ニュース

Google、量子コンピューターの独自ハードウェア開発に乗り出す

著名研究グループとの提携を発表

 米Googleの研究機関であるGoogle Researchは3日、Googleの「Quantum Artificial Intelligence Lab」チームが、量子コンピューターハードウェアの設計・開発を行うためのイニシアチブを発足させると発表した。

 Googleは、超電導素材による量子コンピューター用プロセッサの設計・開発を行うとしている。

 同時に、このイニシアチブでカリフォルニア大学サンタバーバラ校のJohn M. Martinis教授が率いる研究グループと提携したことを発表した。

 Martinis教授は低温物理学分野に与えられる「Fritz London Memorial Prize」を今年4月に受賞している。この賞の過去10人の受賞者はその後、全員がノーベル賞を受賞していることからもその重要性が推し量られる。

 Martinis教授らグループは、今年4月に量子コンピューター素子開発で大きな前進を発表した。量子コンピューター開発では、通常のコンピューターの「ビット」と対応する「キュービット」が不安定であることが大きな障害となるため、量子誤り訂正技術が必要となる。Martinis教授らは5キュービットの配列という小さい規模ではあるが、十分に信頼性の高い量子誤り訂正技術を実証したと発表した。

 しかし現実の量子コンピューターを実現するには、2次元の配列でかつ誤り訂正率は1パーセント以下でなければならない。まだそこには至っていないが、商業開発も視野に入ってきたことがうかがわれる。

 Googleは、ハードウェア開発に乗り出すメリットについて、「Quantum AIチームにハードウェアグループを統合することによって、近年の理論的な洞察とD-Wave社の量子アニーリングアーキテクチャから学習した事柄に基づいて、量子最適化と量子推論プロセッサ用の新しいデザインを実装、試験できるようになる」と説明した。

 しかし、これまでのD-Wave社による量子コンピューターとの関係を捨て去るわけではなく、今後もD-Wave社の科学者、またNASA Ames研究所に設置されている最新型「Vesvius」マシンでの実験も継続するとしている。

 GoogleはこれまでD-Wave社によって開発された量子アニーリング原理に基づくコンピューターを使用してきたが、今回の発表により、Googleが汎用的な原理に基づく量子コンピューターに注力するだけでなく、それを独自にハードウェアとして開発する野心を示したことになる。

 かつて量子コンピューターは夢物語と言われた時代もあったが、Martinis教授らの考える通りに商業化の可能性が見えてきたのかどうかが注目される。

 また、従来よりGoogleは量子コンピューターによる機械学習分野での応用を研究しており、この分野での人材獲得、進展にも注目が集まっている。

(青木 大我 taiga@scientist.com)