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トレンドマイクロ、AI時代に合わせたブランドの新設や新たなソリューションを紹介する事業戦略発表会を開催
法人向けブランドを「TrendAI」に
2026年4月16日 06:30
トレンドマイクロ株式会社は4月15日、メディア向けに事業戦略発表会を実施した。発表会では、AI時代に合わせたソリューションや、法人向けセキュリティ部門の「TrendAI」への改称、個人向けブランドの「TrendLife」について詳しい紹介が行われた。
はじめに、トレンドマイクロの大三川彰彦氏(取締役副社長)が、同社の概要をあらためて紹介した。
同社は日本に本社を置き、今年で38年となるセキュリティ専門企業だ。活動内容としては、日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)ほかの団体に参画し、セキュリティソリューションの開発・発展・提供に貢献していること、インターポールや国内の47都道府県の警察と協力し、サイバー犯罪捜査への協力や専門家教育などに取り組んでいることなどが語られた。
AIモデルの計算量は毎年4倍に
トレンドマイクロのAIプラットフォームでは、Anthropicのプラットフォームが主に使われているという。Anthropicのジェイソン・クリントン氏(副最高情報セキュリティ責任者)が登壇し、AIの現状とトレンドマイクロとの協力について紹介した。
クリントン氏は、AIの進歩を考える上で最も重要なデータとして、AIモデルのトレーニングに投入された計算量を示した。新しいモデルの総計算量は前年比で約4倍増加しており、こうした傾向は今後数年間続くことが予想されているという。そのため、AIがもたらす脅威や能力について考えるとき、12カ月後には4倍、24カ月後には16倍もの計算量が投入されたモデルが登場する世界を想定し、備えておく必要があると指摘した。
攻撃者は、AIを悪用して攻撃活動を行っている。ランサムウェア攻撃において、検知を回避したりマルウェアを潜り込ませたりする例にとどまらず、標的の選定から侵入、データの窃取に至る攻撃チェーンの全工程を完全に自動化した例も確認されている。その一方で、防御においてもAIの活用が進み、20年以上にわたって発見されていなかった脆弱性を、AIモデルが発見したケースもあるという。
さらにクリントン氏は、エージェント型AI(自律型AI)の時代が既に到来していると指摘した。Anthropicが定義するエージェント型AIは、単なるチャットボットではなく、目標達成のために環境内を自ら動き回り、明確な意図を持った知能を指す。防御側の立場として、攻撃者から自社や自国を守ることを考える際、こうしたエージェント型AIの活用が不可欠だとした。
トレンドマイクロとの具体的な連携として、ゼロデイ脆弱性を発見し、開発者に通知を行う活動の「Zero Day Initiative」や、ハッキングコンテスト「Pwn2Own」、「Vision One」におけるデジタルツインの取り組みなどでの協力を紹介した。これに加えて、AIによる新たな脅威の研究や、「TrendLife」におけるAIモデルの安全性に関する取り組みも紹介し、モデルと製品の双方の品質を向上させるため、共同パートナーシップを通じて協力していくと述べた。
AIの進化で脆弱性の発見件数は指数的に増加
トレンドマイクロのエバ・チェン氏(代表取締役社長 兼 CEO)が登壇し、AI時代のソフトウェアのあり方とセキュリティ戦略について紹介した。
チェン氏は、AIがソフトウェアの本質を変化させたと指摘した。従来のソフトウェアはフローチャートのような構造で作成されている一方で、近年登場したエージェント型AIでは、各エージェントが独自の脳を持ち、解決策を考え出し、互いに協力し合うという根本的に異なるアプローチで作成されている。こうしたソフトウェアが混在していることで、サイバーセキュリティのリスクと課題は大きくなっているという。
サイバーセキュリティの最大の課題として、ソフトウェアの至る所で見つかる脆弱性がある。その数は増え続けており、AIはこれまで人間が見つけられなかった脆弱性を発見することもある。しかし、こうした脆弱性に対して、パッチ適用などで対応する能力が不足しているのが現状だという。
脆弱性が発見され、ベンダーに通知し、パッチが公表されるまでのプロセス全体が攻撃のリスクになり得る。トレンドマイクロの「Zero Day Initiative」では、脆弱性を発見した際に、情報を公開しない沈黙期間を設け、開発者と協力してパッチを作成する。その後、準備が整ってから初めて脆弱性に関する情報を公開する。
パッチが公表されると、攻撃者はそれをリバースエンジニアリングすることで、攻撃手法を編み出すこともある。こうしたリスクに対し、組織が実際にパッチを適用するまでの空白期間の対処として、ネットワークレベルで攻撃パケットをブロックする「仮想パッチ」を提供している。このほか、標的型メールなどで人間や組織の脆弱性を狙う攻撃についても、AIによる防御が提供されている。
チェン氏は、セキュリティを「より速く安全に走るためのブレーキ」や「旧世代から新世代へつなぐ架け橋」に例え、トレンドマイクロがユーザーのブレーキとなり、架け橋になれることを嬉しく思うと述べた。
「TrendLife」で家族全員がAIの世界で安心して暮らせるように
トレンドマイクロのフランク・クオ氏(TrendLife 最高コンシューマー事業責任者)が登壇し、個人向け新ブランドの「TrendLife」について、コンセプトを紹介した。
クオ氏は、AIが子どもの判断力や批判的思考に影響を及ぼし、高齢者を狙う詐欺がAIによって巧妙化する中、子どもと親の両方に責任を持つ「サンドイッチ世代」が家族をサポートし続けるのは難しいと指摘した。
詐欺電話やネット詐欺をブロックするアプリ「詐欺バスター」の利用データから、家族の利用状況を確認する「家族のみまもり」機能を利用しているユーザーは、未使用のユーザーに比べて4倍以上と高い確率で、家族の詐欺リスクに関する通知を確認しているというデータを紹介した。これは、自分を守るという姿勢から、お互いを思いやるという姿勢へ変化したことを示しているという。
こうした家族を助けるために作られたのが「TrendLife」だという。従来の画一的なセキュリティ対策ソフトと異なり、家族それぞれの価値観やルールにAIを適合させ、何が本物で何を信頼すべきかを理解し、正しい指針のもとで文脈を共有しながら意思決定を行うことで、家族全員がAIの世界で安心して暮らせるようにすることを目指すという。
トレンドマイクロのピーター・チャン氏(チーフカスタマー エクスペリエンス オフィサー)が登壇し、「TrendLife」の具体的なソリューションの「Kaleida」を紹介した。
チャン氏は、AIが家族に対して新しい可能性を広げている一方で、家庭にAIを迎え入れるためには、まずAIを信頼しなければならないと指摘した。Kaleidaでは、AIを家庭生活において十分に信頼できるものにすることを目標にしているという。
具体的な機能の例として、子どもがAIで作品を作る際に、どうやってそれを作ったか、制作過程でAIがどこを手伝ったのかを示せるポートフォリオのような機能や、家族全体の状況から、それぞれが行うべき行動を判断する機能などが紹介された。
TrendLifeとKaleidaについては、別の記事でより詳しく紹介する。
「TrendAI」へのリブランディングでAI対応をアピール
トレンドマイクロのレイチェル・ジン氏(TrendAI 最高プラットフォーム責任者 兼 最高事業責任者)が登壇し、法人向けセキュリティ部門を「TrendAI」にリブランディングした狙いや、「Trend AI Vision One」を紹介した。
ジン氏は、リブランディングの狙いとして、次の3点を挙げた。1つ目は、ユーザーのAIを保護することを明確に示すため。2つ目は、ディフェンダー(セキュリティのための防御者)としてパワフルなAIにより防御を高度化させる意思を示すため。3つ目は、トレンドマイクロの組織自体がAIを熟知していることを示すため。ユーザー環境においても、セキュリティソリューションにおいても、ベンダーであるトレンドマイクロにおいても、AIが核となることを示した。
プラットフォームの「Trend AI Vision One」では、トレンドマイクロが蓄積したデータなどの上に大規模言語モデル(LLM)を構築し、多くのセキュリティチームが直面するリソースや専門知識の不足について、AIエージェントがサポートするという。アラートの優先順位付けやデジタルツインによる攻撃予測、インシデント発生時のウォールームの自動設置、経営層向けの資料の作成などをAIが支援することで、「能動的サイバー防御」を実現できるとした。








