中国・北京のマイクロソフトリサーチアジア訪問記
前回、マイクロソフトアジアリサーチ(MSRA)において、リアルタイムで翻訳する技術などを研究している様子を紹介したが、今回は、MSRAの内部の様子を、写真を中心に紹介しよう。
マイクロソフトリサーチアジアは、1999年に、同社3番目の研究所として中国・北京に設立された。約220人の研究者が在籍し、米国本社の研究所の250人に次いで、2番目の規模を誇る。約8割が中国人だが、そのうち、5人の日本人研究者が在籍しており、そのなかには、言語処理の第一任者であり、紫綬褒章を受章している辻井潤一氏もいる。“地元”となる中国人を除けば、日本人研究者の数は国籍別では多い方だという。Windows 8に搭載されるMedia FoundationのひとつであるVideo Stabilizationは、日本人研究者である松下康之氏によるものだ。
中国・北京にあるマイクロソフトリサーチが入るビル | 近くには「中国の秋葉原」といわれる中関村がある | 中関村までは歩いていける距離だ |
MSRAでは、ナチュラルユーザーインターフェース、データインテンシィブコンピューティング、データマルチメディア、コンピュータサイエンス、サーチの5つの分野において研究開発を進めており、これまでに3000以上の論文を発表。そのうち20以上の論文が最優秀論文賞を受賞しているという。
また、300以上の技術がマイクロソフト製品に応用され、20以上のライセンスが他社に供給されている。Xbox 360向けに製品化されているKinectに、MSRAにおいて研究開発が行われてきた顔認識技術が採用されているのはその一例だといえる。
大学機関との連携も活発に行っておりアジア各国の大学と共同研究を行っているほか、インターンシップの受け入れにも活発だ。これまでに累計60人の日本人学生が参加。MSRA全体では約3000人の学生が参加しているという。
前回の記事でもお伝えしたように、マイクロソフトリサーチの社風は非常にオープンだ。
「一般的に、企業の研究機関では論文を発表する際にも、どこまでを発表して、どこまでを発表しないというような規制や、発表の承認を得るための社内的な手続きに多くの時間を要すといったことがあるが、MSRではそうしたことは一切ない」(MSRAで勤務する日本人研究者のひとりである酒井哲也氏)とする。
また、「成果主義」が徹底されており、ボトムアップ型で自ら提案した研究開発テーマについては、製品への応用、あるいは論文としての発表といったゴールに向けて自己責任で進めることになる。こうしたオープンな環境を実現している様子が、MSRAの施設からも見てとることができる。
では、MSRAの様子をみてみよう。
2つのビルで構成されており、MSRAは14階建てのTower2の12~14階を使用 | MSRAのある14階フロアから反対側のビルをみる。Windows Serverの関連部門などが入っているという | 2つのビルは3階フロアの橋で結ばれている |
2つのビルを結ぶ3階の渡り廊下 | MSRAが入るTower 2の入り口の様子 | こちらもTower 2の入り口 |
MSRAで勤務する5人の日本人研究者。(左から)矢谷浩司氏、荒瀬由紀氏、松下康之氏、辻井潤一氏、酒井哲也氏 | MSRAのフロア内の様子 | MSRAのフロア内。外光を取り入れた明るい雰囲気を持った研究所だ |
研究者のデスクスペース。このスペースを2人で利用する | 研究者同士が打ち合わせを行うことができるスペース | 大人数での会議が行えるスペースもある |
インターンシップの学生などが使用するデスクの様子 | 壁はすべて文字を書き込むことができるようになっている | MSRAでの飲み物はすべて無料。スターバックスのコーヒーも飲める |
カフェテリアで使用できるマイクロソフトチャイナのロゴ入りカップ | マイクロソフトビジターセンター。世界に3カ所だけだという | ビジターセンターにはマイクロソフトの製品群を展示している |
中国国内で販売されているタブレット端末やスマートフォン | Kinectの実演コーナーもある。KinectにはMSRAの開発成果が活用されている | テーブル型コンピュータのサーフェイスも展示している |
スティーブ・バルマーCEOが訪問した際の写真なども展示 | スティーブ・バルマーCEOが訪れたときに書き記したサイン | 中国の古い絵をデジタル化。人が動いたり、しゃべったりする様子を再現 |
マイクロソフトの技術を活用した将来の方針を映像で紹介 | デジタルホームの将来のシーンを実演するコーナーもある | 液晶ディスプレイを利用した窓。左右に歩くと、それに伴って画像も少しずつ変化する |
キッチンのテーブルの上にプロジェクターで投影した画像をタッチで操作 | レシピを表示しながら、調理するといったことが可能だ | プレゼンテーションなどを行うことができる部屋もある |
ビジターセンターのなかには、エグゼクティブ・ブリーフィング・センターも設置されている | オフィス内には派手な装飾を施したエリアもある | 昼食時のカフェテリアの様子 |
昼食時間以外にもくつろぐことができる | ランチメニューの数々。20元(約250円)もあればお腹がいっぱいになる | 特別なカフェテリアも用意されている |
昼休み時間には、2つのビルの間の敷地でくつろいだり、運動をする人たちの姿も | くつろげるスペースが随所にあるのも特徴だ | 卓球台が常設されているのは中国ならでは。自由にプレイできる |
こちらはヨガなどを行うことできるエリア | 瞑想部屋も用意されている | 瞑想部屋は、多様性のある社員が働いている証のひとつだ |
マッサージチェアが置かれたスペースもある | 図書館も常設している。多くの情報は電子データで得ているが、紙の文献も重要 | 図書館は、平日の午前9時30分から午後6時までオープンしている |
売店では飲み物やお菓子も売られている | こちらはクリーニング店。忙しい研究者には便利なサービスだ | 海外の研究者のビザの申請手続きなどを行ってくれるVisa Desk |
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2012/5/28 06:00
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