「ECサイトの世界進出を支援したい」ペイパルジャパンが日本市場戦略


 オンライン決済サービス「PayPal(ペイパル)」を手がけるペイパルジャパン株式会社の責任者で、カントリーマネージャーを務めるアンドリュー・ピポロ氏らが28日に会見を開き、日本における事業戦略を説明。消費者やECサイト事業者への施策を通じて、国内および国際間の取り引きを拡大させていく考えを示した。

日本におけるアクティブアカウントは40万件以上

 PayPalは、クレジットカード番号などの重要な個人情報を相手に開示することなく、インターネット上で決済が行えるサービス。支払いには銀行口座やクレジットカード、プリペイドカードなどが利用できる。世界190カ国・地域で24の通貨に対応し、過去1年間で1回以上利用されたアカウント(アクティブアカウント)だけでも8700万件に上る。

 ペイパルジャパンは、市場調査を目的として2008年に設立。2010年4月には資金決済法が施行されたことに伴い、PayPalのような資金移動サービスが日本でも展開できるようになり、本格的な営業活動をスタートさせた。6月には東京・表参道に新オフィスを開設し、日本での事業拡大を図っている。

 日本におけるアカウント総数は6月末時点で100万件以上、このうちアクティブアカウント数は40万件以上。また、2010年上半期における総取り扱い額は明らかにされていないが、前年同期比で45%増加しており、このうち国際間(クロスボーダー)取り引きの取り扱い高は70%を占める。

PayPalの仕組みPayPalが利用できるECサイト

 日本での成長戦略としては、PayPalを導入するEC事業者を対象とした「売り手」の拡大を最重要課題に掲げる。具体的には、決済代行事業者(ペイメントゲートウェイ)と提携し、大規模から中小規模までのECサイトへのアプローチを図る。現在、GMOペイメントゲートウェイ株式会社やSBIベリトランス株式会社など6社と提携している。

 「売り手戦略」ではさらに、「楽天市場」や「セカイモン」など大規模なECサイトのプラットフォームにPayPal導入を図ったほか、「UNIQLO」や「Vector」などのECサイトへの直接営業を通じて、PayPalを導入するECサイトの拡大に注力してきた。今後は、会員を多数持つECサイトへのアプローチを強化していく。

「売り手戦略」の概要「売り手戦略」の実績

「安全」「迅速」「グローバル」で消費者に訴求

ペイパルジャパン責任者のアンドリュー・ピポロ氏(左)とマーチャントセールス部長の大橋晴彦氏

 消費者を対象とした「買い手戦略」としては、「安全」「迅速」「グローバル」といったPayPalの利便性を訴求する。安全に関しては、重要な個人情報を相手に開示しないことや、商品不着時の被害金額を全額補償する「バイヤープロテクション(買い手保護プログラム)」などをアピールしていく。

 「迅速」については、買い物の度にクレジットカード情報などの入力が不要な点、「グローバル」に関しては、世界190カ国・地域、24通貨、800万のECサイトで利用できるメリットなどを訴えていく。このほか、iPadやiPhone、Androidなど新しいプラットフォーム向けのアプリも強化する。

 このほか「開発者戦略」として、開発者向けコミュニティ「PayPal X」への日本人の参加を呼びかける。PayPal Xでは、PayPalのAPIや開発者用ツール、サンプルコード、開発者ネットワークなどを提供。日本人開発者の参加を通じて、日本市場向けにカスタマイズされたツールの充実を図る。

 ピポロ氏は、「日本の全商取り引きにおけるEC化率は2.1%、クロスボーダー取り引きは17.8%にとどまり、米国や韓国などと比べて低水準」という経済産業省のデータを引き合いに出し、「世界基準になったPayPalの利便性を日本で提供することにより、国内および国外向けのEC市場の成長を加速させたい」と意気込んだ。

 また、ペイパルジャパンでマーチャントセールス部長を務める大橋晴彦氏は、ECサイトに対して、PayPal経由で届いた海外からのクレームに対応するためのサポートや、楽天市場の一部店舗で試験的に実施している「売り手保護プログラム」を充実させることなどで、PayPal導入済みのECサイトのクロスボーダー取引を支援していきたいと語った。


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(増田 覚)

2010/7/28 15:36