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東北で必要とされている人材とは――ビズリーチで「WORK FOR 東北」のプロジェクトメンバー公募
2016年3月11日 13:36
転職サイト「ビズリーチ」などを運営する株式会社ビズリーチは、東北の復興に関する仕事の人材募集特設ページを開設し、合同公募を開始した。東北の各自治体や民間企業に人材を派遣するプロジェクト「WORK FOR 東北」(日本財団)のプロジェクトメンバー募集となる。募集期間は3月9日から4月5日までで、ビズリーチ会員全員が対象。
募集内容は、以下の5カ所の計9ポジション。石巻市の生鮮マーケットの企画・運営マネージャーなど、主に産業の振興や創生にかかわる職種が並んでいる。
・石巻市6次産業化・地産地消推進センター(2件)
・福島県浪江町
・釜石リージョナルコーディネーター協議会
・一般社団法人ふくしま連携復興センター
・岩泉町地域づくり支援協議会(4件)
これにあわせてビズリーチは3月9日、WORK FOR 東北などで復興に従事する団体や転職者によるセミナーイベント「震災から5年、『これからの東北で求められる人材』とは?」を、復興事業に興味を持つ人たちを対象に開催した。
東北に必要とされている人材のニーズ
セミナーの基調講演として、「東北の復興現状について」と題して、復興・社会事業コーディネーターである一般社団法人RCFの藤沢烈氏が話した。藤沢氏は「産業の復興は行政だけではできない」として、民間の力の重要性を訴え、東北で必要とされている人材のニーズを解説した。
藤沢氏はまず、東北の現状として「道路や工場などのインフラはほぼ復旧したが、売上は戻っていない」と報告した。震災前の水準まで回復した事業者は45%程度で、55%は回復していないという。「新商品・新サービスを通じた新規顧客の確保など、販路の拡大が重要だ」と藤沢氏。
また、観光においては、日本全国でインバウンドを含む観光が活況な中、東北は落ち込んだままというグラフを示し、「地域の資源を活用した観光商品の開発が求められている」とした。
産業以外でも、仮設住宅などで環境が変わり人付き合いが減った人を、どうやってつながりを取り戻すかのコミュニティの問題も語られた。
これらを踏まえて藤沢氏は、特に期待される業務として「産業支援」「交流人口増加」「コミュニティ支援」「連携支援」の4つを挙げた。
WORK FOR 東北の就業実績は、事業開始2年で被災3県に135名が赴任(2016年2月時点)。活躍事例として、外資系コンサルタントの経験から商店街の再興計画の策定・遂行に携った人や、広報の経験を生かして情報発信を整備した人、総務経理部門マネージャーの経験を生かして事務局長として支援員をまとめている人などが紹介された。
会場からはいくつも質問が飛んだ。「求められている人材の、震災直後との違いは?」という質問には、「ここまでの5年は、町を作っていく建設などが求められた。これからは、町ができた先の、商店などビジネスでの知見が求められている」との回答がなされた。
また、「仕事のやり方で、東北が東京と違う点は?」という質問には、「東京などでは仕事とプライベートで人付き合いが分かれているが、東北は比較的、境目が低い。そうした付き合いを楽しめる人が長続きしている」との回答だった。
藤沢氏は最後に「ビジネスを作ることが重要。そうでないと復興につながらない」として、「東北での仕事を人生の選択肢の1つに考えてほしい」と参加者に呼び掛けた。
民間企業で普通に仕事をしてきた人なら活躍の場がある
WORK FOR 東北での赴任の実際についてのパネルディスカッションも開かれた。運営側としてはWORK FOR 東北 事業統括の青柳光昌氏が登壇。実際に東北に赴任した側としては村上忠範氏(石巻市6次産業化・地産地消推進センター事務局長)と森田貴之氏(浪江町役場・教育委員会事務局学校教育係)が登壇した。モデレーターは、ビズリーチの加瀬澤良年氏。
村上氏は陸前高田出身で、震災の時には電機メーカー社員としてサンパウロにおり、異動で帰国してからセカンドキャリアとして応募した。一方、森田氏は名古屋市出身で、直接は東北にゆかりはないという。青柳氏によると、これまで応募した人のうち、東北にゆかりがない人のほうが多いだろうとのことだった。
回復状況について、石巻市の村上氏は「水産業の支援をしていて、工場のハードは戻ったところ。これから売上を上げて、ハードの支払いをしていかなくてはならない。また、心の面では、仮設住宅から復興住宅に移るとまた違う環境になるので、新しいコミュニティを作らなくてはならない」と説明した。
また、浪江町の森田氏は「地域により違う。福島県でいうと、原発地域はまだ除染中。楢葉町は避難先から戻った人がごく一部で、インフラを震災前そのままに直すべきかという議論もある。避難先に生活が落ちついている人もいる」と語った。
「東北復興に足りないもの」というテーマについては、村上氏は「いちばん足りないのは販路」と回答。「石巻の水産物では、鱈、穴子、鮟鱇が売れる。ただし加工が難しいので、そこを支援した。あとは販路につながる取り組みが必要で、外から入った人の感性による販路開拓が求められている」と語った。
森田氏は、気を付けなくてはいけないこととして「若い人などで、情熱全開すぎてまわりが焦げてしまい、反感を買ったりすることもある。今までのやり方を一気に壊さずに変えていくという度合いが難しい」と注意点を挙げた。この点について青柳氏は、「ある人から『東北のあぜ道をいきなりポルシェで走っちゃだめ。最初はトラクターで』と言われた」とユーモアを引用した。
任期途中での離職状況についての質問もあったが、青柳氏によると5名いない程度という。長続きするには、「貢献したいという芯のこだわりは持ちつつ、状況のころころ変わる被災地なので『本来の仕事はまだなので、それまで観光の仕事を手伝って』ということになっても柔軟に楽しめるオープンマインドが大事」(青柳氏)とのことだった。
また、村上氏が「仕事の仕様書はあるが、あくまでガイドライン。仕事は自分で見つけるノリがあって、それがやりがいとなる」と言うと、加瀬澤氏は「ベンチャー企業みたいですね」とコメントした。
東北の現場で活躍できる人材としては、村上氏は「だんだん、復興の色をした仕事ではなく、当たり前の仕事が必要になってきている。民間企業で普通に仕事をしてきた方なら、活躍の場があると思う」と主張した。
「復興の現場で活躍することはキャリアアップになるか?」という質問に対しては、青柳氏は「なる」と断言した。「東北は日本の課題を20~30年先取りしていると言われている。そこに外からやって来て、発想からコミュニケーション力まで求められる。そうした活動をしていた実績は、東京などに戻ってもキャリアに武器となる」(青柳氏)。
最後に3人から来場者に一言ずつメッセージが贈られた。青柳氏は「東北にはみなさんのキャリアを発揮できる現場が絶対ある」、村上氏は「地方は食が豊かでうれしい(笑)。民間と行政の設定で貢献ができてやりがいがある」、森田氏は「いまの東北だからできる規模の案件も体験できる」と、会場にエールを送った。