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紀伊國屋書店と大日本印刷が合弁会社、電子書店システムやポイントの共通化など検討

「出版流通イノベーションジャパン」設立

 株式会社紀伊國屋書店と大日本印刷株式会社(DNP)は19日、出版流通市場の活性化と新しいビジネスモデルの創出を目的として、合弁会社「株式会社出版流通イノベーションジャパン」を4月1日に設立すると発表した。

紀伊國屋書店社長の高井昌史氏(左)とDNP常務の北島元治氏(右)

 合弁会社では、リアル書店とネット書店のハイブリッド戦略を取る両社が互いのノウハウを共有し、「スマホなどの普及による読書時間の減少」「著者や書店への利益循環モデルの崩壊危機」「海外ネット通販拡大による業界秩序の崩壊危機」といった日本の出版流通市場が抱える課題について、市場活性化のための調査・研究や、新ビジネスモデルの立案、紀伊國屋書店とDNPへの施策提言などを行っていく。

市場活性化のための調査・研究、新ビジネスモデルの立案、施策提言などを行っていく

 検討予定のテーマとしては、「読者の利便性向上を目的とした電子/ネット書店のさらなる強化」を挙げ、海外ネット通販よりも高い利便性、電子書籍市場の活性化、他のリアル書店との協業、ECサービスの向上などを検討する。両社がそれぞれ運営する電子書店である、紀伊國屋書店の「kinoppy」とDNPグループの「honto」についても、双方のブランドは残しつつ、仕入れやシステム運営を共通化するといった施策について検討を行っていくとした。

 合弁会社の代表取締役社長に就任する紀伊國屋書店社長の高井昌史氏は、「一部の海外ネット通販による市場の独占は、業界にとって望まれるものではない」として、業界全体で成長できるビジネスモデルを考えたいと説明した。

電子/ネット書店のサービス強化を検討

 このほか、両社が提供しているポイントサービスの共通化や、仕入れ・物流業務システムの共有化・合理化・効率化、両社が保有する海外リソースを活用した新しいビジネス展開、リアル書店とネット書店の相互連携による読者サービス向上といったテーマについて、検討を行っていく。

両社のポイントサービスの共通化を検討
仕入れ・物流システムの共有化・合理化・効率化も検討する

 検討のスケジュールについては具体的には決まっていないが、半年や1年といったスパンでスピード感を持って進めていきたいと説明。リアル書店と電子書店の双方を展開しているのがAmazonなどとの違いだとして、電子書籍の活性化とともにリアル書店の活性化も進めていくとした。

 合弁会社という形で検討を進めていくことについて、高井氏は「会社を作ってまで変えていくぞという、覚悟の現れ」だと説明。両社が出資した合弁会社からの提案という形にすることで実効性を高めるとともに、検討を行っていることを公にし、他社にも協力を求めていくとした。

 合弁会社の出資金は1億円で、紀伊國屋書店とDNPが50%ずつ出資。合弁会社の代表取締役社長に就任する高井氏のほか、代表取締役にはDNP常務取締役の北島元治氏、取締役には紀伊國屋書店専務取締役の藤則幸男氏と、DNPのhontoビジネス本部本部長の五味英隆氏がそれぞれ就任する。

(三柳 英樹)