トレンドマイクロ事業拡大、データ・プライバシー分野などで新製品投入


 トレンドマイクロ株式会社は31日、コンシューマー事業を従来のPC向けウイルス対策ソフトを中心とした分野から、新たに「デバイス」「データ」「プライバシー」「ファミリー」の4分野に拡大する方針を示した。これにより、全世界の2011年度総売上高と比較して2014年には25%増の550億円、2016年には45%増の650億円を目指す。

 地域別の方針としては、2011年実績で全世界の6割以上の売上を占める日本市場が、PC向けセキュリティソフト事業を維持しつつ、新事業を開拓して他の地域を牽引。米国・欧州の先進国市場では、量販店の既存チャンネルに加えて、通信・モバイル会社との協業を通じてサービス型ビジネスを進める。アジア太平洋・南米の新興国市場では、セキュリティソフト・モバイル市場の成長に伴う新規顧客を獲得する狙い。

 組織面では、日本市場を基盤にグローバルで新たな事業を推進する体制として、大三川彰彦副社長が全世界のコンシューマービジネスを統括。また、PC向けセキュリティソフトに集中してきた製品開発体制を「インターネットセキュリティ(Windows/Mac)」「モバイル」「新規(ホーム&データマネジメント)」に分割し、新規分野には約100人の開発人員を割り当てる。

コンシューマービジネスの新しい領域製品・サービスの計画

 新規事業の詳細は明らかにされていないが、デバイス分野ではスマートフォン向けバッテリー管理、データ分野では写真管理サービスやモバイル向けデータバックアップを提供する予定。また、プライバシー分野ではクラウドによるウェブメール暗号化、ファミリー分野では位置情報を利用した家族の安全保護サービスなどを企画しているという。

 トレンドマイクロが事業拡大を図る背景には、デジタル環境の変化がある。大三川副社長は、従来のPC中心のデジタル環境から、クラウドやモバイルの普及により、誰もがいつでもどこでも必要な情報を利用できるようになったと指摘。新規事業ではこうした環境下でユーザーが安心してデジタルライフを楽しめる世界を支援したいという。

 トレンドマイクロはこれまでも、デバイス、データ、プライバシー、ファミリーの4分野向けに製品を提供してきた。今後は4分野の中心に「デジタルライフ支援サービス」を据え、各分野のサービスを単独で提供するのではなく、「1つの固まりとして意識せずに使ってもらいたい」と大三川副社長はアピールする。

 また、同社ホーム&データマネジメント製品企画・開発統括部長の吉田健史執行役員は、「トレンドマイクロはウイルスバスターの会社と言われる」と前置きした上で、これからは「複雑なセキュリティを簡単にする会社」を目指すと宣言。今後はパートナー企業とのエコシステムを構築し、幅広いセキュリティ製品・サービスを展開したいと意気込んだ。

大三川彰彦副社長吉田健史執行役員

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(増田 覚)

2012/7/31 15:42