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オンライン飲み会の次は「オンライン飲み屋」? 新宿ゴールデン街で広がる「オンライン営業」とは?
2020年5月1日 16:15
約280店のバーが軒を連ねる世界有数の飲み屋街、新宿ゴールデン街。夜になれば多くの日本人、外国人で賑わうこの街も、新型コロナの感染拡大を防ぐため、それぞれのお店が営業自粛を続けている。
そんな中、新しい動きとして注目されるのが「オンライン営業」だ。
まだまだ発展途上な動きだが、筆者が把握しているだけでも既に6店が定期的な営業を開始。個性豊かなゴールデン街のママやマスター、スタッフが、「飲み屋の新しい楽しみ方」をYouTubeのライブ配信などで表現している。さらに、「バーチャル横丁」を作る動きも現れた。
そこで今回は、そうした「ゴールデン街のオンライン営業」の魅力を紹介すべく、定期的にオンライン営業を行なっている6店の内容などを紹介したい。
最近は、「オンライン飲み会」も徐々に普及、「人とコミュニケーションする」ことは(この状況下でも)ある程度満たせるようになってきたと思うが、その一方、これまで当たり前にできていた「個性的な飲食店の雰囲気を楽しむこと」はほぼできなくなっているように思う。
筆者としては「オンライン営業」は、そうした楽しみ方を取り戻せる可能性を秘めている、と思っている。
お店に行けなくてウズウズしている人はもちろん、新しい楽しみを作っていきたい人や、苦境を伝えられる飲食店を応援したい人、様々な人に読んでいただき、実際に「オンライン営業」に参加してもらえればと思っている。
記事目次
▼ゴールデン街ならではの雰囲気を!
▼YouTubeのライブ配信とYahoo! JAPANのデジタルチケットを活用
▼「宅飲みでも、バーの雰囲気を味わってもらえたら」
▼オンライン営業を定期的に行なっている6店はこちら
▼「オンラインでもハシゴ酒」を目指し、“バーチャル横丁”を
▼魅力は、人と雰囲気を味わう「特別感」
▼「オンライン飲み屋」は「オンライン飲み会」にもつながっていく?
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ゴールデン街ならではの雰囲気を!「のぞき見している気分になってもらう」
ゴールデン街でオンライン営業をいち早く取り入れたのは、歌手であり、女装ユニット「星屑スキャット」のメンバーでもあるギャランティーク和恵さんが営む「夜間飛行」。
コロナ騒動以前から、営業中の店内の様子をネットで配信するというアイデアを考えていたところ、都が週末の外出自粛要請を出した3月27日に、お客を入れないオンライン営業を思い立ち、29日に実施に至ったそう。
夜間飛行は、もともと、1970年頃に開店した「桂(けい)」という老舗を引き継いでおり、配信では、その古い趣のある店内を映し出すことでゴールデン街ならではの雰囲気を発信。
また、そんな昭和の面影が残る、「ゴールデン街の古さや怪しさのようなもの」を画面に表現するために、あえて解像度の低いカメラを使用しているそう。そして、一番のこだわりは、 「のぞき見している気分になってもらうこと」 。
「こちら側が視聴者を意識しすぎたり呼びかけたりするのではなく、ママとチーママが『今日もお店は閑古鳥だわね~』とボヤいている会話を覗き見してもらうのが面白いかなと。
さらにはそのチーママが日替わりであるというのも、続けていく上で飽きさせない方法のひとつ。
あと、チャットで参加するお客さん同士が自然と会話をしてくれることもとても大事。
ママ対お客さんだけでなく、お客さん同士が会話をしに店に顔を出すというのを、リアルでもオンラインでもバーとして大切にしています」。
また、「年1、2回しか来られない地方の人もいつでも来店できる」「普段は敷居が高そうで店の扉を開けられなかったという人も入りやすい」「9席のカウンターも、オンラインであれば席数は無限」など、オンライン営業ならではのメリットも実感しているという。
YouTubeのライブ配信とYahoo! JAPANのデジタルチケットを活用収入はチャージ料と、お店の人への「1杯」
ゴールデン街でオンライン配信が広がった理由のひとつに、夜間飛行が始めたチャージシステムがある。
実際、「bar plastic model」「HIP」「MONGOLIAN DRUNK 」は、夜間飛行のシステムを参考にしたそう。
ゴールデン街では、ほとんどのお店でチャージ料(席料)がかかるのだが、夜間飛行のオンライン配信では、そのチャージシステムを視聴料として導入。
Yahoo! JAPANのデジタルチケット販売サイト「PassMarket(パスマーケット)」で、チャージ料500円を支払うと、配信開始5分前頃にメールでYouTubeの限定公開URLが送られてきて、そこから視聴できる流れだ。
そして、もうひとつ“ゴールデン街ならでは”なのが、 お店の人が飲む用のドリンクチケットが販売されている こと。
ゴールデン街では、お店の人と一緒に酒を飲みながら話したいときや、記念日などにお祝いの気持ちを表したいとき、挨拶がわりに、「1杯どうですか?」と、お店の人に酒をすすめるテクニックがあるのだが、そのためのドリンクチケットが購入できるのだ。
筆者も実際にいくつかのバーの配信に参加し、ドリンクチケットを購入。
お店の人の、 「○○さんお酒ありがとうございます! カンパーイ!」 の掛け声とともに、画面越しに乾杯。
名前を呼んでもらえることへの特別感と嬉しさがあり、ほかのお客も「カンパーイ!」と投稿してくれるのを見て、同じ店内にいるかのような一体感が楽しめた。
ただし、ドリンクチケットは購入必須ではないので、財布に余裕がないときは無理せずだ。
「宅飲みでも、バーの雰囲気を味わってもらえたら」~ツイキャスやFacebookでの営業も~
もちろん、YouTubeやPassMarket以外を活用している例もある。
「BARたちばな診察室」の店主・マリ院長が、オンライン営業を実施しているのは「お客様との繋がりを維持するため」と「スタッフの雇用とモチベーションを保つため」。
来店した事がないTwitterのフォロワーもいるため、配信サービスはツイキャスを利用。視聴したフォロワーからは、「コロナが終息したら来店したい」というコメントもあったとのこと。
「Barダーリン」の店主で、ゴールデン街にある商店会の一つである「新宿三光商店街振興組合」の理事長でもある石川雄也さんは、 「常連さんが宅飲みの際に、バーの雰囲気だけでも味わってもらえたら」 と、Facebookでライブ配信をスタート。
「Facebookなら常連さんや友達は繋がっているし無料で見られる。お互いの近況もわかるし、店を忘れないでもらえるから」。
配信そのものは無料のかわりに、キャッシュレス決済での投げ銭を用意。日々の食費を稼ぐ、という部分もあるにせよ「何よりお客さんの気持ちが嬉しく、励みになっています」という。
定期的にオンライン営業を行なっている店舗6店(2020年4月30日時点)
【夜間飛行】 (オンライン営業時は「閑古鳥」として配信)
配信スタイル:
店主であり歌手のギャランティーク和恵さんが配信。和恵ママと日替わりチーママの何気ない会話や恋愛トークが聞ける。
店舗情報のメインURL: https://twitter.com/snack_yakanhiko
料金: 「PassMarket(パスマーケット)」でチャージ料(500円)を購入。ドリンクチケット(700円)購入可。・配信方法:チャージ購入者にYouTubeの限定URLを送付
頻度: 週4日
開始日: 3月27日
【Barダーリン】 (オンライン営業時は「BAR無人遊戯」として配信)
配信スタイル:
店主であり俳優の石川雄也さんが配信。配信のためにノートを作り、毎日必死にネタ収集をし企画を考案。進行がスムーズ。
店舗情報のメインURL: https://www.facebook.com/yuya.isikawa/videos
料金: 無料
頻度: 月曜~土曜の20時~22時※不定休
配信方法: Facebook動画
開始日: 4月2日
【BARたちばな診察室】
配信スタイル:
店主のマリ院長やスタッフのトークのほか、地下アイドルのスタッフはプレミア配信で歌を披露するなど、トーク以外の部分も強化中。
店舗情報のメインURL: https://twitter.com/BarTachibanaSin
料金: 無料の通常配信と有料のプレミア配信あり
頻度: 週1~2日
配信方法: ツイキャス
開始日: 4月7日
【bar plastic model(プラスチックモデル)】 (オンライン営業時は「bar立ち寝」として配信)
配信スタイル:
普段の営業時と同じように、お客同士で会話を楽しんでもらい、その中で一人になっている人がいたら、店主の関根圭さんが積極的にその人に話しかける。
店舗情報のメインURL: https://twitter.com/barplasticmodel
料金: 「PassMarket(パスマーケット)」でチャージ料(500円)を購入。ドリンクチケット(700円)購入可。
頻度: 週4日
配信方法: チャージ購入者にYouTubeの限定URLを送付。
開始日: 4月8日
【HIP(ヒップ)】
配信スタイル:
店主の神林徹さんと、日替わりスタッフが、zoomを使いながらなるべく普段通りの店の様子を配信。
店舗情報のメインURL: https://twitter.com/GOLDENguyHIP
料金: 「PassMarket(パスマーケット)」でチャージ料(500円)を購入。ドリンクチケット(800円)購入可。
頻度: 週1日程度
配信方法: チャージ購入者にYouTubeの限定URLを送付。
開始日: 4月14日
【MONGOLIAN DRUNK(モンゴリアンドランク)】
配信スタイル:
店長のユリさんが配信を裏で見守りながら、その日のスタッフがトークを展開。昭和平成の邦楽洋楽のBGMで盛り上がることが多い。
店舗情報のメインURL: https://twitter.com/mongolian_drunk
料金: 「PassMarket(パスマーケット)」でチャージ料(500円)を購入。ドリンクチケット(700円)購入可。
頻度: 週1~2日
配信方法: チャージ購入者にYouTubeの限定URLを送付。
開始日: 4月15日
「オンラインでもハシゴ酒」を目指し、“バーチャル横丁”開設へ
オンライン営業が広がる中、新宿三光商店街振興組合では、5月上旬に、ゴールデン街のオンライン営業店をまとめたサイトを開設予定だそう。
理事長の石川さんは、「まずは、5~6店舗でスタートさせて、目標は40店舗。日本初の“バーチャル横丁”を誕生させたい」と、期待を寄せる。
夜間飛行の和恵さんも、オンライン営業の今後の展開に注目。
「ゴールデン街はハシゴ酒ができるのも魅力。ママの様子を覗きに行ったり、少し会話をしてまた別の店に顔を出したり、オンラインでもハシゴができると楽しそう。ゴールデン街に限らず、地方のスナックの強烈なキャラクターのママの店を訪ねてもいいし、全国のスナックをブックマークできたりするのも良いですね」。
魅力は、人と雰囲気を味わう「特別感」
さて、ゴールデン街で広がりつつある「オンライン営業」。実際に参加して感じた魅力を簡単にまとめてみたい。
実際に参加してみてわかったオンライン営業の魅力
(1)【人と雰囲気を味わう】
ゴールデン街はもともと個性的な店が多い。その各店の人や雰囲気を気軽に楽しめる。
(2)【迎え入れてもらえる】
チャットで参加を伝えると「○○さんこんばんわ」「○○さんいらっしゃい」と言ってもらえる。お店に迎え入れてもらえる感覚だ
(3)【こっそり参加!】
基本的にお客の顔が出ることがないので、顔出しNGの人も参加しやすい。
(4)【いっそ仕事しながら?】
ラジオ感覚で視聴することもできるので、仕事をしながらでも……。
(5)【近況を知る】
常連さんにとって気になる、お店やゴールデン街の近況を知ることができる。。
(6)【もっと知りたくなる】
人や雰囲気を気に入ったら、(店舗再開後)お店に行けば「もっと濃密」な体験ができる
(7)【秘密の場所!】
レア感がある。
(7)は、たとえて言うなら「芸能人の限定配信を見ている感覚」に近いかもしれない。
店に行かないと聞けない話や、歌ったり、楽器を演奏したり、普段見られない姿が見られたり………そうした体験をできる特別な場所。
「万人に公開されている動画配信」の感覚とはちょっと違うし、自分を迎え入れてもらえる要素もある、そして、独特な「人」と「雰囲気」………
実際に参加しないとわからない部分も大きいと思うが、なんとなくでも伝わったら幸いだ。
また、夜間飛行やbar plastic modelでは、その場にいないスタッフやお客が電話出演したり、お便りコーナーがあったり、内容が興味深いと、「どんな人なんだろう?」と想像させられるので、店で会ってみたくもなった。
チャットで発言している人たちにも、この先、店で会う日もくるだろうと思うと「オフ会」のようで楽しみだ。
「オンライン飲み屋」は「オンライン飲み会」にもつながっていく?
さて、最後になるが「オンライン飲み」といえば、昨今話題に上るのがZOOMなどのビデオ会議アプリを使った「オンライン飲み会」だ。
今回紹介した「飲み屋のオンライン営業」は「オンライン飲み会」とは異なる部分も多いが、一方で「オンラインでのコミュニケーション」という点は共通だ。
筆者もオンライン飲み会に参加することがあるのだが、例えば「時間をきめておく」(「そろそろ終了時間なので○時に閉めますよ~」と、言われると心構えができる)とか「盛り上がるネタをさらっと用意しておく」(余談だが、アイドルの配信では、心理テストやお絵描きなども盛り上がる)などは、筆者としてはオンライン飲み会に活かせそうに感じる。
いずれにせよ「飲み屋のオンライン営業」も「オンライン飲み会」もまだまだ発展途上。筆者としては、ぜひ、ゴールデン街のオンライン営業に参加して新しい楽しみ方を発見してみてほしい。また、友人や恋人を誘って一緒に参加したり、オンライン飲み会をオンライン営業店で開催するのも面白そうだ。
飲食店の苦境が伝えられる中、「オンライン営業」の動きは今後も広がっていくものと思う。前述の“バーチャル横丁”の件も含め、新しい動きがあったら追っていきたい。
赤木一之(あかぎ・いっし)
1983年生まれ。創刊15年目を迎える新宿~御苑~四谷タウン誌『ジェイジー』編集長、ムック『いまこそ行きたい!新宿ゴールデン街 最新版』(2018年発行)編集長。緊急事態宣言発令後は、新宿~四谷の人たちの近況を伝えるサイト『新宿なう』と、テイクアウト&デリバリーMAPを公開。