ニュース

新型コロナ禍の「資金繰り」、利用できる公的支援策やFintech各社の支援サービス

Fintech協会が「ファクタリング」「売掛保証」など紹介

一般社団法人Fintech協会が、記者向けの勉強会をオンラインで開催した

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴い、日本経済は大きな打撃を受け始めている。資金繰りに悩む個人事業主や中小企業も少なくない。

 個人・法人向けに資金繰りの支援を行っているOLTA株式会社には、「イベントが延期され、取引先からの入金が遅れる」「中国以外の仕入れ先に変更することになったが、実績のない先との初回取引ゆえ、現金先払いを求められた」「収入が減っている下請けに早く報酬を支払ってあげたいが、自分も手元現金がない」といった声が届いているという。

 そうした状況の中、一般社団法人Fintech協会が3月26日、「新型コロナ感染拡大対応/企業の継続的な活動を支援するFintechサービス」をテーマに記者向け勉強会をオンラインで開催した。

 ここでは、今まさに資金繰りに苦しむ個人事業主・中小企業が利用できる公的支援・民間支援を中心に紹介する。

「リモートワーク/テレワーク」「資金繰り」への公的支援・民間支援

 Fintech協会代表理事でfreee株式会社執行役員の木村康宏氏から、中小企業への支援策の全体像が説明された。

 企業における新型コロナウイルス感染症への対応のポイントは、クラスター発生のリスクを避けるための「リモートワーク/テレワーク」と、需要の落ち込みに耐えられるような「資金繰り」の2つ。それぞれについて国や民間事業者により支援策が打ち出されている。

 リモートワーク/テレワーク対応をするために必要なのが「電子化」であり、主な支援策としては「IT導入補助金」(経済産業省)や「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」(東京しごと財団)などがある。

 資金繰りを考える際にまず必要になってくるのが、資金繰りを把握するための可視化であり、主なものに「BFM」や「クラウド会計」といったサービスが挙げられる。BFMとは「Business Financial Management」の略で、金融機関が中小企業向けに提供する資金管理サービスのこと。複数の口座情報を一元管理できるようになり、資金の見える化が可能になる。

 資金繰りを可視化した上で考えたいのが、入りを増やし(前倒す)、支出を増やす(後ろ倒す)方法。

 「入りを増やす・前倒す」ための支援として、公的なものだと信用保証協会の「セーフティネット保証4号・5号」や日本政策金融公庫の「経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)」などがある。経済産業省が発行しているパンフレット「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」に情報がまとまっているので、一読しておきたい。

 民間の支援としては、例えば三菱UFJ銀行は期間限定の特別金利優遇を実施したり、口座保有者向けに最短2営業日でスピード融資を実施するオンラインの融資サービスを行ったりしている。Fintech事業者による支援の詳細は後述するが、100万円単位の少額からの融資やスピード融資、明細データを使った自動審査など、個人事業主や中小企業が利用しやすいものが多くある。

 「出を減らす・後ろ倒す」ための支援としては、公的なものは厚生労働省・都道府県労働局による「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金(労働者を雇用する事業主向け)」が挙げられる。銀行や生命保険会社による民間支援としては、支払い猶予や条件変更等のための相談窓口の設置などが行われている。

売上入金サイクルを早める「OLTA」の取り組み(オンライン型ファクタリング)

 Fintech協会幹事長でOLTA株式会社取締役CSOの武田修一氏からは、売上入金サイクルを早める取り組みとして「オンライン型ファクタリング」について紹介があった。

 通常、個人事業主や中小企業が取引先に請求書を発行して支払いが実行されるのは1~2カ月後になり、この点が資金繰りを苦しくさせている原因の1つだ。その解決策として、売掛金を受け取る権利をファクタリング事業者に売却することによって、運転資金に変えるのが「ファクタリング」と呼ばれる資金調達手法。最短で即日、多くの事業者で1週間以内に入金される。いわば「借りない」資金調達手法といえるサービスだ。

 利用者から見て、オンライン型ファクタリングサービスの主なメリットは以下の3つ。

  • オンラインなので物理的・時間的に便利(他の調達手段だと間に合わない)
  • 運転資金の不安が解消され積極受注が可能に
  • オンライン型(Fintechベンチャー運営)は素性がはっきりしており安心

 特に新型コロナウイルス感染症の影響は、先行きが見えにくい。そんな中で借金とは違い心理的な負担がなく、売掛金の不払い、支払遅延のリスクを回避できるのは心強い。

 現在、オンライン型ファクタリング事業者は、各社が知恵を絞りサービスの拡大に努めている。例えばOLTAは既存のサービスの中では支援が難しかった飲食店向けの早期入金サポートをイジゲン株式会社と連携することで可能にした。また、「FREENANCE by GMO」はフリーランス向けに即日払いを低手数料率・高限度額で利用できるようにしている。

 武田氏からは「必ずしもファクタリングだけが資金調達の方法ではないと考えている。公的な支援や銀行からの融資がまずはあって、それでは間に合わなかったり、断られてしまったりしたときに、スピーディーに対応できるオンライン型ファクタリングを組み合わせていただくのがいい」といったアドバイスもあった。

倒産・未入金から中小企業を守る「ラクーンフィナンシャル」の取り組み

 株式会社ラクーンフィナンシャルでは、新型コロナウイルス感染症の影響で増加する倒産・未入金から中小企業を守る取り組みを行っており、代表取締役社長の秋山祐二氏により説明が行われた。

 ラクーンフィナンシャルの顧客の多くは、小売業・飲食業・サービス業などに対して商売をしている中小企業。「URIHO」という取引代金を保証するサービスを提供している。取引先の倒産や未入金があっても、取引先に代わり代金を支払ってもらえる。いわば保証人のようなサービスで、相手に知られることなく契約できる。料金は定額制で月額9800円から、ネットで簡単に申し込みができ、倒産時だけでなく支払い遅延にも対応しているのが特徴だ。

 問い合わせが増えており、3月18日からは無料のオンライン相談も開始。サービスに関する情報提供のほか、危機時の売掛金回収の注意点や、新規取引時の与信の考え方など、売掛金にかかわる相談もできる。

未入金リスクを100%保証し、売掛金を早期資金化する「MF KESSAI」の取り組み

 前述したOLTAやラクーンフィナンシャルと同様のサービスを実施しているのがMF KESSAI株式会社。同社代表取締役の冨山直道氏が紹介した。

 掛け売りに伴う未入金のリスクを100%保証するサービスとして「MF KESSAI」を提供。依頼主は、請求内容をクラウド上で入力するのみでいいことから、テレワークを実施している企業や細々した請求業務の代行を依頼したい企業にも利用されているという。

 売掛金の早期資金化サービスとしては「MF KESSAI アーリーペイメント」がある。OLTAのサービスと同様に売掛債権を同社に売却することで、最短2営業日で資金化が可能になる。

 新型コロナウイルス感染症を受けて、サービス手数料の値下げなど期間限定のサポートも実施中とのこと。詳細は以下のリンク先をご覧いただきたい。

確定申告のオンライン相談やVCと繋ぐサービスを展開する「マネーフォワード」の取り組み

 株式会社マネーフォワードの取り組みについて、同社の執行役員でFintech協会理事の神田潤一氏から説明が行われた。

「マネーフォワード クラウドコミュニティ」開設

 毎年、確定申告の時期は税務署に相談者が集中する。これを避け、新型コロナウイルスの感染リスクを避けようと、相談をオンラインで受けるサービスを開始。現在はまだβ版ではあるものの、ベテランのスタッフや税理士によるアドバイスを受けられる。

「マネーフォワード クラウド請求書」無償提供サポート開始

 リモートワーク/テレワークが推奨される現在、紙を用いた請求書の対応は足かせになる。それを解消できるのがオンラインで請求書を送付できる「クラウド請求書」。現在は、90日間無償で利用可能。

スタートアップ企業とVCを繋ぐ「オンライン面談マッチング」

 資金需要のある成長期のスタートアップ企業と、良いスタートアップの苦しい時期をサポートしたいというベンチャーキャピタル(VC)を繋ぐサービス。2週間ほどで3000件以上の面談リクエストがあったとのこと。スタートアップ企業の募集は、すでに終了している。

(3/31 11:20更新)「オンライン面談マッチング」について、発言のニュアンスを修正させていただきました。

 世界的に今もなお新型コロナウイルス感染症の拡大は止まっておらず、今後の見通しも不透明なままだ。今後さらなる支援策が出てくる可能性も高い。最新情報を得て、長期化も見据えた対応を考えていく必要がある。