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「個人飲食店に特化したクラウド会計」ってどんなもの?分析機能も備えるカシオ「HANJO 会計」とは

HANJO 会計」のWebサイト。月額利用料は980円だが、登録の翌月末までは無料で試用できる

 2月16日から確定申告がスタートする。

 確定申告といえば、個人向けの「青色申告ソフト」や「青色申告サービス」が多数出ているが、そうした汎用サービスではなく、なんと「個人飲食店向け」に特化したクラウド会計サービスがあるのをご存知だろうか?

 カシオがサービスする「HANJO 会計」というサービスがそれ。確定申告に便利な機能は当然押さえつつ、飲食店にありがちな悩みを解決したり、経営状況をサポートする機能があるのがウリ。

 「ついついどんぶり勘定になってしまう……」という人も多そうな個人飲食店だが、「特化型クラウドサービス」では何が提供され、何が便利なのか? サービスのポイントなどをお伺いしつつ、その基本を紹介してみたい。

 お話をお伺いしたのはカシオ計算機株式会社のシステム事業部 開発営業統轄部 第四開発部 部長の西谷 耕司氏だ。

個人飲食店の経営者のお助けマン「HANJO 会計」

システム事業部 開発営業統轄部 第四開発部 部長の西谷 耕司氏
HANJO会計のメニュー画面、Webブラウザで操作する
日報や就業管理の機能もある

 さて、そもそも「HANJO 会計」とは何なのか?

『HANJO 会計』は『個人経営の飲食店向けクラウド会計サービス』です。

 経理や会計は本来、経営者にとって最も身近な業務ですが、一方で、やはり面倒でもあります。そこで、経理を“カンタンで身近にする”ことで個人事業主や小規模法人の経営者を支援したいと思い、生まれたのが『HANJO 会計』です。

 例えば、お店を閉めた後、ゆったりした気分で、気軽にその日の振り返りができる、というイメージを考えていて、色使いや画面デザインもそれに合わせたものになっています。また、日報に便利なアイコン付きのメモ機能や従業員の勤怠管理、経営支援ツール(後述)も付いています。もちろん、会計サービスとして、青色申告書や確定申告書、消費税申告書の作成にも対応し、しっかりと利用できるようになっています」(西谷氏)

 つまり「HANJO 会計」は個人飲食店の経営者をサポートするお助けツール、ということという。そして、興味深いのが、“個人飲食店の経営者を助ける”機能。具体的には、以下のようなことだそう。

・飲食店を想定した経営分析(経営Navi)機能を持ち、飲食店を想定した指標提示ができる

 一例としては、飲食店経営で重要な指標の1つである「FL比率」(売上高に占めるFood(食材費)とLabor(人件費)の比率)を簡単に出力することができるとのこと。「このFL比率は、利益が多い飲食店では50%程度になっていることが多く、逆に65%以上だと体質として高コスト、という判断になる」(西谷氏)とされる。

飲食店を想定した指標を提示できる経営分析機能

・飲食店経営者向けのアドバイスをしてくれる

飲食店経営向けのアドバイス機能の例(1)

 状況に応じて「居酒屋リピート率アップのポイント」「忘年会・新年会の利益を次の集客に活かす」「原価率コントロールの手法」「客単価を無理なくアップできるメニューの改良法」など、様々なアドバイスが可能という

飲食店経営向けのアドバイス機能の例(2)

・給与を計算するサービス付き。“まかない”(食事)の記録も可能
 連動する「HANJO給与サービス」を使うことで、タイムレコーダーと連携して「まかない」を記録する機能があり、会計サービスまで連携して自動記帳することもできるという。

タイムレコーダーには「食事」メニューもある
タイムレコーダーの最新アプリではFelicaリーダーによる勤怠処理に対応。SUICAなどをかざすことで出勤や退勤の処理が行える。

 ちなみに、他の「クラウド会計サービス」との違いは、「“お店の方が毎日入力する”という手間をいかに軽減するか、を考えて作っている」(西谷氏)点。

 一般的に、会計サービスは入力項目が多くなりがちだが、例えば、対応するカシオ製レジを使えば、その日の売上や入出金などを自動的に記帳。先述した勤怠や給与以外にも、POP作成も別サービスとして追加できる。

 また、「HANJO 会計」に必要なのは、基本的にはパソコン(PCでもMacでもOK)とWebブラウザだけ。

 iPhoneまたはAndroidがあれば、レシートなどを写真で入力するなどの便利な機能が使えるほか、プリンタがあれば帳簿や給与明細が印刷可能(PDFでも出力可能)、さらに、カシオ製の一部のレジと組み合わせると、売り上げを自動で記録したり、従業員のタイムレコーダーとして使ったりするなどもできるとのこと。

 なお、サービスのコストは月額980円。登録の翌月末までは無料で試用できる、というシステムだ。

ポイントは「時短」、70分が10分に?飲食店向けのプリセットや銀行口座/電子マネーの自動取り込みにも対応

 さて、個人飲食店の経営者はなかなか忙しいもの。

 そこでキーになるのが「時短」。これは、「HANJO 会計」のコンセプトでもあるそうで、様々な「時短ポイント」を備えているという。

 どれぐらい時短できるかについては人によるものの、「例えば、Excelで入力する場合、手馴れた方でも1取引あたり40秒前後はかかってしまいます。つまり、100取引で70分かかるわけですが、『HANJO会計』を活用すれば、(取引内容にもよるものの)これを10分にできる、と考えています」(西谷氏)という。

 このほか、役所への申請時期を知らせてくれるサービスも用意されている。

【時短ポイント】

300以上の取引パターンを網羅、「ありがちな出費」は選ぶだけで入力できる

→「食器を購入」や「調理家電を購入(10万円未満)」など、飲食店でありがちな出費は事前登録済み。もちろんユーザー登録もできるとか。

支出の選択画面
銀行口座の取り込みは「推測機能」付き

→銀行口座の入出金は自動取り込みが可能。ただ取り込むだけでなく、パターンや金額などから「これは水道光熱費」「これは電話代」など、AIが自動で推測、仕訳する。「ユーザーは確認するだけでよくなっている」とのこと。

文房具や洗剤も電子マネーで買えば、自動で取り込み可能

→コンビニでの購入にも電子マネーで買えば、そのまま記帳できる

レシートを撮影して入力できる

→レシートをスマホアプリのカメラで撮影し、日付・金額・購入したものを読み取り、データ化できる。

その日の売上・返品や入出金などを自動的に記帳(対応レジ使用時)

→「HANJO 会計」と連動できるレジを使うと、売上・返品や入出金を自動で記帳できる

給与や「まかない」などを自動記帳

→「HANJO給与」のサービスにも加入すると、これらも自動記帳される。

固定資産登録もOK

→種別の選択が難しい固定資産も、「飲食店によくある固定資産」がメニュー化されており、選ぶだけで手軽に入力できる。

固定資産の登録例
取引を複写して入力

→取引の表示・訂正メニューから同種の取引を複写して入力することができる。

一括入力

→一括入力機能は、「定期的な取引が多く、伝票がたまりがちな飲食店の事情に配慮して機能設計した」(西谷氏)そう。勘定科目や取引先などを共通にして、日付と金額だけを入力することで、入力の手間を最小化できる。

経営に悩んだときに相談できる経営分析機能とは?

「個人経営の飲食店に向けたサービスがある」「時短できる」この2つ以外に、「HANJO 会計」にはもう1つの特徴がある。

それは、お店の経営をサポートする「経営分析」だ。こちらの経営分析は大きく分けると、「日報(日誌)」と「分析」の2つの機能に分かれており、前者はまさしく日報をデジタル化するもの、後者は前年との比較や資金繰りをサポートする機能だ。

【日報機能について】
日報は、日々の勤怠や収入、支出、日々気付いたことを記録してくれるものです。ここで記録した収入、支出は会計記帳され、勤怠は給与サービスの勤怠記録として登録されますので、毎日記録しておくと、月末や期末にまとめる手間がはぶけますよ」(西谷氏)

日報機能の画面例

【分析機能について】
経営面で重要な指標をグラフ表示し、前年の同時期と比べてどうだったかを見ることができます。また資金繰りに関して、(記帳した時点で判明している)資金を入力し、毎日の記帳を行なっていれば、月末の残金予想額を教えてくれます。この資金繰りのサービスは開業したばかりの飲食店さんに特にオススメしたいですね。というのも開業からしばらくは資金繰りに行き詰まることも多く、先にシミュレーションできるんですから」(西谷氏)

分析機能の画面例

「飲食店の繁盛を応援したい」

 さて、そうした「HANJO 会計」だが、基本は「飲食店の立場でお店の運営を支援するサービスを作りたい」(西谷氏)という思いから生まれてきたものという。

レジの分野では、当社のシェアがトップで、クラウド型サービスも10年前からやっていたため、様々なお客様にお話をお聞きしてきたのですが、夢を実現するために自分のお店をもったものの、経営を軌道にのせるため、様々な苦労をされている、というのがとてもよく見えてきました。そうしたお客様を見ると、やはり心から応援したくなるんですね。そのために、飲食店にとって使いやすく便利に、また、経営改善などもできるよう、特化したサービスを作った、という経緯になります」(西谷氏)

 そして、そうした流れで興味深いのが、「HANJO 会計」と同じブランドを持った飲食店の経営総合ポータルサイト「HANJO TOWN」の存在だ。

税理士や労務相談、会社設立サポートなどのほかに、農家との直接取引や集客コンサル、果ては店舗の覆面調査まで、ありとあらゆるサービスが網羅されている
ちなみにHANJO 会計に関する解説書も発売中

 このサイトでは、飲食店経営に関するコラムやセミナー情報、売上シミュレーションなど、飲食店をサポートする情報を多数掲載しているのはもちろん、カシオ以外が提供するサービスも紹介されている。

 面白いのは、税理士や労務相談、会社設立サポートなどのほかに、農家との直接取引や集客コンサル、さらに意外なところでは店舗の覆面調査まで、ありとあらゆるサービスが網羅されている点。まさに「飲食店を全面的に応援していきたい」という思いが結実したものともいえそうだ。

 ちなみに、西谷氏によると、今後は会計だけでなく、「HANJO TOWN」に見られるような経営面でのサポートやアドバイスもさらに強化、意見交換できるフォーラムのようなものも追加して、「経営のお供として経営者や従業員の皆様に更にお役に立つサービスにしていきたい」という。

 ただの「クラウド会計サービス」ではなく、「特化型クラウド会計サービス」である「HANJO 会計」だが、「特化型」を活かした発展の方向も模索しているといえそうだ。

(協力:カシオ計算機)