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「若き経営者をようやく手にした」ドワンゴ・川上氏への期待を語る角川氏
KADOKAWA・ドワンゴ経営統合記者会見
(2014/5/14 21:50)
株式会社KADOKAWAと株式会社ドワンゴは14日、両社の経営統合に関して共同記者会見を開催した。
KADOKAWAとドワンゴは、共同株式移転により株式会社KADOKAWA・DWANGOを10月1日に設立することを、両社の取締役会で決議。KADOKAWAとドワンゴが新会社の完全子会社となる形で経営統合を行う。
コンテンツとプラットフォームの統合、“囲い込み”はせずオープンに~川上氏
新会社の代表取締役会長に就任予定の川上量生氏(ドワンゴ代表取締役会長)は、「プラットフォームをやっているドワンゴと、コンテンツをやっているKADOKAWAの2つが合わさった、という理解をされるかもしれないが、その理解は少し違うと思う。両社ともコンテンツとプラットフォームの両方をやることを目指してきた会社」と語り、例えば(KADOKAWAが発行している)雑誌にはリアルにおけるプラットフォームの側面があり、ドワンゴもプラットフォームだけでなくコンテンツを作ることに注力してきたと説明。コンテンツとプラットフォームの両方を手掛けてきた両社は、相性の良い会社だと語った。
また、「ネット企業は専業で1つのことに絞っていくのが主流だったが、それが正しいのかということはずっと思ってきた」として、過去にはPC分野ではハードウェアとOSはそれぞれ専業の企業が主流だったが、現在ではアップルのように垂直統合の企業が勝者になっていると語り、「コンテンツとプラットフォームを融合することで、他の会社との直接的な競争を避けて、新しい世界を切り開く体制が作れるのではないか」とした。
一方で、「今回の統合は決して、コンテンツとプラットフォームを囲い込むという話ではない」として、「KADOKAWAもコンテンツをYouTubeなどにも提供していくだろうし、我々もKADOKAWA以外ともやっていく」と説明。囲い込むための統合ではなく、両社の組み合わせにより新しいものを生み出していくための統合だと語った。
「若き経営者をようやく手にした」川上氏への期待を語る角川氏
新会社の代表取締役相談役に就任予定の角川歴彦氏(KADOKAWA取締役会長)は、「両社のプラットフォームは補完関係にあり、サブカルチャーという共通の基盤を持っている」と語り、両社の企業文化は共通していると説明。ニコニコ動画が新しいクリエイターを輩出し、それがKADOKAWAの紙媒体でも重要な部分を占めるようになってきており、これも統合の大きなきっかけになっていると語った。
角川氏は、新会社での自身の役割について「川上くんの複雑系の発言を翻訳して伝えるのが私の仕事」と笑いを誘った上で、「真面目な話をすると、新会社は3000人を超える、コンテンツ業界では大きな所帯。その社員が生き生きと仕事をしてもらえるようにする。そして私は、川上くんという若き経営者をようやく手にした。川上くんが、単にニコニコ動画を作ったというだけでなく、新しい仕事をしたいという気持ちも大事にしながら、KADOKAWA・DWANGOという所帯の大きさもきちんと認識してもらって、これからの時代の変化の中で、彼が行き先を示していく経営者となっていくことを信じています」と、川上氏を後継者として見守るように期待を語った。
両社の事業規模からすると、ドワンゴの方をかなり高く評価した株式移転比率になっているのではないかという質問には、「おっしゃる通りです。高く評価しています」(角川氏)とコメント。経営統合については、角川氏が川上氏に「3年ぐらい前から話をしていた」が、角川では傘下の出版社の統合など両社ともに他に課題があったため、今年に入ってから経営統合の話が一気に進んだとした。
世界を舞台に“進化したメガコンテンツパブリッシャー”を目指す
新会社の代表取締役社長に就任予定の佐藤辰男氏(KADOKAWA取締役相談役)は、両社の経営統合の目的を「デジタル化とインターネット技術が進展する中で、ドワンゴの有するテクノロジーおよびプラットフォームと、KADOKAWAの有するコンテンツおよびリアルプラットフォームを融合させ、ネット時代の新たなビジネスモデルとなる世界に類のないコンテンツプラットフォームを確立することを目指す」と説明。
経営統合の意義については、コンテンツとテクノロジーの融合を挙げ、両社が保有するネットプラットフォームとコンテンツを融合させ、niconicoを強化すると説明。また、デジタル対応を急ぐKADOKAWAにとって、ドワンゴとの統合によるエンジニアリングのグループ内製化は、計り知れない武器になるとした。
また、KADOKAWAの持つコンテンツ編集力を生かし、ドワンゴのプラットフォーム上で生み出されるUGC(ユーザー生成コンテンツ)をプレミアム化していくことや、メディアミックスを含めたKADOKAWAの販売流通施策を通じてコンテンツ販売事業を拡大していくと説明。リアルとネットのプラットフォームの融合により、両社が構築する新たなプラットフォームを、「オールジャパンプラットフォームとして、世界を舞台に“進化したメガコンテンツパブリッシャー”を目指していく」と語った。
佐藤氏は、想定される統合持株会社の重点事業として「ゲーム情報ポータル事業」を1番目に挙げ、「ゲーム雑誌ではKADOKAWAがほぼ独占的な状態で、ゲーム実況が非常に盛り上がっているドワンゴとの、ゲーム分野における紙とネットの融合の先にあるもの」と説明。このほか、角川ゲームスやスパイク・チュンソフトといった両社が子会社を保有しているゲーム事業や、電子書籍事業、UGCクリエイタープラットフォーム事業、地域情報プラットフォーム事業など重点事業として挙げた。