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「行政の課題はエンジニアとしてやりがいが大きい」、東京都のデジタル化を進める「GovTech東京」がテックカンファレンスを開催
エンジニアを100名規模で募集
2025年5月23日 09:25
政府にデジタル庁があるように、都政のデジタル化を行っているのがGovTech東京だ。ただし、こちらは公務員としてではなく、一般財団法人として都職員と一緒に東京都の行政のデジタル化を進めている。
去る5月19日に、初のガブテックカンファレンスとして『内製開発と巨大プロダクト「東京アプリ」への挑戦』と題したイベントが開催された。カンファレンスの目的のひとつは、年度内に100人規模で増強したいというエンジニアのリクルートだ。
都職員16万人のIT環境を整備。次は内製化の推進と『東京アプリ』
イベントは、前半は一般財団法人GovTech東京の理事長でもある東京都副都知事 宮坂学氏の講演、後半は東京都庁とGovTech東京で行政のデジタル化にたずさわる5人の対談という形式で行われた。
宮坂氏はみなさんご存じのように、元ヤフー株式会社のCEOとしての手腕と人脈を生かして東京都行政のデジタル化を推進するために都政に携わることになった人物。
しかし、5年前に副都知事に就任した時には「副都知事室にWi-Fiがない」「あらゆる仕事は昔のままに紙ベースで行われている」「職員の仕事環境も旧来のまま」という状態だったのだそうだ。
そこから、5年で仕事環境を一新し、ネットワークやハードウェアを調達し、テック系の企業が利用しているようなクラウドべースの仕事環境を用意した。16万人の都職員の情報環境をクラウドベースにするのは大変な事業。それが、やっと今年完全移行できた。そして、行政の業務のデジタル化に本格的に取り組むべくGovTech東京を設立し、さらなる効率化を目指している。
行政はすべての人に関わる仕事。ここの効率が悪いと、社会自体が停滞する。世界に冠たる大都市である東京のデジタル化が遅れているというのは非常に良くない。そこでGovTech東京は『情報技術で行政の今を変える、首都から未来を変える』とのテーマを掲げてデジタル化を推進している。
都の行政サービスから、『使いにくい』を撲滅し、必要な情報が必要な人に提供され、手続きが簡単に行える仕組みを実現するべく動いているという。
窓口以外の行政サービスも多い
たとえば、行政には監査的な仕事が非常に多い。
建築物が規定通り建っているか、イベントが仕様通り行われているか、このような「確認」の仕事が監査である。例えば、卸売市場で販売される魚が販売が許可されている種類なのかどうか、従来は図鑑や過去の事例など膨大な資料を持ち歩いて検査していた。それをデータベース化してタブレットで閲覧できるようにしたことで、効率を改善できた。
女性が出産した時に、その後のサービスについて膨大な書類が渡されていた。それもデジタル化して、しかるべきタイミングに、しかるべき通知が来るようにしたい。手続きをシンプルにしたい。もちろん、大規模なパンデミックが起こった時にも、効率的でないと被害が甚大になるわけだ。
「内製比率を増やしていきたい」
そういう作業に取り組んでいく中で、従来はSIerに外注してきたが、これからは内製比率を増やしていきたいとのこと。
内製能力があれば、外注するにしても、内容をしっかり理解して発注できる。なにしろ、必要な機能を一番知っているのは都職員だし、仕様を起こす段階から外注すると、それだけ解像度が下がっていく。さらに、必要な仕様変更が生じたときなどの対応に要する時間と費用も大きくなってしまう。可能な部分は内製化していき、内部で仕様を固めてから発注するなどして、それを可能な部分は内製化することで、スピードアップする必要がある。また、内製化することで、内製化することで権利関係の管理も簡単になり、他の自治体へシステムを提供するなどの、横展開も容易になる。これは都に限らず全国的な規模で考えて、大幅なコストダウンに繋がる。
多くの人の生活を改善できる、本当の意味での『やりがい』
後半の対談に登壇されたのは、GovTech東京CTOの井原正博氏をモデレーターに、長年行政に携わって来た高野克己氏(デジタルサービス局 局長)、現在実際に開発に携わる亀山 鉄生氏(テクノロジー本部長)、ネットワーク基盤などを整えて来た平井則輔氏(デジタルサービス基盤開発本部長)、今日この日からGovTech東京に参画することになった及川卓也氏(エクゼクティブアドバイザー)の合計5人で、実際にGovTech東京で何が行われているかが語られた。
ここで特に語られたのが、さまざまな行政の課題に取り組む意義の深さ、いかに『やりがい』があるか、そして多くの人材が必要とされているか、だ。
現場で起きている課題をすぐにプロトタイピングし、即座にフィードバックする『価値を届けるスピード』が大切で、本当に困っている人をサポートすることができるし、多くの人の生活に影響を与える開発を行えるという『やりがい』の大きさが語られた。
実際に必要とされているのは、プロダクトマネージャー、エンジニア、UI/UXデザイナーなど。多くの人の生活を支えるクリティカルな仕事だからこそ、『行政とエンジニアが出会うと魔法のようなことが起こる』のだという。
ここに登壇者として名を連ねた人たちを見ても分かるように、今、デジタル庁や、GovTech東京には、コンピュータやインターネットの隆盛を支えて来た人々が『アベンジャーズ』のように集まりつつある。報酬の方は都の外郭団体ということもあって、超高額というわけではないが、優秀な人材が獲得できるよう、スキル相応に支払えるように体制を整えているところだそうだ。
宮坂副都知事によると、デジタル化が上手くいっている海外の都市では数千人程度のエンジニアが活躍しているという。それと比べると都の体制はまだまだとのことだが、体制の強化を必須の課題として取り組み、まず今年度で100人程度の増強を目指しているとのこと。
行政という、すべての人にとって身近な存在を改善するデジタル基盤の開発に取り組んでいるのがGovTech東京であり、その活動は、東京に限らず全国を視野に入れている。現在参画しているエンジニア各氏の名前を聞いたことがある、憧れていた、という人も多いのではないだろうか。関心を持った方は、ぜひGovTech東京の採用情報をご覧いただきたい。業界のレジェントと仕事ができる機会になるかもしれないし、行政のシステム開発に携わる経験は、エンジニア人生において大きな糧にもなるはずだ。