MSが偽造ソフト対策強化、再生PC向けライセンス制度拡充
マイクロソフトは15日、再生PC事業者向けに正規のWindows OSライセンスを提供する「Microsoft Authorized Refurbisher(MAR)プログラム」を拡充すると発表した。合わせて、再生PC用の正規Windows OSライセンスを代理店経由で再生PC事業者に提供する「Microsoft Registered Refurbisher(MRR)プログラム」を、5月から展開すると発表した。
●MARプログラムで参加企業拡大。OSにWindows 7なども追加
マイクロソフトの中川氏 |
「MARプログラム」は、出荷時に正規のWindows OSがインストールされていたPCを対象に、再生PC事業者が「再生PC」として販売する際に、マイクロソフトがWindows OSのセカンダリライセンスを提供する制度。2009年4月にソフマップやヤマダ電機など、9社が参加してスタート。その後、メディアエイターに加え、2010年3月に日本IBMも参加し、現時点で参加企業は合計11社に広がっている。
買い換えやリース終了によって転売された中古PCの中には、正規の「Certificate of Authenticity(COA)ラベル」が添付されている製品であっても、リカバリメディアが紛失しているケースも少なくない。また、内部データにOSデータが含まれている場合でも、再生PC事業者が再生PCとして処理する際に、セキュリティリスクの観点から内部データを消去するケースもあるという。
OSが含まれていない再生PCを購入した場合、新たにパッケージでOSを再購入する必要があり、コストが高くつくとマイクロソフトでは説明。また、OSなしで再生PCを購入したユーザーが第三者からOSを購入する場合に、非正規品や偽造品を購入するリスクもあると指摘している。
MARプログラムを提供することで、再生PC事業者においてOSをプリインストールしてPCを出荷できるようになるとともに、ユーザーにとっても正規のWindows OSがインストールされた再生PCを安心して購入できるようになるとしている。なお、セカンダリライセンスの費用は非公表だが、マイクロソフトではMAR用の「COAラベル」やリカバリメディアの実費額程度だとしている。
MARプログラムの特徴 | MARプログラムに参加する事業者 |
MARプログラムでは従来、Windows XP Home Edition/Professionalのみを対象にしていたが、新たにWindows Vista Home Basic/Premium/BusinessおよびWindows 7 Home Premium/Professional、Windows Server 2003を追加。なお、Windows Vistaの場合は、Windows 7がセカンダリライセンスとして提供される。
マイクロソフトの中川哲コマーシャルWindows本部長は、中古PC市場について「2009年で144万台規模を見込み、市場は年々拡大してきている」と説明。また、2009年4月に開始したMARプログラムに関して、具体的な数値は明らかにしなかったものの、「2009年7~9月期と比較して、10~12月期は2倍の実績に上っている」とした。
MARプログラムでは今回、Windows 7が新たに加わったが、Windows 7 Ultimateは対象外となっている。この点に関して中川氏は「プログラムの性質上、中古市場のニーズを見ながら、一定の取引量があるエディションを追加する形態を取っている」と述べ、「Windows 7 Ultimateは中古市場でまだ取引量が少ないため、対象に加えていない」と述べた。
Windows XP以外のOSも新たに追加する | 中古PC市場の台数推移とMARプログラムの実績 |
●中小規模の再生PC事業者向けのプログラムも新規開始
合わせて発表した、「Microsoft Registered Refurbisher(MRR)プログラム」は、再生PC事業者がOEM正規販売代理店経由で、Windows OSのセカンダリライセンスを入手できるプログラム。MARプログラムではマイクロソフトと直接取り引きのある大手再生PC事業者を対象にしていたのに対し、MRRプログラムでは直接取り引きのない中小規模の再生PC事業者も参加できる。
MRRプログラムの参加にあたっては、事前に指定のポータルサイト上でオンライン契約を結ぶ必要がある。マイクロソフトでは、申請のあった再生PC事業者を審査した上で、問題がなければ承認メールを送付する。なお、プログラム参加にあたっての費用は必要なく、実際に再生用PCのライセンスを購入する際にOEM正規販売代理店からのライセンス購入代金が発生する形になる。
MARプログラムとMRRプログラムの概要 | MRRプログラムの流れ |
MRRプログラムに参加したPC再生事業者は、代理店を経由して、リカバリメディアやプロダクトキーの刻印がないCOAラベルを入手できる。その後、ポータルサイトにログインして、PCに貼付されていた元のCOAラベルのプロダクトキーを入力することで、再生PC用に新たに発行されたプロダクトキーをPDFファイルで受け取れる。その上で、再生PCにOSをプリインストールし、新COAをラベルを貼付して製品を出荷できる。
なお、MRRプログラムでライセンス提供されるWindows OSは、対象OSが拡大したMARプログラムとは異なり、Windows XP Home Edition/Professionalに限定される。
MARプログラム、MRRプログラムを利用した再生PCには2枚のCOAラベルが貼付されている | COAラベルが1枚しか貼付していない場合、正規の再生PCではない可能性があるという |
●非正規メディアのオークション出品数が1年で2割弱に減少
マイクロソフトの伊藤氏 |
15日に行われた説明会では合わせて、マイクロソフト執行役 法務・政策企画統括本部長で弁護士の伊藤ゆみ子氏がWindows製品の偽造ソフトウェアに対する同社の取り組みを紹介。伊藤氏によれば、マイクロソフトでは「教育・啓発」「エンジニアリング」「法的対応」を3本柱にソフトウェアの著作権侵害に対して取り組んでいるという。
法的対応の成果としては、メーカー製のWindowsリカバリメディアの偽造品をオークションに出品していた販売者5名が摘発された事例や、ビジネスソフトを含んだ違法アップロードの摘発事例などを紹介。こうした対応によって、2010年2月における非正規メディアのオークション出品数は前年同月比で2割弱にまで減少しているとした。
法的対応の成果について | Windows製品の偽造品の特徴 |
オークションサイトでの不正出品例としては、COAラベルやプロダクトキーのみを販売する事例が増えてきているという。こうした不正プロダクトキーの出品画面では、正規品と見えるようなパッケージを表示して、一見、COAラベルが正規ライセンスであるかと誤解を与えるような形で販売されているとした。
また、偽造ソフトウェアなどのリスクに対しては、「出品者側では著作権法に違反する」と指摘。購入者に対しては「セキュリティ侵害の危険性やインストール時のトラブル」に加え、偽造ソフトウェアが組織的に販売されるケースも少なくないことから、「図らずも犯罪組織に資金を提供してしまうリスクもある」と述べた。
その上で、オークションの出品監視やID削除依頼を強化するとともに、今後購入する可能性がある人に対して、注意喚起事項をまとめてマイクロソフトの「不正利用を未然に防ぐために」ページで紹介する。加えて、偽造ソフトウェアの被害者に対する救済策を用意するなど、偽造ソフトウェアに対する取り組みを引き続き進めるとした。
COAラベルやプロダクトキーのみを販売するケースも増えているという | 不正プロダクトキーの出品画面例 |
関連情報
(村松 健至)
2010/3/15 17:02
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