だろう。我々としても、安くて簡単なERP(Enterprise Resource Planning)ソリューションを中小企業の皆さんに提供できるよう、頑張っていきたい」とコメント。3月には給与計算サービスのベータ版を開始する予定という。

3月には給与計算サービスを提供予定

「マイナンバー」まもなく開始、会計ソフトでの対応も必須に

マネーフォワード社長室長で公認会計士の山田一也氏

 説明会後半では、マネーフォワードの社長室長で公認会計士の山田一也氏が、平成27年度(2015年度)税制改正とクラウド会計ソフトの関係性について解説した。

 個人の確定申告や企業決算の電子化を進める上で、課題となっているのが領収書・契約書の保存だ。現在も「スキャナ保存」と呼ばれる制度があり、紙で発行された領収書類を電子データとして保存することは条件付きながら可能だった。

 平成27年度税制改正では、この条件のうち「3万円未満」という金額基準が廃止され、金額を問わず保存可能となる。また、書類の大きさ情報が不要になり、本来カラーである書類をグレースケール化しての保存も許される。一方、スキャナ保存にあたっては第三者機関によるタイプスタンプ発行が毎回必要となる点は継続される。

 山田氏は「書類の電子保存条件は緩和されてきているが、まだまだの部分もある。例えば、スキャン用の装置は、原稿台が一体になったスキャナだけ。スマートフォンのカメラで撮影するといったことは想定されていない」と補足する。

確定申告の先進事例として紹介されたのがデンマーク。個人の税金申告に必要な情報を、国税庁自らが銀行や住宅ローン会社、年金期間などから集め、書類を作成する。納税者はそれを確認し、承認するだけという仕組み。領収書の電子化やマイナンバー制度が本格化すれば、日本もいずれこうなる?

 とはいえ、書類のスキャナ保存が普及すれば、OCR処理での文字読み取りを同時に行い、自動仕訳するといった将来像も見えてくる。これにより、決算を日次単位で計算し、外出先からスマートフォンで日常的に閲覧できるようになるとも考えられる。山田氏は「大企業はともかく、中小企業では3月末で締めた数字を5月になってようやく把握するのが普通」とし、経理の効率化、ひいては経営判断の迅速化も期待できるという。

 また、税制関連では10月から「マイナンバー」制度が導入される運びとなっている。これに伴い、源泉徴収票・支払調書などに該当者のマイナンバーを記載するなどの実務作業が発生するようになる。これらのデータを、ローカル保存したExcelファイルだけで管理するのは困難とみられ、より専門的なクラウド型会計ソフトでオンライン連携させるのが現実的ではないかと山田氏は分析している。

(森田 秀一)