レビュー
Wi-Fiが途切れる台所でYouTubeがサクサクに、速度は最大7倍へ! IPoE IPv6とメッシュネットワークに両対応のWi-Fiルーター バッファロー「WRM-D2133HP」を試す
2018年12月12日 06:00
スマホ、PC、Fire TV StickやChromecastなどの映像表示デバイス、スマートスピーカー、そして体重計……。いずれも我が家でWi-Fi(無線LAN)接続している機器だ。年々台数が増え、当然Wi-Fi親機に求めるスペックも高くなり続けている。
筆者の悩みは、自宅内のとあるスポット、具体的には“台所”で、どうしてもWi-Fi電波の届きが悪いことだ。これに効きそうなのがメッシュネットワーク対応のWi-Fiルーターなのだが、最近増えていて、我が家にも導入しているIPv6 IPoEのネット回線では使えないことが多かった。ただ、バッファローが10月に発売したAirStation connectの新モデル「WRM-D2133HP」「WEM-1266」なら、比較的リーズナブルに、このハードルを越えられそうだ。
もはやWi-Fiのない生活は考えられない
インターネット回線に関する考え方は人それぞれだと思うが、筆者は「自宅には光ファイバー回線を絶対引くべき」派だ。スマホの通信速度は年々上がっているとはいえ、やはり通信量あたりの料金はそれなりにかかる。筆者がメインで使っているスマホの履歴を覗いてみると、直近1カ月のWi-Fi通信量はなんと84GBにも達していた。ほかにも、Amazonの「Fire TV Stick」を使ってテレビで映像を見る機会が急激に増えているので、我が家全体の月間通信量は100GBを軽く超えるはずだ。となれば、月5000~6000円の料金で光ファイバー回線を契約しても、それほど惜しくはない。
つまり、我が家では、もはやWi-Fiのない生活など考えられないわけだ。
1階60平方メートル、2階40平方メートルの一軒家でルーターから一番遠い“台所”
しかし、である。どうも最近台所でWi-Fiの繋がりが悪い。特に映像アプリの利用中に、それを感じる。朝食を食べたり、ちょっとした家事をこなす間、スマホのYouTubeアプリを立ち上げ、お気に入りの動画をBGM代わりに再生したいのだが、Wi-Fi接続がどうにも切れてしまう。スマホをテーブルに置くか、窓際に置くか、まるでラジオの感度調整のごとく試してみるのだが、どうにも決定打がなかった。
もちろん、こういった現象は家の間取りやWi-Fiルーターの設置場所によっても変わってくる。我が家は木造2階建ての一軒家で、30年前に建て増しているが、最も古い部分は築50年を超えている。
間取りは1階部分が8畳間×2、4.5畳間×1、風呂、そして台所。面積はおよそ60平方メートルといったところだ。そして2階部分は約40平方メートルで8畳間×2。このうち1部屋が筆者の仕事部屋兼寝室で、光ファイバー回線用のONU(光回線終端装置)も、ここに引き込んでいる。
多くの家庭では、IP電話などをセット契約する関係で、居間や玄関の近くにONUなどの機器を設置するのかもしれない。しかし我が家では、記憶はあやふやながら確か2005年前後には、光ファイバー回線であるBフレッツ(NTT東日本)を契約していた。その頃はまだまだ有線LANが主役で、仕事用のデスクトップPCと、据え置き型の家庭用ゲーム機をネットワークに繋げるには、自室にONUがあった方が、何かと都合がよかったのだ。
結果として台所は、Wi-Fiルーターの設置場所から我が家で最も遠いスポットになった。直線距離にして10メートル以上、その間に床・天井などの遮蔽物があるのだから、電波が届きにくいのも、ある意味当然だ。
IPoE IPv6の光と影~速いけどルーターの選択肢が狭い
そんなBフレッツ回線だが、回線工事を伴わないまま、増速のための契約変更などをたびたびしてきた。現在使っているのは「excite MEC光」。2018年2月に本格提供がスタートし、筆者もそれに合わせて契約した。
excite MEC光は、DS-Lite方式でのIPoE IPv6インターネット接続をサポート。既存のIPv4接続も当然問題なく通信が行える。1戸建てなので月額料金は4500円。通信速度については「最大概ね1Gbpsのアクセス区間を共用する」と説明されている。スピードテストを行うと、100Mbps超の記録が出ることは確認済みだ。
2017~2018年にかけ、IPoE IPv6でのインターネット回線は、一気に存在感を増した。混雑ポイントとなっているPPPoE接続を回避して、通信速度の低下を解消できるのがウリだ。我が家でも半年ほど使っているが、大容量ファイルのダウンロードに要する時間は明らかに短くなっており、その快適っぷりには、心の底から賛辞を送りたい。
ただ、ネット接続の環境全体からみれば、IPoE IPv6は、まだまだマイノリティーだろう。そのハードルの1つになっているのがルーターだ。NTTのフレッツ回線における従来のPPPoEとは異なる接続方式となるため、IPoE IPv6に対応したルーターを新たに調達しなければならないが、市販のWi-Fiルーター全てが使えるわけではない。国内メーカーの製品を中心に対応は広がっているので、時間がいずれ解決する問題かもしれないが、2018年後半時点では、ルーターの選択肢はそれほど多くない。
IPoE IPv6とメッシュネットワークに両対応で導入しやすいルーターがあった!
我が家の問題は、ここにある。電波の環境が悪いなら、電波の到達距離を改善する有効策としてメッシュネットワーク対応のルーターが欲しい。だが、メッシュネットワークに対応し、なおかつIPoE IPv6接続もサポートする製品が極めて少ないのだ。
こうした問題解決の一歩になってくれたのが、バッファローがメッシュネットワークのブランドとして8月に立ち上げた「AirStation connect」シリーズだ。直後に発売された「WTR-M2133HP/E2S」は、ルーターと専用中継機2台のセットで台数が多く、4万7800円の価格面もネックだった。
だが、この11月に価格を抑えた新モデルが発売された。「WRM-D2133HP」は2つの条件を満たし、一般的なWi-Fiルーターとして単体でも運用できる。それでいて、もし電波の到達具合に不満があるなら、別売りの専用中継機「WEM-1266」を後からでも追加できる。「メッシュネットワークには興味あるけど、もし1台設置で電波が十分だったら、2台目が無駄になってしまうなぁ」という心配もゼロだ。
WRM-D2133HPは、円柱形の見た目が特徴のWi-Fiルーターだ。幅90mm、高さ175mmなので、サイズ感はちょっと大きめのインスタントコーヒー瓶くらい。背面にかけて出っ張りがあり、真上から見ると真円ではなく水滴のように見える。
最大転送速度1733Mbpsの5GHz帯と、同400Mbpsの2.4GHz帯のデュアルバンドに対応する。ちなみに、WAN×1、LAN×3の有線LANはすべてギガビット対応。通常のルーターはLAN側端子が4つというケースが多いので、買い替え時には注意したい点だ。
セットアップは本当に簡単だ。特にIPoE IPv6では、接続のためのID・パスワードという概念がそもそもなく、ただONUとWRM-D2133HPのWAN側端子をLANケーブルで繋ぎ、電源を入れて数分待つだけで設定が完了する。ルーター側に内蔵された回線自動判別機能「インターネット@スタート」のおかげで、IPv6周りの設定をする必要は基本的にはない。初心者・ベテラン問わず歓迎できる部分だ。
基本的なルーターとしての能力は上々だ。有線LAN接続したデスクトップPCからスピードテストサイトの「fast.com」で平日午前11時ごろチェックしたところ、下り200Mbps程度の数字を余裕で記録。曜日や時間帯によって当然変動はあるかと思うが、同条件での最高は380Mbpsだった。
台所での速度が10Mbpsから30Mbpsへルーター移行で5GHz帯を利用した効果
肝心の電波の悪い台所での通信はどうだろうか? まず、WRM-D2133HPへの移行前の状態を説明しておくと、使っていたのは別メーカーのWi-Fiルーターだ。2016年春に、当時の最新モデルの買ったので、決して古い機種ではない。最大通信速度は5GHz帯で867Mbps、2.4GHz帯で300Mbpsというスペックである。
これに2018年6月発売のGalaxy S8(au版)をWi-Fi接続すると……、やはり通信が安定しなかった。接続できるWi-Fiアクセスポイントの一覧を確認すると、そもそも5GHzの電波が届いておらず、消去法的に2.4GHzが選ばれている。4段階の電波強度表示も、弱い方を1、最大を4としたときに1~2を行き来していて、どんな瞬間でも4を示すことは皆無だった。
スマートフォンアプリ「Wi-Fi Analyzer」でWi-Fi電波の強さを測定してみると、電力比は-78dBm。時間帯を変えて合計3回ほど前述のスピードテストを試してみたが、下り通信速度はだいたい10Mbpsで一定していた。
そこでルーターを、WRM-D2133HPを入れ替えてみる。メッシュネットワークはまだ使わず、あくまでルーター単体で動作している状態だ。ただ、それでも結構な違いが出た。スマホの電波強度表示は1~2、電力比は-84dBmとそれほど変わらないのだが、まず、何といっても5GHz帯の電波が届く。通信速度も全般的に速く、スピードテストでも下り25~30Mbpsという結果が安定的に出る。スマホを変えず、ルーターを変えるだけで、ここまで違うとは……。
やや余談だが、WRM-D2133HPのWi-Fi関連でもう1つ驚いたのは、2.4GHz帯と5GHz帯のSSIDが、全く同じ文字列に設定されていたことだ。少し古いWi-Fiルーターであれば2.4GHz帯でなら「Wi-Fi-2.4G」、5GHz帯なら「Wi-Fi-5G」などのSSIDが設定されていて、どちらの電波帯で接続しているかが分かりやすいようになっていた。
いろいろ設定をいじってみたが、SSIDそのものを任意に変更はできるものの、2.4GHz帯・5GHz帯で別々のSSIDを設定することはできないようだ。最初は「え、これじゃ困ることもあるんじゃない?」と面食らったが、意外にトラブルはない。初心者でも意識せずベストな帯域につながるようになっているわけだ。スマホのWi-Fi選択画面に表示されるSSIDが減って、むしろスッキリしたくらいだ。
メッシュネットワークの追加はアプリの指示に従うだけでカンタン
では、いよいよメッシュネットワークを試していこう。WRM-D2133HPと組み合わせてバッファローのメッシュネットワーク「AirStation connect」を構築できる専用中継機「WEM-1266」だ。形状としては置き時計が近いだろうか。背面に脚が出ている関係上、壁掛けは無理なので、机や棚に置いて使おう。サイズは130×126×73mm(突起部除く)。
Wi-Fi通信速度は5GHz帯で866Mbps、2.4GHz帯で400Mbps。背面には、ギガビット対応LANポートが1つ。いわゆる“イーサーネットコンバーター”としても機能するので、例えば無線LAN非対応のテレビなどをネットワーク接続したい場合などに重宝する。
WEM-1266をメッシュネットワークの親機に接続するには、バッファローがAndroid/iOS向けに提供している専用アプリ「connect」を使う。アプリを起動したら、まずWRM-D2133HPに添付されている設定カードに記載されたログイン用のIDとパスワードを入力する。ルーターの初回セットアップも、今回のようにPCを使わずアプリでも行える。メッシュネットワークの設定を行うときは、ホームメニューから「中継機の追加」を選ぶ。あとは基本的に、画面の案内に沿っていくだけでいい。
スマホひとつで専用中継機の設置場所を診断できる
肝となるのは、WEM-1266の設置場所だ。アプリでは、これもキッチリとアドバイスしてくれる。スマホを持って設置候補となる場所へ行き、アプリの表示を「設置可否の判定」まで進める。この段になると、(恐らくスマートフォンのWi-Fiによる電波計測結果を元に)その場所が設置に適しているかを判定してくれる。
WEM-1266の動作には、当然電源が必要なので、設置できる場所には自ずと限界がある。ただ、それでも判定結果が明確にされるのは安心できるポイントだ。場所が決まれば、あとは画面の案内に従って、WEM-1266のAOSSボタンを2秒長押しする手間があるくらい。WRM-D2133HPとの間を何度も歩いて往復する必要もない。待ち時間を含め、ものの10分もあれば設置作業は完了だ。
Wi-Fiの通信に関する設定は、ほぼ完全に自動だ。ルーターと中継機間の接続にどの周波数を使うかも、ユーザー側では選択できない。玄人からしてみると、やや物足りなさはある。ただ「とにかく分かりやすく」「通信速度は重視するが、それよりも通信可能なエリアを広く」に重きを置いているのだろう。前述の2.4GHz帯/5GHz帯での同一SSID仕様ともからむが、例えば中継機をさらに追加して経路通信用の周波数帯が変わったとき、子機側でSSIDの登録を変えずに済むメリットもある。
他社のメッシュネットワーク製品では、ルーターと中継機間の通信に使われている帯域を確認できないものもあるが、バッファロー製品ではアプリ上で確認できる。筆者の環境では、5GHz帯が選択されていた。その上で、同じ5GHz帯を共有し、専用中継機へ接続しているWi-Fi子機も2台あった。
今回は、ネットワーク内に専用中継機が1台のみだが、これが2台になると、また違ってくるはず。このあたりは、バッファロー独自のアルゴリズムが柔軟に自動設定を行っているものと考えられる。
ルーターから遠い地点での中継機導入効果は抜群!
続いて、WEM-1266を導入した効果を確認すると、これはもう花丸ものだ。スマホでWi-Fiの電波強度を見ても最大の4で、下がる場合も3まで。電力比も-43dBMと、明らかに改善。スピードテストも平均して75Mbpsを記録。あくまでも筆者の環境でのことではあるが、従来機と比較して7倍以上速くなったのだから、本当に諸手を挙げてバンザイしたい。
悩みだったYouTube再生の不安定っぷりも、ほぼ完全に解消された。冒頭で述べたように「家事をしながらYouTubeの音声を聞きたい」というのが当初の目的だったので、とにもかくにも再生さえ停まらないでくれれば、それでよかったのだが、ここまでの改善が見られるなら、ニコニコ生放送などリアルタイム性の高い動画コンテンツなどへのアクセス頻度が上がりそうだ。
なお、以下の表が自宅内の5カ所で、一部を除いて5GHz帯で接続し、スピードテストを行った結果だ。ルーターの設置してある2階自室と、その隣の2回別室、2階自室の真下である1階居間では、移行前の環境でもそれなりに速度が出ていたが、WRM-D2133HP単体への移行で、さらに高速化された。
さらに専用中継機を追加してメッシュネットワークにすると、ルーターから近い地点では、むしろ速度が低下してしまった。WRM-D2133HPが対応するのはデュアルバンドで、中継機とWi-Fi子機の接続で同じ5GHz帯を共有してしまうためだろう。高価であるがトライバンドに対応する上位モデル「WTR-M2133HP」であれば、こうした状況は改善される可能性が高い。
ただし、念のため計測した1階トイレと、今回のメッシュネットワーク導入の目的だった1階台所のルーターから遠い2地点では、移行前はもちろん、WRM-D2133HP単体の場合と比較しても、かなり高速化されていることが分かるだろう。
WRM-D2133HP+WEM-1266 | WRM-D2133HP | 以前のルーター | ||||
下り | 上り | 下り | 上り | 下り | 上り | |
地点A(1階 台所) | 58 Mbps | 40 Mbps | 27 Mbps | 11 Mbps | 7.9 Mbps※ | 0.53 Mbps※ |
地点B(1階 トイレ) | 88 Mbps | 140 Mbps | 66 Mbps | 25 Mbps | 1 Mbps | 4.2 Mbps |
地点C(1階 居間) | 72 Mbps | 120 Mbps | 160 Mbps | 140 Mbps | 120 Mbps | 69 Mbps |
地点D(2階 別室) | 130 Mbps | 70 Mbps | 170 Mbps | 300 Mbps | 110 Mbps | 130 Mbps |
地点E(2階 自室) | 110 Mbps | 67 Mbps | 160 Mbps | 370 Mbps | 120 Mbps | 120 Mbps |
※接続が極めて不安定につき2.4GHz帯で計測
電波に不満があるなら是非メッシュネットワークにトライをIPoE IPv6との両対応は貴重な存在
率直に言って、今回の検証結果には驚かされた。メッシュネットワークの威力は当然あると思ってはいたが、ここまで明確に我が家の弱点をカバーしてくれるとまでは考えていなかった。2階建てで全5部屋+台所といった家で、かつWi-Fiの電波に不満があるなら、導入を検討する価値は十分あるだろう。
これまでも単純な意味での中継機や、メッシュネットワーク製品は数多く市場に出回っている。しかし、AirStation connectの強みは何よりIPoE IPv6に対応することと、自分の環境にあわせて少しずつ拡張できる点だ。まずはルーター1台で試して、不満があったら専用中継機を買い足す。それでダメならもう1台……と、出費を抑えながら買い足していける。
また、今後懸念されるのはWi-Fi対応機器の増加だ。我が家の場合、ここ数年でChromecastやFire TVなどに加え、体重計もWi-Fi対応のものを使うようになった。IoTの時代が叫ばれて久しく、今後もこうした傾向は続くだろう。
そうなれば「風呂場に置く防水Wi-Fiスピーカーがネットに繋がらない」「Wi-Fi対応の屋外防犯カメラを置いたけど電波が……」といった、細かな不満も出てくるはず。これを見越して、まずは「メッシュネットワークの拡張ができるルーターを選んでおく」というのも、賢い選択と言えるのではないだろうか。
(協力:バッファロー)