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国や自治体の「コロナ対策」支援や補助金、どう選ぶ?中小企業庁に聞いてみた!
融資>延納>補助金の順にチャレンジしてコロナの影響を乗り越えろ!
2020年4月24日 09:32
新型コロナ禍で事業環境が悪化している昨今だが。国や自治体は、事業者に向けた支援策を多数打ち出している。フリーランスや個人事業主を含め、事業を営んでいる人なら「利用したい」と思っている人も多いだろう。
しかし、こうした融資や補助金、助成金などは様々な手続きが必要で、経験がないと「何をどうしていいのかわからない」となってしまいがちだ。そこで今回、経済産業省でコロナウイルスに関する中小企業支援を担当している中小企業庁 総務課 総括課長補佐の茂木高志氏にお話をお伺いした。
今回の支援は「今まで支援を受けたことがない人」を含め、幅広い層に利用してもらうべく用意されたもの。本記事の内容は、個人事業主やフリーランスでも幅広く活用できると思うので、気になる方はぜひご一読いただき、しっかり支援を受けていただければ幸いだ。
なお、「実際に申請する側」の視点として、Seven Rich法律事務所 代表弁護士/弁理士の石原一樹氏にもお話をお伺いした。末尾にまとめているので、こちらも参考にしてほしい。
ちなみに、知りたいポイントは以下3つだと思う。
ーどんな支援策があるのか
ー何を準備すればいいのか
ーどれぐらいの手間なのか
本記事では、可能な範囲でそれを解説してみたい。
【ご注意】
この記事は、記事執筆時点(2020年4月20日)の情報に基づいたものです。
支援・補助金制度などは、閲覧時点と異なる場合があります。
本記事は、支援・補助金制度が変わっても、できるだけ参考になるよう、配慮して制作しましたが、正確な情報は、必ず経済産業省のWebサイトなどから入手するようにしてください。
(1)融資>(2)延納>(3)給付金の順に支援を受けよう!
それでは本題に入っていきたいが、実は、国や自治体からの支援策は日を追うごとに追加され、手厚くなってきている。
これはとてもありがたいことなのだが、混乱してしまう原因でもある。茂木氏に最初にお伺いしたのは、様々な支援策に対する考え方だ。
「売り上げが減ってしまっているので、手元資金の確保が最重要だと考えています。とにかくお金を借りられる方は、無利子融資でまず借りてくださいということです。それから、税も社会保険料も公共料金も、延納を可能にするので支出を減らしてください。それでも、諸々の支払い負担でどうにもならない方には200万/100万円の現金をお配りする、というセットメニューを用意しています。皆さん躊躇なく使ってください」(茂木氏)
つまり、「 融資>延納>給付金の順で支援を受ける 」ということだ。このアドバイスですっきりするのではないだろうか。
利用できる支援策は、経済産業省のWebサイトから2クリックで飛べるところにパンフレットとしてまとまっている。現在の公開場所はここ。この記事を印刷物で読む方のために補足すると、経産省のトップページから、「注目ワード」の「新型コロナウイルス対策」を選択すると、「支援対策パンフレット」として公開されている。
ちなみに最初のパンフレットは10ページくらいだったそうだが、いろいろな省庁の支援策を集めているうちに増え、現在(4月20日)は64ページにもなっている。
以下、解説していこう。
どこへ相談したらいいのか
もろもろの相談をどこにしたらいいのか、というのは第1章に掲載されている。
気になる項目があったら、そこに表示されているQRコードを読み込み、表示されたURLにアクセスすれば、連絡先などを確認できる。
資金繰り支援内容一覧
第2章には資金繰り支援がいろいろ載っている。
中でも、今一番使われているのが、上限1億円又は3000万円で無利子(3年間)、担保なし、元本返済も5年間まで免除される融資だという。
以前は日本政策金融公庫と商工中金で扱っていたが、補正予算が成立すれば、早ければ5月以降にも、民間金融機関でも無利子融資ができるように拡充される。
とはいえ、複数のところが様々な内容で異なる名前の支援策を打ち出しているので、申請経験者でも内容が把握しにくい。そんな時は「資金繰り支援内容一覧表」を参考にしよう。売上高の減少幅や事業規模を辿ると、利用できそうな資金繰りの支援がわかるチャート図だ。当たりを付けたら、書いてある相談窓口にコンタクトすればいい
持続型給付金について
第3章にあるのは4月7日に発表された「持続化給付金」。
過去に例のない現金支給で、自粛によって店舗を閉めた場合など、売上が半減した月のある事業者が対象だ。店を閉めていなくても、売上が半減していればOKで、法人ならば200万円、個人事業者でも100万円まで給付される。中小企業政策は、通常、会社や個人事業主が対象だが、今回は医療や農業、NPO法人、社会福祉法人も含め、かなり幅広い業種が対象になるという。
なお、売上が減った分以上に支給されることはなく、「前年の総売上(事業収入)-(前年同月比▲50%月の売上×12ヶ月)」という計算式がある。売り上げが半減した月のある事業者は計算してみよう。ただし、「実際は、多くの事業者が満額支給されることになるだろう」とのこと。業態によって、減収のピークがいつになるかは変わるので、計算に使う月は選べるようになっている。
「持続化給付金」は何にでも使える給付金なので、注目を集めている。しかし、その窓口体制ができるのは、補正予算が国会審議で成立、申請システムを稼働してからだ。4月の最終週に具体的な応募要項を出し、補正予算が成立次第、受付を開始する予定だという。ゴールデンウィーク明けには給付を始めたいそうだ。
こうした流れのため、準備は早めをお勧めしたい。
必要になるのは、今年提出している確定申告書のコピーと収入が落ちた月の事業収入額を示した帳簿。会計ソフトを使っていれば出力すればいい。「様式は問わない」ともあるので、大学ノートに売り上げを記載しているならそれのコピーでもいい。あとは法人の場合は法人番号、個人事業主の場合は本人確認書類だけでOKだ。
パンフレットには、今後、変更や追加の可能性があると記載されているが、今のところは、必要書類を増やす予定はないとのこと。申請はインターネット経由の電子申請で行うが、電子申請に慣れていない人のために、全国に数百のサポート窓口を作って対応するそう。
コロナウイルス対策のための設備投資支援
第4章では、コロナウイルス対策として換気や消毒などの設備投資を支援する補助金関係が紹介されている。
雇用調整助成金について
第5章では、最近よく耳にする「雇用調整助成金」が紹介されている。
これは、「従業員に休業してもらうと、休業手当が国から出る」というもの。人件費を補填できるのがありがたい制度だ。ただし、ちょっと申請が難しいのがネック。
ライフライン等支払い猶予について
6章までいくと、税や社会保険料、電気ガス料金などを延滞税などが発生せず猶予する制度が紹介されている。
支払うものを猶予することで、資金繰りに余裕を持たせることが目的だ。
このように、パンフレットや省庁のホームページには詳細な情報が掲載されている。
しかし、申請の経験がないと迷ってしまうのも当然だ。その場合は、 とにかく目当ての支援を提供している省庁や組織を調べ、問い合わせをしてみることが近道 だという。
「もし申請経験がなく、何をしていいかわからなければ、まず最寄りの商工会・商工会議所、国が運営するよろず支援拠点といった相談窓口に電話するのがいいと思います」(茂木氏)
民間金融機関の無利子融資については決まったばかりであるため、5月に入ってから相談するのが良い そうだ。普段からお付き合いのある民間金融機関で3000万円まで、そのうち3年間は無利子で融資を受けられるようになるので、是非試してほしい。
また、速攻で動いてしまって損することもないという。
例えば、3月の段階で筆者は経営している飲食店で融資を受けた。その時の利子や据え置き期間などの条件より、今の条件の方が有利だったりする。これは「そんなものだろう」と諦めていたのだが、「役人言葉で遡及適用という言葉があるのですが、日本政策金融公庫の場合、1月29日以降まで遡って新しい制度を利用できるようにしています」と茂木氏。利子などの条件が後で優遇されるようになった場合、遡って適用してくれるとのことで、ありがたい。
政府はものすごく手厚い支援をしてくれている。コロナウイルスの影響で被害を被った分の一部でも支援してくれるのはありがたい。せっかく用意してくれたのだから、必要な人は窓口に相談してみることをお勧めする。
「申請する側からみたポイント」を弁護士に聞いてみた
とは言え、実際に申請する際に注意すべきポイントなどは、あらかじめ予習しておくとスムーズだ。
そこで、Seven Rich法律事務所 代表弁護士/弁理士の石原一樹氏に、融資や助成金を初めて申請をする人へのアドバイスいただいた。
「申請書類を書く際は、必ず丁寧な記入例があります。それを見ながら書けば、難しいことはありません」と石原氏。
また、融資や補助金などを出すときは、審査に通るかどうかの前に、そもそも要件を満たしているかや申請する際の添付書類忘れに注意すべき、と石原氏はアドバイスする。
例えば、「1人に10万円給付」で知られる「特別定額給付金」についていえば、総務省のWebサイトに詳細が書いてあるうえ、よくある質問も公開されているので、これをチェックするといいだろう。
とは言え、慣れていないなら、それを読んでも分からないかも知れない。そんな時は電話して質問すればいい。ただし、問い合わせが殺到しているので繋がりにくい可能性もあることは頭に入れておこう。
各種申請には複数の書類を添付する必要がある。
なお、スムースな手続きのポイントは「必要な書類をそろえておくこと」という。
「納税証明書や印鑑証明、住民票など、その申請に必要な書類はWebサイトやパンフレットに明記されています。有効期限のチェックなども含め、きちんと添付書類が揃っていることを確認しましょう。抜けていれば、手続きが進まず、かえって手間がかかってしまいます」(石原氏)
ちなみに、個人事業やフリーランスでも、他の人を雇用しているなら、利用できる支援策はぐっと増える。前出の「雇用調整助成金」などは、休業中の人件費のほとんどをもらえるので、とてもありがたい。しかし、必要な書類は支給要件確立申立書・役員等一覧の「共通要領様式第1号 様式特第6号」や(休業等)支給申請書の「新型コロナウイルス感染症関連 様式特第7号」など6種類。書類名だけ見て心が折れそうだが、必要なのだからきちんと準備するしかない。
また、「ただでさえ仕事が土壇場にあるので手が回らない」というのであれば、プロに手続きを依頼するのも手。その場合の手数料は、「獲得できた融資や助成金の金額のうち、一定割合」としているところが多いそうだが、中には法外な手数料を取る場合もあるので注意が必要という。複数の事務所を比べたり、信頼できる人から紹介してもらうなど、慌てず選ぶことをお勧めしたい。
「融資や補助金は税理士や公認会計士、助成金は社労士が詳しいです。どちらも、コンサル的に手がける行政書士もいます。まずは、問い合わせすれば、対応可能かどうかや手数料などを教えてくれるはずです」(石原氏)
また、最寄りの商工会・商工会議所や国が運営するよろず支援拠点では無料相談も行っているので、気軽に試してみてみよう。
以上、かなりの駆け足だが、多岐にわたる新型コロナウイルス関連の支援策を利用する際のアドバイスだ。次回は、実際に筆者が経営する会社で2500万円の低利子融資(最初の3年間は無利子)をゲットした事例を紹介したい。