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ギガで何が良くなる? タイプ別メリットを分析~NTT東日本「フレッツ 光ネクスト ギガファミリー・スマートタイプ」

 上下1Gbpsの速度に対応した光ファイバーインターネット接続サービス「フレッツ 光ネクスト ギガファミリー・スマートタイプ」。その魅力は、どのような点にあるのだろうか? 筆者が実際に導入して体感した速度をもとに、日常的な用途を想定しながら、初級編、中級編、上級編の3パターンで、そのメリットを考えてみよう。

固定の安心感にギガのスピードをプラス

 モバイルでいつでも気軽にインターネットが利用できるようになった今でも、個人的には、「やっぱり固定回線の安心感は何者にも代えがたいなぁ」と、感じることが多い。

 当たり前につながるし、当然のようにスピードは出るし、普通に安定している。もちろん、時間帯やサーバー側の混雑の影響を受けることもあるが、なかなかダウンロードが進まなくてあきらめたりとか、スムーズさに欠ける動画もガマンして見続けるとか、日常的に、何らかの不都合を感じさせられることがまずないことは、やはり固定、しかも光ならではのメリットだ。

 特に、回線がギガ化されてからは、このありがたみを感じる機会が増えてきた。

 東日本電信電話株式会社(以下、NTT東日本)は、2014年7月から、上り、下り1Gbpsに対応した「フレッツ 光ネクスト ギガファミリー・スマートタイプ(以下ギガファミリー)」の提供を開始した。これを受けて、早速、自宅の回線も従来の「フレッツ 光ネクスト ハイスピードタイプ(下り200Mbps/上り100Mbps)」から変更した。

 今回の新サービスの特徴は、回線が1Gbpsに高速化されたのはもちろんだが、無線LAN環境まで含めた家庭内のインフラを「オールギガ」化することができる点だ。

 回線に付随するホームゲートウェイ端末には、最大1300Mbps対応のIEEE 802.11ac準拠無線LAN機能が標準搭載されており、回線だけでなく、家庭内の無線LAN環境もギガ化することが可能になっている。

 前述したように、固定回線は、いつでも高速に安定したインターネット接続が楽しめるのが大きなメリットだが、その速度が従来の下り200Mbps/上り100Mbpsから、上下ともに1Gbpsへと大幅に高速化されたうえ、PCやスマートフォンなども従来より高速にWi-Fiで接続できるようになったおかげで、家庭内のインフラ全体がワンランク上の環境へとグレードアップしたことになる。

 では、回線やWi-Fiが速くなったことで、具体的にどのようなメリットがあるのだろうか? パターン別に、そのメリットを見ていこう。

NTT東日本の「フレッツ 光ネクスト ギガファミリー・スマートタイプ」を導入。上下1Gbpsの回線速度に加え、Wi-Fiも1300Mbps対応のIEEE 802.11ac対応にギガ化された

初級編:「ながら」通信がより快適に!

 インターネット接続環境がギガ化される最大のメリットは、やはり速度だ。ただし、一口に「速度」と言っても、そこには2つの側面がある。

 1つは、個別のシーンでの速度だ。最近では、ゲーム機でGB単位のゲームをダウンロード購入したり、HD画質の映画をダウンロードしたり、OSなどで数百MB単位のアップデートファイルが日常的に配信されたりすることも珍しくなくなってきた。

 こういったシーンで、ギガ化されたインターネット環境がある場合は、単純にダウンロードの速度が向上し、短時間で、ファイルをダウンロードしたり、アップデートを完了させることができるようになる。

 実際の速度は、環境や接続先のサーバーなどによっても異なるため、200Mbpsの回線を1Gbpsのギガファミリーに変更しても、単純にダウンロード時間が五分の一になることはないが、仮に待ち時間が半分になるだけでも、快適さは大幅に向上する。

 特に動画のストリーミング配信やダウンロードなどでは、バックグラウンドでダウンロードしながら、映像を再生することなどが可能となっており、バッファの待ち時間が短くなったり、バッファできる容量が多くなることで、素早く動画を再生できたり、早送りなどの操作をしても映像が途切れることがない環境が得られる。これは、まさに速い回線ならではのメリットだろう。

 このように、高速な回線によって個別のシーンが快適化されるが、その一方で、個別のシーンの集合である全体的な最適化も実現される。これが速度向上によって得られるメリットのもう1つの側面だ。

 具体的には、複数端末の同時アクセスが快適になる。例えば、前述したようなGBクラスのゲームや動画を家庭内の誰かがダウンロードしていたとしよう。

 回線容量が限られていると、大容量のダウンロードによって帯域が圧迫され、ダウンロード中は、PCやスマートフォンなど、他の端末の速度が遅くなってしまう。「何だかWebページの表示が遅いなぁ」と思ったら、リビングで家族がゲームをダウンロードしていた、などということもあり得るわけだ。

 しかし、回線がギガ化されれば、こういったシーンでも、個別の通信により多くの帯域を使えるようになり、それぞれの通信がお互いに他の通信に与える影響を最小化することができる。

 要するに「ながら」が快適になるわけだ。ゲームをダウンロードしながら、HD画質の映画をストリーミング再生しながら、OSのメジャーアップデートをしながら……。このように、日常的に発生する大容量の通信がどこかで発生したとしても、他の端末が快適に通信できる余地が残されていることになる。筆者の環境でも、家族と同時にインターネットを利用していても、速度が遅いと感じることはなかった。

 今後、インターネットにつながる機器はさらに増え、その通信も頻繁、かつ大容量になっていくことだろう。そういった意味では、ボトルネックにならない大容量のインターネット接続環境を整えておくことは、非常に重要と言えそうだ。

回線速度に余裕があれば、複数の端末からの大量の通信もストレスなくさばくことができる

中級編:ギガWi-Fiでスマホも快適に

 ギガファミリーのメリットは、回線だけでなく、Wi-Fiもギガ化される点にある。

 これまで、家庭内のWi-Fi環境をギガ化するためには、別途、IEEE 802.11acに準拠した無線LANルーターを購入する必要があった。価格は1万数千円前後と、さほど高くはないものの、光ファイバー用のホームゲートウェイに加えて、さらに無線LANルーターを設置しなければならないうえ、接続や設定などにも手間をかける必要があった。

 これに対して、ギガファミリーでは、回線工事の際に設置されるホームゲートウェイに、IEEE 802.11ac準拠で最大1300MbpsのWi-Fi機能が標準で搭載されているため、特に機器を追加することなく高速な無線LAN環境を利用することが可能だ。

ギガファミリーで提供されるホームゲートウェイには最大1300Mbpsに対応した無線LANが内蔵されており、無料で利用できる

 もちろん、1300Mbps対応と言っても、そのままの速度で通信できるわけではない。実際の通信速度は、PCやスマートフォンなどの端末側が、どれくらいの速度に対応しているかによって異なる。

 とは言え、最近のPCやスマートフォンには、867Mbpsに対応している製品が増えているため、ギガには少し及ばないものの、従来の450Mbpsや300Mbps対応のWi-Fi(IEEE 802.11n)よりも、遙かに高い速度で通信することができる。

最新のスマートフォンはIEEE 802.11acに対応している

 実際、木造3階建ての住宅の1階に、ギガファミリーのホームゲートウェイを設置し、速度測定アプリで回線速度を計測してみたところ、2階で下り230.15Mbps、上り142.05Mbps、3階で下り88.29Mbps、上り121.5Mbpsの結果が得られた。

 ここまで高い速度で接続できると、40MBを超えるような大きなサイズのゲームなどでも、ほんの3~4秒というあっという間にダウンロードできるようになる。また、映画配信サービスを利用した場合でも、選択した映画が待ち時間なく即座に再生されるうえ、再生バーを利用して再生位置を変更しても、すぐに場面が切り替えることができた。

2階での測定結果(左)と3階での測定結果(右)

 もちろん、Wi-Fiを利用した接続であれば、通信事業者の回線を利用しないため、パケット使用量も抑えることができる。最近では、家族でパケットを分け合えたり、パケット使用量に応じて料金プランが細かく設定されている場合があるが、自宅でスマートフォンを利用する間はWi-Fiで接続してパケットを消費しないようにすれば、こういった新しい料金プランをより有効に活用することができる。

 高速なインターネット接続環境によって、ストレスから開放されるだけでなく、無駄なく新料金プランを活用することができそうだ。

上級編:余裕の帯域で広がる用途

 高速なインターネット接続環境をさらに活用したい場合は、クラウドサービスや自宅へのリモートアクセスなど、より高度な使い方にチャレンジしてみてはいかがだろうか。

 例えば、クラウドストレージサービスなどは、今やデータの保存先として誰もが手軽に利用できるようになったサービスと言える。Windows 8.1に標準搭載されいてるOneDriveなどを使えば、パソコンで作成した文書や写真、動画など、さまざまなデータを手軽にインターネット上の領域と同期させることができる。

 NTT東日本でもフレッツユーザー向けに、「フレッツあずけ~る」というサービスを提供しており、パソコン上のデータを手軽にアップロードしたり、専用のツールを使ってパソコンのデータを自動的にバックアップすることができる。

 データの保存やバックアップは、これまでパソコンに接続したUSBストレージや自宅や社内に設置したNASなどを対象に実施するのが普通だったが、ギガファミリーのように高速なインターネット接続環境があれば、クラウド上のストレージもローカルと同じような感覚で使えるようになるわけだ。

 クラウドストレージに保存したデータは、スマートフォンなどから参照したり、友人や家族と共有することもできるので、速い回線を生かして、積極的に活用するといいだろう。

高速な回線を利用すれば、オンラインストレージサービスも快適に利用できる

 さらに高度な使い方ということであれば、ギガファミリーで提供されるホームゲートウェイに搭載されているVPNサーバー機能を活用してみるといいだろう。

 VPNはVirtual Private Networkの略で、暗号化技術によって、インターネット上に仮想的な専用回線を構築する技術だ。これにより、外出先から自宅に、安全にアクセスすることができるようになり、自宅のパソコンに保存されているデータを外出先でも参照したり、自宅のパソコンのデスクトップ画面をリモートデスクトップで遠隔操作することなどができるようになる。

 どちらかというと、ビジネスシーンで活用すると便利な機能だが、個人でも中上級者ならチャレンジしてみる価値はあるだろう。

 設定は簡単で、ホームゲートウェイで機能を有効にし、アクセスを許可するユーザーを追加するだけでいい。対応する方式もL2TP/IPsecとなるため、Windows搭載パソコンはもちろんのこと、AndroidやiOS搭載のスマートフォンからも簡単に接続することができる。

 暗号化されていないWi-Fiスポットを利用する場合などに、通信内容を暗号化して保護することもできるので、ぜひ活用してみるといいだろう。

ホームゲートウェイに搭載されているVPNサーバー機能を使えば、外出先から自宅に安全にアクセスできる

ギガでより快適な生活を

 以上、NTT東日本の「フレッツ 光ネクスト ギガファミリー・スマートタイプ」の活用法について、ケース別に3つの利用シーンを考えてみた。

 「ギガ」というだけでは、瞬間的なスピードのみをイメージしてしまうかもしれないが、実際には、たくさんの機器からの同時通信を快適化したり、スマートフォンなどのWi-Fi環境を改善したり、クラウドサービスやVPN接続などの用途を広げることができるのがメリットだと感じた。

 今後、ネットワークに接続できる機器は、家電製品やセキュリティ関連製品、各種センサー、ロボットなど、増えていくことは確実だ。そういった意味では、その根幹を成す家庭内のインフラを1Gbpsの回線と高速なWi-Fiで強化しておくメリットは大きいと言えるだろう。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。