月945円でメモリ容量2GBが利用可能な「CloudCore VPS」を試す


 CloudCore VPSは、KDDIウェブコミュニケーションズが月額1000円を切る、945円という価格で提供するVPSサービスだ。“格安VPS”と呼ばれるサービスの中では後発になるが、この価格帯でメモリ2GBとディスク100GBが使えるという、ウェブアプリケーションを想定した思い切ったスペックが魅力的だ。

 このCloudCore VPSの試用アカウントを編集部から借りたので、さっそく試してみた。

CloudCore VPS


完全仮想化で素に近いLinuxサーバーを使う

 CloudCore VPSは、ざっくり言うと、数あるVPSサービスの中でも「さくらのVPS」ともっとも近いところに位置づけられるサービスだ。競合サービスと言ってよいだろう。

 共通点としてはまず、仮想サーバーの技術としてKVMによる完全仮想化を採用していることや、それをベースに独自開発の管理システムを作ってサービスを提供していることが挙げられる。

 また、その上でユーザーに提供される仮想サーバーが、自分でOSのインストーラーからインストールしたままに近い状態で渡されるのも共通した特徴だ。特別なソフトウェアや設定がなされていない、素のLinuxからスタートするので、ふだんLinuxサーバーを触り慣れている人には癖がないぶん使いやすいだろう。

 料金コースは、月額945円(12カ月契約のキャンペーン価格の場合)の1種類。初期費用はかからない。この価格設定も、さくらのVPSを意識していることをうかがわせる。この価格で、メモリが2GB、ディスクが100GB使えるというのが、CloudCore VPSのアドバンテージだ。

 ただし、さくらのVPSでは同じ価格帯で2コアの仮想CPUが割り当てられるのに対し、CloudCore VPSでは1コアで、ここについてはさくらのVPSが優位だ。ただ、ウェブアプリケーションではCPUよりディスクなどのI/Oがボトルネックになることが多く、メモリを使って高速化することもよく見受けられる。そうした用途には、CPUよりメモリ容量を重視したスペックがうれしいだろう。また、ふだんはもっとリッチなサーバーで動かしているウェブアプリケーションを、サブとしてVPSに置いておく、という場合にもコストパフォーマンスがよさそうだ。

 なお、さくらのVPSでも3月にサービスをリニューアルし、月額980円でメモリ1GB、ディスク100GBの提供を始めた。競争によって、よりハイスペックなサービスを低価格で受けられるようになるのは、事業者にとっては大変だろうが、ユーザーにとってはうれしいことである。


CentOSを自分でセットアップ

 実際にCloudCore VPSを使ってみよう。

 初期状態では、仮想サーバーは停止している。仮想サーバーを起動するには、まずWebの管理画面にアクセスする。画面上を見ると、「状態」の欄に「停止」と表示されている。そこで、「起動」ボタンをクリックすると、サーバーが起動する。

 この管理画面からはほかに、パスワード変更や、OS初期化、ほかのOSのインストール、リモートコンソールの機能を使える。リモートコンソールはWebSocketやCanvasといったHTML5技術によるnoVNCを採用していて、特別なソフトなしでWebからOSのコンソール画面を利用できる。ファイアウォールの設定をミスしてsshで接続できなくなったときなど(実は筆者もやってしまった)、アマチュアユーザーにとってリモートコンソールは「あってよかった」と思う機能だ。

 ちなみに、CloudCore VPSがスタートした時点では、ほかのOSのインストールやリモートコンソールの機能はなかった。それが半年以内に追加されたところに、開発の活きのよさを感じる。

 OSとしては、CentOS 5の64bit版が動いている。まずはsshからrootアカウントでログイン。セキュリティのため、すぐに一般ユーザーを追加し、公開鍵認証でsshログインするように設定した。

 ログインしてみると、CentOSのバージョンが5.6だとわかる。現在の最新版は5.8なので、yumコマンドでソフトウェアアップデートすると自動的にCentOS 5.8となる。

 初期状態では、OSのファイアウォール機能を設定するiptablesコマンドがインストールされていないので、yumコマンドでインストールし、最低限の設定をした。

 起動したOSを調べると、スペックどおり、メモリが2GB、ディスクが100GBになっていることがわかる。ディスクは基本的に単一のパーティション。また、スワップ領域は、メモリの倍である4GBぶん、ファイルシステム上のファイルに設定されていた。

 ちょっと印象的だったのが、ディスクやネットワークのデバイスドライバーとして最初から「virtioドライバ」が使われていたことだ。

 通常、完全仮想化した環境では、仮想化ソフトウェアがデバイスをエミュレートして、仮想サーバーにはあたかも本物のデバイスであるかのように見せる。しかし、それではオーバーヘッドが生じる。そこでかわりに、仮想サーバーに専用ドライバをインストールし、仮想化ソフトウェアと直接やりとりするようにする仕組みが「virtio」だ。これにより、速度などの性能向上が期待できる。なお、virtioドライバを使っているため、ディスクは/dev/vdaというデバイス名で仮想サーバーから見えていた。

 CPUを調べてみると、「AMD Phenom(tm) 9550 Quad-Core Processor」と1コアぶんだけ表示される。これは親環境のデータが表示されているのだろう。

 初期状態では、Webサーバーなどのサーバーソフトウェアは、ほとんどインストールされていない。そこで、すべて自分でいちからインストールして、設定していく。このあたりは、自分でサーバーを設定できる人にとっては、むしろやりやすいだろう。

管理画面。初期状態では仮想サーバーが停止している仮想サーバーが起動した
Webから使えるリモートコンソールパスワード変更の画面
OS初期化の画面。ここから「確認」ボタンをクリックして進むと、OSを再インストールするsshでログインしてデバイス構成を見てみる。ディスクやネットワークにvirtioドライバが使われている


OSをUbuntu Sererに入れ替えてみる

 前述したように、ほかのサーバーOSに入れ替える機能も用意されているので、試してみよう。なお、サーバーOSを入れ替えるとディスク上のすべてのデータが失なわれる。そのため、必要なデータはバックアップしておこう。

 管理画面から「OSインストール」を選ぶと、インストールするOSを選択できる。試した時点では、Ubuntu Server 10.04、Debian GNU/Linux 6.0.4、FreeBSD 9.0の3種類で、いずれも64bit版だ。ここではUbuntu Sererをインストールしてみよう。

 UbuntuはDebianをベースとしたLinuxディストリビューションで、ここ数年、大きくシェアを伸ばしている。特にデスクトップ版がよく使われているが、サーバー版であるUbuntu Serverも人気がある。

 さて、OSインストールを実行すると、リモートコンソールが起動し、Ubuntuのインストーラが起動する。ここから、実サーバーと同様にインストールを進める。

 1点注意しておきたいのが、ネットワークの設定だ。CentOS 5を再インストールする初期化の場合と違い、UbuntuなどほかのOSをインストールするときには、初期設定は自分で指定する必要がある。中でもIPアドレスなどのネットワークの設定は、CloudCore VPSのネットワークに合わせて設定する必要がある。

 といっても、自分に割り当てられたネットワーク設定は、管理画面のトップに記載されている。事前にメモするのを忘れた場合でも、Webブラウザでリモートコンソールとは別のタブを開き、そこで管理画面のトップを見て設定するとよいだろう。

 インストールが完了してUbuntuが起動したら、あとは公開鍵認証でsshでログインするように設定したり、ufwコマンドでファイアウォールを設定したりしてセキュリティに対応。そのうえで、Webサーバーなどのサーバーソフトウェアをセットアップしていく。

管理画面でOSインストールを選び、OSを選択する。OSインストールにはリモートコンソールを使うので、キーマップ(キー配列)もここで選ぶリモートコンソールが開き、Ubuntu Serverのインストーラが起動する
ネットワーク設定にはCloudCore VPSで自分に割り当てられたパラメータを指定する必要があるので注意UbuntuではCentOSと違い、rootでのログインがデフォルトで禁止され、インストール時に一般ユーザーを作成する
初期インストールするサーバー機能を指定。後で追加できるのでここでは特に指定しなくてよいが、sshサーバー(OpenSSH server)はインストールしておくと最初からsshでログインして初期設定できるUbuntu Serverが起動した

 以上、CloudCore VPSを見てきた。VPSとして、物理サーバーに近い丸ごとのLinuxサーバー環境が与えられて自由に使えるので、Linuxサーバーの管理に慣れた人には使いやすい構成だ。特に、CPUよりメモリ容量を重視する要件には、1000円以下のVPSの中で最もマッチするだろう。

 いっぽう、管理画面はシンプルに必要な機能がまとまっているとはいえ、リソースモニタ表示なども欲しいところだ。また、より多くのOSへの対応も望まれる。こうした今後の機能拡充については、これまでの勢いから、これからの開発に期待したい。



関連情報


(高橋 正和)

2012/5/2 06:00