豊富なテンプレートから帳票を作成できる「やよいの見積・納品・請求書11」
「やよいの見積・納品・請求書11」7月8日発売、希望小売価格1万500円 |
弥生株式会社が2011年7月に発売した「やよいの見積・納品・請求書11」は、個人事業主やSOHOユーザー、中小企業を対象とした、見積書および納品書、請求書などの帳票を手軽に発行するためのソフトだ。
豊富なテンプレートが用意されており、見た目のよい帳票を手軽に作成できる。また、いったん入力した得意先名や商品は台帳に自動登録され、次回から手入力しなくても選択するだけで入力できるようになるので、日々の見積作成・請求書発行といった業務の効率化にぴったりだ。
今回はおもに個人事業主を中心とした視点で、このソフトの使い勝手について見ていこう。
●テンプレートを選んで入力するだけ。印影の自動生成などユニークな機能も
本ソフトでは、作りたい帳票をメニュー画面から選び、テンプレートを選択して入力していくだけで、見た目のよい帳票が手軽に作成できる。こうした帳票類をExcelなどの表計算ソフトで管理し、前月に発行したものを書き換えて当月の帳票を作成しているようなユーザーや、手書きで作成しているユーザーにぴったりの製品だ。
インストールおよびユーザー登録を終えて起動すると、アイコンの並んだ初期画面が表示される。画面に表示される8つのアイコンのうち、上段4つは新規作成、下段4つは作成済みデータを一覧表示するためのもので、それぞれ「見積書」「納品書」「請求書」そして「請求書」の4つが並んでいる。
「やよいの見積・納品・請求書11」のインストール画面。新製品ながらバージョンが「11」となっているのは、同社の「弥生会計11」「やよいの青色申告11」などと共通の番号となっているため | メインメニュー。初期画面には8つのアイコンが並ぶ。後述する得意先台帳や商品台帳、およびテンプレートの管理は、左列のメニューを切り替えて行う |
試しに見積書を作ってみよう。上段の左端にある「見積書の作成」というアイコンをクリックすると新規作成画面が起動し、見積書のテンプレートが表示される。あとは得意先名や自社名、商品名といった各項目をクリックし、入力していくだけだ。
ここで入力した得意先名や商品名はそれぞれ台帳に自動登録されるので、次回からは選択するだけで入力できるようになる。利用開始にあたって得意先台帳や商品台帳をわざわざ作らなくてよいぶん、こちらのほうが手間がかからなくて済み、すぐに使い始められるというわけだ。
見積書の新規作成メニューを起動したところ。テンプレートは左列のサムネイルから選択する。用意されているテンプレートは全部で13種類で、見積書については3種類のテンプレートが用意されているが、いずれも色違いであり、デザインそのものは同一 | 得意先名はクリックして直接入力する。文字数の制限はポップアップで表示される |
いちど入力した得意先名は台帳に登録され、次回からワンクリックで呼び出すことが可能。商品名についても同様だ | 自社名は最初に入力したものが次回以降も自動入力される |
商品の数量、単価を入れると金額が自動計算される。課税の有無も個別に選択できる | 行の入れ替えや挿入なども簡単に行える |
消費税の内税/外税および源泉徴収額の計算など、細かな設定が可能だ | それぞれの表示項目はオンオフが可能。得意先コードや商品コードなど、自分が使わないものはチェックを外しておくとよいだろう |
ユニークな機能として、担当者印のイメージを自動作成する機能がある。これは捺印欄にテキストで担当者の名前、たとえば「高橋」と入力すると、それをもとに印影を生成して表示してくれるというものだ。これなら印刷後にわざわざ印を押す必要もなく、またPDFの場合も出力したものをそのままメールに添付して送ることができる。自動生成された印影が気に入らなければ、外部から画像データを取り込むこともできる。
担当者の名前をテキストで入力すると、自動的に印影を生成して表示してくれる。外部イメージデータを取り込んで貼り付けることもできる |
以上の作業で見積書が完成したら、あとは印刷するだけ。標準プリンタでの印刷はもちろん、PDFへの出力も行える。また、印刷が完了すると「帳票一覧」画面でチェックボックスに印が入り、印刷済みであることが記録される。発行漏れを防止できるのはもちろん、うっかり2通送ってしまうミスも防げるというわけだ。
完成した見積書。市販の帳票への印刷も想定されており、印刷位置は細かく調整できる | 帳票一覧画面。印刷を行った帳票はチェックボックスに印が入るのでひとめで分かる |
なお、ここまで見てきたデータ入力時の操作性については、Windows標準というよりも、どちらかというと「弥生標準」とでも呼ぶべき、独特の操作性を持つ。具体的には、入力エリアを移動するとIMEの文字種が自動的に切り替わるといった、同社の「弥生会計」などと共通する挙動だ。便利な場合もあるが、ややお節介だと感じる人もいるはずなので、必要に応じて設定画面でチェックを外すなどしておきたい。
IMEはデフォルトで自動切替になっているが、人によって好みが分かれそう。必要に応じて設定画面の「環境設定」のところでオフにしておこう | 同じく設定画面の「帳票作成オプション」では、金額や消費税の端数処理の方法や、内税と外税の別を設定できる |
●帳票の切り替えにより、見積書から納品書/請求書の発行が可能
さて、いちど作成した帳票からは、それらの入力データを生かして別の帳票が手軽に作成できる。今回のように作成済みの見積書のデータがあれば、帳票の種類を切り替えるだけで、同じ内容の納品書や請求書をすぐさま発行できるというわけだ。見積書/納品書/請求書は基本的にセットになっているわけで、これらを切り替えてすばやく発行できるというのは非常に便利だ。
帳票一覧画面で作成済みの見積書を選択し、複写→請求書を選択する | 請求書が作成された。この画面で項目や金額を修正することも可能だ |
まったく別のテンプレートを選択することもできる | 領収書を出力したところ。このほか複数の帳票をまとめて請求明細書も発行することもできる |
ところで、見積書をベースに納品書や請求書を発行する際によくあるのが、見積時とは単価が変わったり値引きが発生しているというパターン。融通が効かないソフトであれば、金額の修正が認められずに見積書の段階から作り直すよう促される場合もなくはない。
しかし本ソフトでは、納品書や請求書それぞれで金額の修正も問題なく行える。もちろんこのまま放置しておくと違算になってしまうが、しっかりとしたワークフローが確立できていない個人事業主などであれば、このくらい融通が利くほうが使いやすいだろう。
●得意先台帳や商品台帳は入力データからの自動登録で手間いらず
業務用の本格的なソフトでは、顧客DBや商品DBをまず作成し、そこではじめて帳票の作成にかかれるといった手順のソフトも珍しくない。それに対して本ソフトはあくまでも帳票がメインで、そこで作成した得意先データや商品データを別の帳票にも利用できるといった、まずは帳票作成ありきという設計思想になっている。それゆえ導入のハードルも低く、これまでExcelや手書きで帳票を作成していたユーザーが、手軽に乗り換えるのに適した作りになっている。
さて、帳票にいったん入力したデータは、自動的に台帳に登録され、再利用できるようになる。前述のように帳票作成ありきではなく、一定のまとまったデータをあらかじめ入力しておくことももちろん可能だ。またCSVデータの取り込みも行えるので、Excelなどで取引先データや商品データを持っている場合、そのまま利用できるというわけだ。
メニュー画面の左列から「得意先・商品・設定」を選択し、「商品台帳」のアイコンをクリックする | さきの見積書で手入力した商品が、自動的に台帳に入力されている。次回からはいちいち商品名や価格を入力しなくとも、この台帳を参照しながら入力できるようになる |
2回目の入力からは、画面の右上、初回起動時は空欄だった自社名が自動入力されるようになる | 2回目の入力からは、商品欄をクリックすると商品台帳がポップアップし、選択するだけで入力できる |
得意先台帳および商品台帳は、外部からCSVデータをインポートすることもできる | 「お気に入り検索」からは、1カ月以内で未入金の請求書や、印刷されていない納品書など、さまざまな検索設定がプリセットされており、発行のチェックや入金確認といった経理業務がスムーズに行える |
いっぽう、見積のたびに商品名が変わるような業態であれば、こうした商品台帳機能はあまり役に立たない。設定画面から商品台帳の自動登録機能をオフにし、毎回手入力で入れていく形になるだろう。
●価格も手頃。個人事業主やSOHOユーザーにとって利用価値は大
以上ざっと使ってみたが、簡単な操作で見積書や納品書、請求書が発行できるほか、その管理も行えてしまうことから、これら請求関連の業務に忙殺されている個人事業主やSOHOユーザーにとって、利用価値の高いソフトだと感じた。とくに事業を始めて間もない時期は、これら帳票のテンプレートすら手元にない場合も多いはず。こうした場合に、きちんと整ったテンプレートが何種類も用意されている本ソフトは、それだけで大いに助けになるはずだ。
機能は実に多彩で、台帳作成のほか源泉徴収額の計算、さらにはオリジナル帳票の作成機能まで用意されているが、必ずしもすべての機能を使わなくてはいけないわけではない。例えば見積書の作成だけ、請求書の発行だけといった具合に、まずは必要な機能だけを使ってみて、慣れてきたらほかの機能も試してみるというのがよさそうだ。
メーカー希望小売価格も、10,500円(税込)となかなか手頃。見積書や納品書、請求書をExcelで管理し、前月に発行したものを書き換えて当月の帳票を作成しているユーザー、あるいはそもそも手書きで帳票を作成しているユーザーは、ぜひ使ってみてほしいソフトだ。
関連情報
2011/8/8 09:00
-ページの先頭へ-