デジタル社会の著作権のあり方は? 基本問題小委員会スタート


「基本問題小委員会」2010年度第1回会合の様子

 文化審議会著作権分科会の「基本問題小委員会」2010年度第1回会合が9日に開かれた。同小委員会ではデジタル社会における著作権のあり方を議論しているが、前期に引き続き、著作権制度の議論では権利者が軽視されているといった内容の意見が相次いだ。

 今期の小委員会では、1)デジタル・ネットワーク社会に対する認識、評価について、2)1)の認識のもとで著作権制度の果たす役割について、3)今後の検討が必要な著作権関連施策にかかる課題とそのとるべき方向性――という3つの論点で議論が進められる。

 3)に関しては、現時点で解決されていないという課題も議論される予定。小委員会事務局によれば、著作権の保護期間を現行の「著作者の死後50年まで」とするか、「著作者の死後70年まで」に延長するかなどの問題も含まれるとしている。

 小委員会のメンバーとしては、日本レコード協会会長の石坂敬一氏、日本音楽著作権協会理事のいではく氏、日本芸能実演家団体協議会専務理事の大林丈史氏など、半数以上が権利者側で占められている。

 9日の会合では、TMI総合法律事務所の遠山友寛弁護士らがヒアリングに招かれた。遠山氏は「ネット社会は、なんでもタダという『コピーフリー』の思想が蔓延している」などと述べ、著作権の価値を守るための原点回帰の議論が必要と訴えた。

 また、大林氏は「デジタル時代のコピーは、家庭にお札を印刷できる機械があるのと同じ。ダビング10に関しては、親切な文房具屋の店主が消しゴムを万引きしそうな子どもに対して、10個消しゴムをあげるようなもの」と苦言を呈した。

 一方、主婦連合会事務局次長の河村真紀子氏は「お札を作れたとしても、それを使えば違法。ダビング10の件についても事実とは異なる話で、私的複製が海賊版行為のように言われるのは心外」と反論する一幕も見られた。

 小委員会では今後、出版社や放送事業者からのヒアリング、各委員が提出する意見書などに基づき、今夏をめどに報告書をとりまとめる予定。


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(増田 覚)

2010/4/9 16:13