海辺で拾った貝殻に、思い出の映像を詰め込む技術~NTTコムウェアが開発中


NTTコムウェア本社内にあるショウルーム「次世代ネットワークラボ」において、「オブジェクトリンク」をはじめとした同社の研究・開発成果を取引先企業など向けに紹介している

 海辺で拾った貝殻を手にしたとたん、その時の情景が自然と目に浮かんでくる――。そんな感覚で思い出の映像を再生する技術を、NTTコムウェア株式会社が研究・開発中だ。

 「オブジェクトリンク」と呼ばれるこの技術は、同社が保有する画像認識技術を活用して個々のオブジェクト(モノ)を認識し、それらのモノに、映像などのデジタル情報をリンク(ひも付け)させるものだ。これにより、モノをトリガーにして、ひも付けられた情報を簡単に取り出せるようになるという。

 現在、NTTコムウェアがオブジェクトリンクのデモ用に開発したシステムでは、ネットPCを接続したデジタルテレビの前に、ボックス状の独自の読み取り装置を設置。これは、ライトボックスの内部にUSB接続のウェブカメラを取り付けたもので、その上に置いたモノをすりガラスごしに撮影する仕組みとなっている。

 読み取り装置の上にモノを置いて認識させた上で、それに映像をひも付ける操作を行うわけだが、直感的に行えるよう、ゲーム機風の赤外線リモコンを使用してジェスチャーで操作する方式を採用した。ストレージ内の映像素材がテレビ画面にサムネイル表示されるため、その中からひも付けたい映像を選択すると、その映像が画面下の方に向かってあたかも読み取り装置上のモノの中に吸い込まれていくような画面効果が表示され、ひも付け操作が完了する。

 一方、読み取り装置の上にモノを置けば、そのモノを認識し、それにひも付けられた映像が再生される。現在、デモはローカル環境で行っているが、インターネット経由でクラウドやホームサーバー上に保存している映像を、遠隔地から再生するといった使い方も想定されている。

 例えば、子供が作った折り紙を祖父母宅に送ることで、離れて暮らす孫の映像を祖父母が簡単に見られるようになるなど、コミュニケーションツールとしても有効だとしている。


読み取り装置の上に置いた折り紙の手裏剣にひも付ける映像を選んでいるところ手裏剣にひも付けられた映像が再生された状態

 なお、現在のシステムでは、読み取り装置の仕組み上、画像認識はモノの平面的な輪郭や色で行っており、デモで主に使用しているのも折り紙で作った手裏剣だ。貝殻と夏の思い出の例は、同社がオブジェクトリンクを説明するにあたって用いているモチーフだが、実際は貝殻を立体的に認識しているのではなく、すりガラス上に投影された輪郭で検知しているという。ユーザーインターフェイスとして、読み取り装置の上にモノを置くという行為にこだわったためだが、画像認識技術的には、手に持ったモノを通常のウェブカメラで撮影して3次元的に認識することもすでに可能な段階にあるとしている。

 従来も、QRコードやICタグなどによってモノを識別し、デジタル情報をリンクさせる仕組みはあった。これに対してオブジェクトリンクは、専用の識別マーカー不要で、モノだけで識別を可能にするものだ。今後、画像認識精度の向上や識別アルゴリズムの改善などが進み、世の中にあるあらゆるモノを判別できるようになれば、商品や工業製品でなくとも、どこからか拾ってきたモノや子供が作ったつたない工作など、あらゆるモノに思い出を詰め込んでおくことができるようになるかもしれない。


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(永沢 茂)

2010/10/8 06:00