レビュー

スマホのウェブブラウザーに新しい選択肢! 「快適・プライバシー保護」をうたうセキュリティ会社のアプリとは?

VPN機能も無料で利用可能

 昨今のセキュリティ事情から、「ウェブサイトを見ることに漠然とした不安を感じる」という人もいると思うが、そうした人を対象とした「安全・快適」を旨とした無料のウェブブラウザー「アバストセキュアブラウザ」がチェコ最大のIT企業、Avast Softwareからリリースされている。

Windows/macOS版に加えて、Android/iOS版の「アバストセキュアブラウザ」がリリースされた

 セキュリティベンダーである同社は、以前よりWindows/macOS版の同ソフトをリリースしていたが、今年の4月にAndroid版を、そして11月18日にはiOS版をリリース。PCだけでなく、スマートフォンでの利用環境も整った。

 このウェブブラウザーは基本無料で「安全・快適」を提供するのが売り文句。一部機能が制限されてはいるものの、VPN機能も無料で利用できるのも特徴の一つだ。そこで今回は、iOS版とAndroid版の双方を使用して、「セキュリティ企業が作ったウェブブラウザー」の実用性をチェックしてみた。

 セキュリティを気にしている方はもちろん、スマートフォンでのウェブ閲覧に漠然とした不安を覚えている方はぜひ参考にしていただきたい。

広告ブロックとトラッキング防止機能を標準搭載
VPN機能でフリーWi-Fiも安全に利用
Android版はさらにセキュリティ機能が充実

無料で安全・快適なブラウジングを読み込みも早く、余計に「ギガが減る」悩みも解決

 セキュアブラウザ最大の特徴はセキュリティ面とプライバシーへの配慮だ。

 まず、ユーザーの追跡にCookieを使用しないプライバシー重視の検索エンジン「OneSearch」がデフォルトで設定されている(後から変更することも可能)。また、セキュアブラウザ終了時にタブを全て削除するように設定するスイッチも比較的分かりやすいところに用意されており、不必要にタブを残さないという点に対処しているのはうれしい。なお、閲覧データは一括して削除するオプションのみとなっている。

iOS版のデフォルト検索エンジンは「OneSearch」に設定されているが、他の検索エンジンを選べるようになっている

 セキュリティに関する設定は「セキュアモード」と「セキュア&プライベートモード」が標準で用意されている。

 これらのモードでは広告やトラッキングの防止機能がオンになるほか、セキュアモードではVPNを手動で接続できる。セキュア&プライベートモードではVPNが自動接続に切り替えられ、さらに、セキュアブラウザ終了時に全ての閲覧データと履歴が自動で動削除されるようになる。

 必要に応じて、閲覧セッション中に有効/無効にする機能をユーザー側で設定する「カスタムモード」も用意されている。

用意されているのはVPNとセキュアブラウザ終了時のタブ処理の違いによる「セキュアモード」と「セキュア&プライベートモード」。モードはカスタマイズ可能

 また、モバイル回線利用時に余計に「ギガが減る」悩みを抱えずに済むよう、広告をブロックし、ウェブサイトの読み込みを高速化する機能も搭載している。最近は、悪意のある広告を経由した攻撃事例も確認されているため(関連記事「東京五輪を狙ったサイバー攻撃はどうなった? 延期後にサイバー犯罪者が次に企む攻撃とは――アバストCISOに聞く」参照)、そうした脅威や悩みに対して同機能は有効に働いてくれる。

 また、トラッキング防止機能により、ウェブサイト閲覧時のユーザーの行動に関する情報の収集を防ぎ、ターゲティング広告を表示しないようにすることもできる。

アプリインストール後、起動すると出てくる画面。画像はiOS版

 このほか、専用のアバストアカウントを通じて、異なるプラットフォーム間でブラウジング履歴とブックマークを同期できるようになっている。同期機能に関しては、現在macOS版を除く製品で実現しており、同期もエンドツーエンドの暗号化が行われているので、第三者が傍受できない安全な通信で行っている。

フリーWi-Fiも安全に使える「VPN機能」搭載有料版は30カ所以上のVPNサーバーから選択可能

 セキュアブラウザにはVPN機能が搭載されているのも特徴だ。

 VPN機能はウェブサイトに直接接続せず、通信を暗号化してVPNの接続先に転送するもので、例えば、フリーWi-Fiでアクセスポイントの暗号化が行われておらず、傍受される可能性のある環境でも安心してインターネットを利用できる。また、接続先のサーバーにもどこからアクセスしたか把握されない。

 無料のVPN機能ではインストール時に決められたデフォルトのVPNサーバーに接続するようになっており、筆者がインストールした際は米国のVPNサーバーに接続される設定だったが、このほかに、サブスクリプションサービスとして有料のVPN機能が用意されている。

 有料版では30カ所以上のロケーションからVPNサーバーを選択できるほか、Android/iOSの通信全てを暗号化するVPNツールとしての利用ができるのが魅力だ。実際に有料のVPN機能を使って海外のVPNサーバーに接続してみたところ、安定した速度が出ていた。なお、日本国内のVPNサーバーに関しては、東京と大阪を接続先として選択することが可能だ。

 有料のVPN機能に関しては7日間のトライアルがあるので、VPN利用時の速度を経験してみると良いだろう。今回試した範囲で言えば海外動画サイトのフルHD動画もストレスなく閲覧できた。

無料版ではセキュアブラウザ内で行った通信のみ暗号化される
ここからAndroid版の画像になる。有料版にするとデバイス全体でVPN機能が利用でき、アプリごとにVPN接続のオン/オフを設定できる
楽天モバイルのSIMを入れたモバイルルーターを回線に使用して、VPN機能を利用したときのインターネットの速度をテストしてみる。画像はVPN機能未使用時
有料のVPN機能をオンにして使ってみる。米ロサンゼルスのVPNサーバー接続時
シンガポールのVPNサーバー接続時。海外のVPNサーバーに接続しても安定した速度が出ていた。なお、東京のVPNサーバーに繋いだ場合は平均で24.0Mbps前後、大阪では平均で73Mbps前後の速度が出ていた

Android版はセキュリティ面で機能がより充実

 Android版はブロックチェーン企業のConsenSysが提供していたプライベートブラウザ「Tenta」を2019年に買収したところから開発したので、11月にリリースされたiOS版よりも比較的機能が充実している。

 例えば、Android版ではインターネットの住所録とも言えるDNS参照が標準で「DNS over TLS」を使用するので、なりすましや改ざんに強く、インストール時には3つのDNS over TLSを含む7つのDNS設定が入っている。さらに独立した暗証番号や生体認証を行わないと、セキュアブラウザが起動できないように設定することもできる。

Android版のモード設定画面ではDNS選択が可能で、暗号化されたDNSサーバーが使える
設定画面では現在7種類のDNSが選択でき、うち3つが暗号化DNSサーバーだ
Android版の設定画面。セキュアブラウザの起動に暗証番号を設定すれば、他人からの情報盗難を防げるだろう
PIN入力画面。セキュリティ的に一番厳しい設定では、スリープ解除の度に入力することになる

 以上、紹介したようにセキュアブラウザは対応するプラットフォームが一通りそろい、無料でもセキュリティ面やプライバシー保護の観点からお勧めできる製品に仕上がっている。このレビューで気になった方にはぜひ試しに使っていただきたい。

[協力:アバストソフトウェアジャパン]