「iPhone 4S」16GBモデルの部品原価は188ドル、iSuppliが予備的分解調査


 米調査会社のiSuppliは20日、「iPhone 4S」の予備的分解調査を行い、16GBモデルの部品原価が188ドルとの結果を発表した。

 さらに今回の分解調査の結果、NANDフラッシュメモリーの製造メーカーとして、初めて韓国のHynix Semiconductor社製が使用されていることが確認された。また、無線通信回路でこれまでにない先進的な新設計が行われていることもわかったという。iPhone 4Sは外観デザインに変更はなかったものの、意欲的な新機種であることが改めて理解できる結果となっている。

 各モデルの部品原価を比較すると、16GBモデルが188ドル、32GBモデルが207ドル、64GBが245ドルで、これに製造コストを加えた製造原価は、16GBモデルが196ドル、32GBモデルが215ドル、64GBが254ドルと予測している。なお、販売小売価格は16GBモデルが199ドル、32GBモデルが299ドル、64GBモデルが399ドルであるため、上位モデルほどマージンが大きくとられている様子が見て取れる。

 なお、これらのコストにはハードウェアコストしか含まれておらず、ソフトウェア、ライセンス料、ロイヤルティー、他の支出が含まれていないことに注意する必要がある。

 そのほかにも興味深い点がいくつも明らかになった。今回iSuppliが入手し分解した個体中から、韓国Hynix社製NANDフラッシュメモリーが発見された。これまでiPhoneやiPadには、Samsung Electronicsと東芝のNANDフラッシュメモリーが採用されていた。Hynix社製が確認されたのはこれが初めてだ。なお、iPhoneで使用されているNANDフラッシュメモリーの供給企業が1社だけではないことは、すでにiSuppliによって確認済みだとしている。NANDフラッシュメモリーは、iPhone 4Sの部品コストの中で大きな割合を占めるため、Hynixにとっては大きな勝利となるだろう。

 なお、16GBモデルでは、NANDフラッシュメモリーのコストは19.20ドルで、タッチスクリーンディスプレイの23.00ドルに次いで高価な部品となっている。

 ちなみに、32GBモデルになるとNANDフラッシュメモリーは38.40ドル、64GBモデルでは76.80ドルとなり、全体の中で最も高価な部品となる。

 また、iPhone 4Sの無線通信回路が、先進的な設計に改良されていることも明らかになった。Appleが世界中で提携している携帯電話事業者の通信規格をデュアルモードで対応できるような設計を採用しているという。これまでのiPhoneでは高速データ通信を行うHSPAとCDMAを別々にサポートしていたため、根本的な設計変更が行われたことになる。なお、ほとんどの携帯電話端末メーカーは、機種ごとにサポートする通信規格を内蔵する方式を採用している。

 この新設計のためにAvago社の電力増幅モジュール(PAM)が採用された。この種のモジュールを提供しているのはAvagoのみで、Appleが初めて実装したことになるという。Avagoにとっても大きな勝利といえそうだ。また、ベースバンドプロセッサーにはQualcomm社製が採用されている。

 iPhone 4Sで改良された8メガゼクセルカメラは、今回分解した個体ではソニー社製のイメージセンサーが採用されていたが、iSuppliでは米OmniVision社製も含まれているのではないかと予測している。

 その一方で、iPhone 4Sの筐体、タッチスクリーンディスプレイ、Wi-Fi/Bluetooth/FMモジュール、オーディオコーデックなどに変更はなかった模様だ。


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(青木 大我 taiga@scientist.com)

2011/10/21 12:29